精神看護学

精神看護学の観点からは、統合失調症患者やうつ病患者に対する看護に焦点を当てています。精神医学の新しい動向に常に留意しつつ、患者の心、身体、家族、環境社会を総合的にとらえ、一人ひとりの患者にあった看護援助の方法について検討するために、事例研究を中心に行っています。次に、精神疾患患者の身体合併症に関連した看護実践技術に焦点を当てています。精神疾患患者が身体の病気に罹ると、心の病気の症状や薬物療法の副作用におおわれて発見が遅れがちになることから、身体合併症の早期発見や予防のための看護実践技術について、量的・質的手法を用いて研究を行っています。
精神医学の観点からは、人間の精神的健康を生物的、心理的、社会的および霊的な側面から追及する研究教育を行っています。現在、最も精力的に取り組んでいるのは、認知行動療法による精神障害治療の効果研究です。

実習風景

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  • 多職種連携ー臨床カンファレンス

授業科目

人間関係論、精神看護学概論、精神看護学援助論、精神看護学援助方法、精神看護学実習、看護実践と理論の統合、医療カウンセリング、統合看護学実習、卒業演習、心理学、大阪を学ぶ、リスクマネージメント、医療倫理

メンバー紹介

教授 | 山岡由実

教授山岡由実

研究への姿勢は【当事者の立場にたつことを大切にする】です。看護の視点から現象を捉え、社会的課題に取り組みたいと考えています。現在取り組んでいる主な研究は3つ。1つ目は働く人のメンタルヘルスに関する研究です。精神関連疾患による長期休職者や退職者、自殺者の増加という社会的課題への取り組みの一つとして職場復帰プログラムを開発しました。精神保健で重要な概念 “リカバリー”を促進する新しい看護介入モデルの構築を目指します。2つ目は、行動変容のメカニズムを明らかにし、看護援助技術の発展に取り組む研究です。生活習慣を変えることはなぜ難しいのか、という研究疑問から質的研究を行い、精神力動的視点から慢性化の現象と対象理解を深めて、セルフケアの支援に新しい視点を取り入れました。現在は、精神力動理論を介入技法に応用した高度看護実践力の向上と事例研究法の発展をめざしています。その一方で、心身相関の視点から、遂行機能(脳機能)に焦点をあて、継続的な住民健診データを用いた量的研究にも取り組んでいます。これが3つ目の研究です。今後は、心(精神)と身体(脳機能)、包括的な理解からの介入モデルにつなげ、人々の幸福感を高めるような研究に発展させたいと思っています。

准教授 | 新田和子

准教授新田和子

人間は不安で緊張が高まると脈拍が早くなり、頭が真っ白になります。緊張状態が落ち着けば、おのずと平常の状態に戻ります。このように身体と心のバランスを取りながら日々の生活を営んでいます。
ささやかなできごとでもこのような状態になるので病気になればなおさらのこと。どんなに心の状態が健康であっても「なにかの間違いだ」「なんで私が?」と現状を受け入れるのが難しい状況が続きます。一見「きちんと現状を把握できていない」と思えるようなその行動も「心の健康」を守る仕組みです。そのような心の仕組みを理解し、患者様の心の在り様を考えながら、身体の看護を行うことで、身体だけでなく心の健康を保持するための看護にもなります。
私はこれまで、現場の看護師とともに、患者さんの身体の状況が精神的にどのような影響を与えているか、どのような工夫をすれば患者様の心の健康を維持しながら身体の治療に臨めるか考えながら日々の実践を行ってきました。
そのような実践の中で、看護師が患者様の変化を捉えることで患者様への対応が変化し、それに合わせ患者様が変わります。また、それに呼応するかのように看護師自身の気持ちややる気にも変化を及ぼし看護が変化します。
そのような変化を見るにつけ看護師が看護に自信を持つことは、ご自身にとっても患者様にとっても大切だと考え、援助関係やメンタルサポートについて色々思考を巡らせてまいりました。このような現場での経験を基に研究に取り組んでいければと考えております。

助教 | 山内彩香

助教山内彩香

患者さんやご家族の気持ちに寄り添った看護を提供するためには、看護の提供者である看護師自身も自分の心と向き合い、その動きを知り、ケアしていく必要があると考えます。これまで私は、患者さんと看護師の相互的な影響に注目し、特に、高い実践能力ゆえに病院組織から期待され、多重の役割や責任を担っている中堅看護師の仕事のやりがいやモチベーションを高めることが、看護師自身の心の健康だけでなく、看護の受け手である患者さんやご家族にとって良質なケアの提供につながると考え、「中堅看護師に対する他者からの承認とその影響」というテーマで研究を行ってきました。
 現在は、精神疾患によって、社会の中で精神的に孤立し、生きにくさを感じていらっしゃる患者さんが、病があっても社会の中で自分の居場所や人とのつながりを感じられるように、その方らしく幸せに生きていけるようにお手伝いをしたいと考えています。そのために看護として、生活環境を整えながら、関わりの中で患者さんが安心感を高めていけるようなコミュニケーションの工夫に関心があります。たとえば、いろいろな事情で、自分の思いを上手く言葉で伝えきれないでいる患者さんの訴えに耳を澄ませるための積極的な傾聴や、患者さんが歩んでいかれる道のりをご自分で選び決定していくという、患者さんの意思決定や治療計画への参画を支えるプロセスを明らかにできるように研究に取り組んでいきたいと思います。

社会貢献活動・その他の取り組み

2023年度卒業研究のテーマ

生後1年未満の乳児を持つ父親の産後うつ状態と関連要因に関する文献検討
発達障害が背景にある引きこもりの人への支援についての文献検討
統合失調症により初めて入院した急性期患者の家族に生じる「揺らぎ」への支援
摂食障害を抱える妊婦を支援する際に医療職者が感じる困難感に関する文献検討
虐待経験を抱えながら生きるための支援に関する文献検討 -虐待サバイバーからの視点に焦点を当てて-
精神障害者におけるセルフスティグマが生じる要因と対処様式についての文献検討
統合失調症患者のリカバリーに向けて看護師として必要な関わり