慢性期成人看護学

現在の疾病構造、ライフスタイル、価値観多様化、医療の進歩等とともに病気とともに生きる人は、日々工夫と創意で毎日を暮らしているといっても過言ではありません。したがって、期待される看護職者の役割や機能は計り知れません。病気とともに生活する人とその家族に対して、その人らしい社会生活を送るための疾病治療のコントロールやセルフケア、マネジメントの方法を援助する看護が実践できるように考えていきたいと思います。

授業科目

【1年生】
成人看護学概論

【2年生】
慢性期成人看護学援助論
慢性期成人看護学援助方法

【3年生】
慢性期成人看護学実習
看護実践と理論の統合

【4年生】
統合看護学実習
卒業演習

授業風景

講義

慢性期成人看護学援助論

慢性疾患患者の特徴を理解し、看護に必要な理論と基本的な考え方を学びます。
事例ごとに患者の健康課題についてお互いに意見を出し合い検討します。

演習

慢性期成人看護学援助方法

慢性疾患患者の特徴を理解し、看護に必要な理論と看護の方法を学びます。
事例を用いて自分たちで看護計画を立案し、その方法について実践しながら検討を重ねます。

実習

慢性期成人看護学実習(3年生)

3年生は、大阪医科薬科大学病院で3週間の実習を行い、慢性疾患をもつ患者とその家族の健康課題を理解し、看護実践能力の基礎を養います。また多職種連携教育の一環として、医学部・薬学部・看護学部の学生が同じ患者を受け持ちし、合同カンファレンスで事例を検討します。

統合看護学実習(4年生)

4年生は緩和ケア、難病看護、リハビリテーション看護など慢性疾患看護のなかで関心のある分野を選択し各地で実習します。実習先には離島も含まれ、病院・訪問看護・看護小規模多機能型居宅介護など島の地域包括ケアシステム全体を通して学びを深めることができます。

  • 離島での健康教育

  • 離島でのドクターヘリ搬送

  • 離島での自衛隊搬送

  • 病棟実習の合間に海を眺めて

  • 離島での病棟実習

  • 離島での訪問看護

統合看護学実習  離島実習(沖永良部島)2022年

統合看護学実習  離島実習(沖永良部島)2023年

メンバー紹介

教授 | 飛田伊都子

 慢性期成人看護学領域では、慢性病を持つ人々のケアとその療養を支える環境の整備に関する研究を行っています。慢性病を患う人は増加する一方で医療機関の入院期間は短縮化しているため、患者自身は慢性病とともに生きることを十分に理解しないまま退院を迎えることが少なくありません。慢性看護として重要なことは、患者とその家族が実施可能かつ継続可能な健康管理や生活管理を支援することであり、個別性を重視した看護の提供が必要です。さらに、多職種の連携による支援が鍵となります。
 私は現在、看護師だけなく、医師、臨床工学技士、作業療法士等の多職種で慢性腎臓病を持つ人を対象にした研究を行っています。データを見ていると、患者一人ひとりの生活パターンが大きく違うことが分かります。そして患者自身が自分の生活パターンを把握していないこともあります。そのような患者固有の特徴を理解した上で、多職種の専門性を活かした取り組みをすることで行動変容に導くことに取り組んでいます。このような支援には行動分析学と呼ばれる理論を用いた介入が大いに役立ちます。

講師 | 有田弥棋子

 現在、私はケア者としての態度や価値観を育成するための研究を行っています。ケア者としての態度や価値観は人間性の育成にもつながり、医療の質を左右する人材の育成であると考えています。
 日本は少子超高齢社会を迎え、いずれ多死社会が訪れます。すべての人が平等に命は終焉を迎えます。しかし、現代の人々は日常の中で死について考えることや準備することが少なく、どのように生きたいかを考える余裕もなく過ごしていることがあります。「死について考えることを避けたい」と思う一方で「終活」等、自身の死について具体的に考える人も少しずつ増えてきました。特に、慢性的な病みを体験する人は、自身の健康や人生について向き合うきっかけがあります。さらに、人は多様な解釈で自身の死や健康をとらえています。つまり、死と生に対する見方や死と生にまつわる価値や考え方(死生観)が多様化しており、ケア者自身の死生観やケア者としての姿勢を備えなければなりません。そのため、その人らしい生活や人生に寄り添える人材の育成のために研究しています。

助手 | 野瀬珠美

 このたび慢性期成人看護学分野に着任いたしました。私は長きにわたり臨床現場で看護の実践をおこない、さらに看護師の行動を観察することにより臨床看護師の教育プログラムの構築を目指す研究に取り組んできました。人の行動はとてもユニークであり、それは慢性病をもつ患者さんも同様ではないかと思っています。慢性期にある患者さんが「病とともに生きる」という事象はどういうものなのか、これから学ぶことになります。慢性病を有する患者が苦痛なく日常生活が送れるような環境を提供出来るように日々研鑽していきたいと思います。

 左 有田弥棋子  中央 飛田伊都子  右 野瀬珠美

社会貢献活動・その他の取り組み

卒業研究(4年生)のテーマ

【2022年度】
●終末期がん患者の意思決定に影響を及ぼす倫理的課題に関する文献検討
●成人期炎症性腸疾患患者の生活における自己管理の現状と必要とする周囲からの支援関する文献検討
●股関節全置換術後の患者に対する退院指導に関する文献検討
●学童期から発症した慢性疾患患者の病気への認知についての文献検討
●脳卒中発症により麻痺を生じた患者に対する嚥下障害への看護援助に関する文献検討

【2023年度】
●療養生活における整容と意欲が相互的影響に関する文献検討
●外国人が日本の医療サービスを利用する上で抱く困難
●身体拘束における安全確保と活動抑制低減の両立の検討:認知症のある高齢者を対象として
●僻地で生活する住民の看取りのニーズと看護職者に必要な役割機能
●整形外科疾患による入院患者の自宅退院の可否に影響する要因の検討
●筋萎縮性側索硬化症患者とその家族における意思決定上の課題に関する文献検討
●神経難病患者とその家族の語りから医療者としての関わり:文献検討