18トリソミーは生命予後不良な疾患ですが、その主たる死亡原因は先天性心疾患・肺高血圧を背景とした心不全、肺高血圧の増悪です。T18児では肺血管閉塞性病変が早期に進行しやすく、肺高血圧が早期に増悪します。一方で心室中隔欠損等の単純な先天性心疾患の合併例では手術介入により生命予後、生活の質が改善することが報告されるようになりました。
我々は治療を希望される両親の18トリソミー児で心室中隔欠損等の肺血流増加を伴う場合には、まず肺血管床の保護のため早期に肺動脈絞扼術+動脈管結紮術を行い、臨床経過に合わせ計画的に2期的に根治術を行っています。
当院における18トリソミー児心疾患に対する外科的介入の基本条件を以下に示します。
1. 18トリソミーの自然歴、予後など十分に説明した上で、両親が手術加療に対して積極的であり、家庭内での支援体制が整っています。
2. 合併する他臓器疾患が治療終了、または安定して経過しています。
3. 紹介元病院から退院後の外来および在宅治療への体制が準備されています。
4. 小児循環器医、新生児科医、小児心臓血管外科医、麻酔科医、集中治療医、病棟看護師、リエゾン精神専門看護部がチームで介入します。
メディカ出版社から2014年4月に発刊された「18トリソミー~子どもへのよりよい医療と家族支援をめざして」のなかで、我々の取り組みについて診療の実際として“心疾患への対応“パートの執筆を担当させて頂きました。その時点での治療成績を以下に示します。
2014年までに手術を行った心室中隔欠損症12例(男:女=4:8)の調査では、出生時体重は792~2464グラムで、一回目の姑息手術の後に2例(突然死、修復手術拒否の心不全)が亡くなっており、残る9例が姑息手術後63~481日後に二回目修復手術(心室中隔欠損孔閉鎖および肺動脈絞扼解除)に進みました。術前に重症肺高血圧を示したのは1例のみであり、同症例で術後一時的に膜型人工肺による補助循環を要しました。他に術後一過性の肝逸脱酵素上昇(肝障害)を6例(67%)に認めましたが、全例正常化し、9例すべてが退院しました。退院後の5年生存率は81%であり、様々な報告の生存率(33~56%)よりも良好でした。このことから我々の治療方針は妥当と考えられました。
現在まで23例の開心修復術と6例の姑息手術を実施しています。更に症例を増やしながら、その経験とノウハウを広く共有し18トリソミー児の命に貢献できるようチーム一丸で頑張っています。