本プロジェクトの目的は、健康寿命をのばし、少子高齢化が進むまちを元気にする「たかつきモデル」を創出すること。学長リーダーシップのもと、全学横断的なアプローチで地域住民を対象とする調査・研究を行います。市民の健康寿命に延伸につながるエビデンスを提供することで、健康増進施策への提言や研究成果の事業化を目指します。
プロジェクトの目的とゴール

人間の口のなかに存在する約400種類の細菌がつくる「口腔内細菌叢」。口腔内細菌のなかには、動脈硬化などの循環器疾患、自己免疫疾患や生活習慣病に関わるものもあるとされています。
大阪医科大学では、全国に先駆けて口腔内細菌叢の遺伝情報のメタゲノム解析を行い、自己免疫疾患との関わりを研究してきました。本プロジェクトでは、これまでの研究成果を礎に、口腔内細菌叢の変化に影響する要因と、口腔内細菌と健康寿命に関わる病気との関係にアプローチ。基礎研究と実地検証から口腔内細菌叢研究まで大学が一体となって取り組みます。
本プロジェクトのゴールは、研究成果によって子どもから高齢者までそれぞれのライフステージに応じた病気と介護の予防に寄与すること。本学の建学の精神である「医育機関の使命は医学教育と医学研究であり、またその研究は実地の医療に活かすことで完成する」を踏まえつつ、高槻市の健康福祉と経済発展に貢献することを目指します。

「口腔内細菌叢解析・創薬研究グループ」の活動概要
口腔内細菌のなかには、特定の疾患との関わりが指摘されているものもあります。たとえば、口腔内に慢性炎症を起こす歯周病は、血管内皮に破綻を生じさせるサイトカインを分泌します。また、歯周病はインスリンの分泌を抑えてしまうため、糖尿病を悪化させることもわかっています。
本プロジェクトでは、大阪医科大学病院の患者さまや高槻市民の皆様から唾液サンプルの提供を受け、口腔内細菌叢の遺伝情報のメタゲノム解析を実施。子ども、妊婦、働き盛りの30〜40代、高齢者など、さまざまなライフステージにある人たちの、口腔内細菌叢と全身疾患との関わりの解明に取り組みます。
また、今後の健康疫学調査では、健康診断や食生活などのほか、歯周組織検査や口腔機能検査検査(噛む力、唇を閉じる力などを測定する)を実施。同時に、食事や運動による血管内皮の変化を追跡することにより、健康レベルを可視化することも視野にいれています。
たとえば、血管の状態を「血管年齢」として示し、実年齢より若い年齢を維持してもらうのもアイデアのひとつ。わかりやすい指標を手がかりに、オーラルケアをはじめとする生活改善を促すモデルを提案します。

「疫学研究グループ」の活動概要
本プロジェクトでは、高槻市との協力体制のもと、「疫学研究グループ」が妊婦や乳幼児から高齢者までを対象とする「ライフコース疫学研究」を実施。口内細菌叢に対する年齢や生活習慣による影響などを検討し、健康であるための口腔内細菌叢と生活習慣の関係についても探ります。
疫学研究の柱のひとつは、対象集団の唾液を採取して、口腔内細菌叢の分布とその後の病気や要介護等の関連を追跡する「コホート研究」。口腔内細菌叢の形成過程や特徴を明らかにすることも狙いの1つです。もうひとつは、生活習慣病リスクの改善に効果があるとされる「インターバル速歩」を活用した運動介入研究。本プロジェクトでは、運動介入の前後で、口腔内の細菌環境や口腔機能、認知機能などの変化を継続的に追いかけます。
また、地域ごとの例えば学校数や公園数と児童の肥満状態などのデータを併合した包括的データベースを作成し、「データの見える化」により、健康施策に役立つエビデンスを公開する予定です。
高槻市との連携

本プロジェクトは、研究により得られた成果と知見を地域の皆様に還元します。高槻市協力のもと介護・健康等に関する地域情報から公衆衛生に関する高槻市の課題を「見える化」し、シンポジウムの開催や各種セミナー、子どもの教育現場への参画などを通じ、地域の皆様が「より健康に長生きできる方法」をお伝えしていきます。
高槻商工会議所との連携

2018年1月18日、高槻市と高槻商工会議所、そして大阪医科大学は本プロジェクトを中心とした、口腔保健分野における研究協力に関する協定を締結しました。
具体的には、コホート研究の一分野「職域コホート」で、商工会議所会員企業で働く人々にご協力をいただくほか、産学連携による共同研究や事業化も視野に入れています。将来的には、特定の細菌を検出するスクリーニングキットや特定の細菌種を抑制するバイオフィルムの開発を行い、本学に次世代オミックス医療研究拠点の構築を目指します。
年次計画概要
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