垣根をこえる研究

研究最前線

製剤設計学

かぜ薬や胃薬などの医薬品から、さまざまなサプリメントや健康食品まで、普段なにげなく口に入れているものは、どれぐらい体に吸収されているのか。実際には医薬品の吸収率は50%にも満たないものも多く、残りは体外に排出されているという。その理由は、有効成分の多くが水に溶けにくいためだ。では、どうすればよく溶けて、体に吸収されやすくなるのか。製剤設計学研究室の戸塚裕一教授は、有効成分の吸収率を高める設計に取り組んでいる。その成果を機能性食品に応用すれば、高齢化が進む日本にとって重要な予防医療にも役立つ。さらに戸塚教授は、吸入薬の効果を高めるため、数値シミュレーションを駆使して、気道内での粒子の挙動予測にも取り組んでいる。

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光皮膚科学

いつからか、テレビの天気予報で紫外線情報が提供されるようになった。かつて日焼けには「健康的」などのイメージがあったのに対して、今では紫外線による皮膚へのダメージが健康リスクとして認識されている。紫外線を浴びると皮膚がんを発症するおそれがあり、難病指定されている「色素性乾皮症」では激しい光線過敏症状が生じて、容易に発症する人もいる。大学院時代にこの難病と出会った皮膚科学教室の森脇真一教授は、患者本人に加えてその家族のQ.O.Lも低下させている実態を目の当たりにし、何とかして治療法を見つけたいと思った。色素性乾皮症の診療ガイドライン作成にも携わった森脇教授は、患者さんを救いたい一心で、今も治療法開発のための研究に取り組み続けている。

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Withコロナでも安心・安全に子どもを産み育てるための知見

新型コロナウイルス感染症は世界中に大混乱をもたらし、多くの人々の暮らしを一変させた。なかでも大きな影響を受けたのが、妊産婦や子育て中の家庭だ。
コロナ禍により、出産や育児にはどのような困難が生じていたのか。
それら数々の障害に対して、母親や父親はどのように立ち向かったのか。
コロナ禍のなかでも大阪医科薬科大学では、大学病院で多くの妊婦を受け入れてきた。それと同時にコロナ禍がもたらした出産・育児環境への変化を明らかにし、今後の支援のあり方を考えるために2021年に2回の調査を行った。
本記事では、その調査結果とこれからのWithコロナ時代の育児に向けたアドバイスを紹介したい。

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改めて今の常識を問い直す 常に次を考える姿勢が医療を進化させる

2018年、大阪医科薬科大学に「関西BNCT共同医療センター」が竣工した。
BNCT(Boron Neutron Capture Therapy : ホウ素中性子捕捉療法)とは、
中性子とホウ素の核反応を利用する、期待のがん治療法である。
このBNCTの高機能化をめざして、新たなホウ素含有薬の開発に取り組むのが、
薬学研究科の天滿敬教授だ。
天滿教授は、大学院 博士課程から代謝イメージングの研究に取り組み、その後、
分子イメージングからBNCTへと研究テーマをつないできた。
そして今、BNCTの学会では数少ない薬学系研究者としてホウ素薬剤をゼロベースで見直し、次世代の常識となる薬剤開発をめざしている。

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潜在患者数が1000万人を超える半月板問題の解消をめざす

歳を取ると、身体のあちらこちらに不具合が出てくる。膝の痛みもその一つ、とはいえ歩けないほどひどくはない。ただ動くたびに痛みを感じていてはストレスがかかり、
放置しておくといずれ歩行に支障をきたす。
その原因の一つが半月板損傷、膝関節の中にある半月板に亀裂や欠けが生じて動くたびに痛むようになる。
治療法は縫合もしくは切除しかなく、いずれも根本的な治療法とはいえない。
そこで、可能な限り膝を温存して半月板損傷を治療する。そんな革新的な治療法開発に取り組んでいるのが、整形外科学教室の大槻周平講師だ。産学連携による生体吸収材料を使った研究は、まもなく第2ステージの治験に入ろうとしている。

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今の医療の改善を実現したい、だから論文よりも、モノづくりに挑む

心臓に病を抱えて生まれてくる赤ちゃんがいる。先天性心疾患と呼ばれる、心臓や血管の形に何らかのボタンの掛け違いが生じる病だ。
日本では約100人に1人の割合で誕生している、そんな赤ちゃんを救うための手術を、胸部外科学教室の根本慎太郎教授は長年にわたり手がけてきた。
ただ根本教授は、現状の手術にどうしても満足できなかった。なぜなら赤ちゃんはどんどん成長するのに対して、手術に使われた材料は成長しない。そればかりか材料が劣化してしまう。そのため数年後に再手術で交換が必要となるケースが多くあるのだ。
子どもたちの健やかな成長を支援するためには、どうすればよいのか。
根本教授が選んだのは、まず研究を進めて、その成果を自ら製品化して手術室に持ち込む道だった。

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医学の進化を視野に いまから取り組むバイオインフォマティクス

研究現場では”Wet”と”Dry”という言葉が使われている。
Wetは細胞などを試験管で扱いながら生物実験を行うプロセス、一方のDryは実験データなどをコンピュータで解析するプロセスを意味する。
「OMPU Dryの会」は、コンピュータ解析を学ぶために、学生たちによって自主的に立ち上げられた勉強会だ。そのテーマはバイオインフォマティクス、DNAをはじめとする生物情報を、コンピュータサイエンスを駆使して解析し、生命現象を解き明かす新しい学問領域である。
参加する学生たちが思い描いているのは、近未来の医学の世界で活躍する姿だ。

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臨床現場でのチーム医療に役立つ 多職種連携教育を目指して

生命科学が発展した昭和、医療技術が躍進した平成、そして令和時代における情報駆動型社会Society5.0に対応するために、医療現場では多職種の医療人が対等に協力しあう「チーム医療」の必要性がますます高まっている。
大阪医科大学では、看護学部が開設された10年前から「医看融合」をカリキュラムに取り入れてきた。現在は、2021年度に予定されている大阪薬科大学との統合を見据えて、医薬看による多職種連携教育を進めている。
今回は、医学部、看護学部、薬学部の先生方による座談会形式で、医薬看それぞれの立場から多職種連携教育の必要性とその背景についてお話を伺った。

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臨床現場にフィードバックする薬剤部研究

病院の薬剤部は、調剤・製剤業務や医薬品の管理、服薬指導などを担う部署。一般的には「研究」機関ではない。 しかし、大阪医科大学病院の薬剤部では、大阪医科大学研究支援センターの旗振りのもと、大阪薬科大学、大阪大谷大学などの医療・研究機関と連携し、共同研究プロジェクト「基礎および臨床データを用いたPharmacokinetics解析および医薬品安全性の評価に関する研究」を実施。臨床現場に日々立ち続ける病院薬剤師ならではの切り口で、さまざまなテーマの研究が行われている。 本記事では、同プロジェクトから特徴的な研究テーマを取り上げて、大阪医科大学病院薬剤部をとりまくトランスレーショナルリサーチの形を紹介したい。

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異分野の先端研究を学び合う会

心臓血管外科、生理学、神経内科、生物学、眼科、解剖学… 一見まったく違う専門を持つ研究者たちが、大学を飛び出して大阪・梅田のナレッジサロンに集う。共通するのは、医学系研究者としての知的好奇心と、医学教育に関わる大学教員であること。 「自分たちの領域だけで研究・交流を完結しない、バランス感覚が必要」と語るのは、発起人の神吉佐智子先生(胸部外科学教室)。この会の様子を追った。

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乳がん治療と看護学

女性のがん罹患数の1位は「乳がん」。がんの中では、乳がんの手術は短時間で行うことができ、予後も比較的良好とされている。がん全体の5年相対生存率は65.8%であるのに対し、乳がんは92.7%に達する。 しかし、乳がん治療は再発・転移予防のため5〜10年のスパンで続く。「再発」のリスクもあり、「リンパ浮腫」などの関連症状とも常に向き合っていかねばならない。長期にわたるがん治療と日常生活の中で、看護は、どのような役割を果たしているのだろうか。

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がんと放射線治療の現在

日本人の死亡原因の1位は男女ともに「がん(癌)」であり、2人に1人はその生涯においてがんに罹患するという(厚生労働省「人口動態統計」2016)。がん治療法の研究開発は、多くの医師が取り組む最重要課題のひとつだ。 「放射線治療」は、手術、抗がん剤に並ぶ「がんの三大療法」の一つ。1世紀あまりの歴史がありながら、今なお数々の研究開発が進められている。この記事では、その歴史とともに、大阪医科大学で展開されている放射線医学のトレンドにフォーカスしてみたい。

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01

医・工・薬の専門分野の境界を超えた共同研究の創生

関西大学・大阪医科薬科大学
医工薬連環科学教育研究機構

医工薬連環科学教育研究機構は、設置された2009年当初から、教育プログラムを中心に事業を推進してきました。
この10年の活動をベースとして、2019年4月から新たに研究部門をこの医工薬連環科学教育研究機構に設置し、研究推進上の大学間連携をより親密にかつ深く実現をする活動をしています。
学生や大学院生も含めた研究交流活動により、新たな医療・医療産業分野での協働を意識した共同研究を創生させることができると考えています。

企業の皆様へ

大阪医科薬科大学と一緒に、 社会のためのイノベーションを生み出しませんか?

私たちは、学内、学外の垣根を超えて、これからの未来に必要とされる研究を推進したいと考えています。
産官学連携にご興味のある企業、ご担当者様はぜひお問い合わせください。

研究活動については「研究シーズ&ニーズ集」にまとめています。ぜひご活用ください。

研究関連情報