医療機関から出る医療廃液には,毒性の高い抗癌薬や、環境常在微生物に薬剤耐性の選択圧を与える抗菌薬・抗ウイルス薬が含まれるものがあり、適切に処理する必要がある。電気分解の原理を応用した小型の廃液処理装置を開発する。
現状
抗生物質・抗菌薬が効かない「多剤耐性菌」が問題になっています。とくに現在の特効薬である「カルバペネム系抗菌薬」が効かないCRE という細菌は,米国疾病予防センターCDC が「悪夢の細菌」と呼んで警戒しています。
CDCは現在の状態が続くと、2050 年には多剤耐性菌による死亡数が、がんによる死亡数を上回る、と警告しています。
2016年からの5年間,AMRアクションプランを政府が主導し,抗菌薬の使用抑制などで耐性菌の出現を抑える方策が採られてきました。
薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン概要(2016〜2020年)
分野 | 目標 |
---|---|
1. 普及啓発・教育 | 薬剤耐性に関する知識や理解を深め、専門職等への教育・研修を推進 |
2. 動向調査・監視 | 薬剤耐性及び抗微生物剤の使用量を継続的に監視し、薬剤耐性の変化や拡大の予兆を適確に把握 |
3. 感染予防・管理 | 適切な感染予防・管理の実践により、薬剤耐性微生物の拡大を阻止 |
4. 抗微生物剤の適正使用 | 医療、畜水産等の分野における抗微生物剤の適正な使用を推進 |
5. 研究開発・創薬 | 薬剤耐性の研究や、薬剤耐性微生物に対する予防・診断・治療手段を確保するための研究開発を推進 |
6. 国際協力 | 国際的視野で多分野と協働し、薬剤耐性対策を推進 |
しかし浄水場の上流にある下水処理場からの排水に医薬品が混入していることなどが原因で、水道水に医薬品がごく微量混入していることが明らかになっています。
シーズ
電気分解による抗菌・抗ウイルス薬の不活性化
医療現場で発生する医薬品含有医療廃液を現場レベルで不活化できる
装置を開発するため、企業と共同研究
さらなる小型を目指しています
・回収・運搬の手間が省ける
・薬品分解の他に別の薬品を使う必要が無い
・医療現場ですぐに処理できるため、流出のリスクが無い