医学教育センター専任教員ご挨拶

副センター長

梶本宜永
医博 
Yoshinaga Kajimoto M.D., PhD.
専門分野:水頭症、奇形、脳腫瘍

医学教育は、「知識」に加えて「技能」や「プロフェッショナリズム」の3領域を十分に学ばなければならないという変革期にあります。これまでは、知識をのみを問う医師国家試験に合格しさえすれば医師になれた時代が長く続きました。最近では、OSCEを通じて医学生の時期から基本手技は修得しなければなり、医学部卒業認定にはOSCE合格は必須のものとなっております。今後は、卒前のPost-CC OSCEの本格実施やシミュレーション教育の拡充、参加型の臨床実習により、技能の教育は更に充実したものとなってまいります。
一方、患者の命を預かる医師の資質としては、医療倫理、コミュニケーション、リーダーシップを含む総合的なプロフェッショナリズムを涵養しておくことが極めて重要であります。これまでは、医師になってから先輩医師の背中を見て習う徒弟的なシステムの中でプロフェッショナリズムは培われてきました。しかし、徒弟システムには、きちんとした教育カリキュラムや評価・フィードバックはなく、どうしてもプロフェッショナリズムの素養を欠く医師が生まれてまいりました。このような医師は、医療事故などのトラブルを起こすことから、医学教育の中でしっかりと系統的にプロフェッショナリズムを教え込んで行くことが求められています。
私の元々の専門領域は、脳神経外科であり、脳腫瘍や水頭症の診療を行ってきました。2017年1月から医学教育センターに赴任し医学教育に携わっております。これまでの臨床経験からも、医学生がプロフェッショナリズムの素質を身につけることは知識や技能の修得以上に重要であると考えております。現在、医療倫理SGLを通じて医療倫理のケースステディーを学生に教えておりますし、臨床医としての経験からプロフェッショナリズム教育の充実に尽力していきたいと思います。
また、教育方法も変革期にあります。19世紀型の講義を主体とした一方向の授業から、ICTを活用したアクティブラーニングなどの双方向の授業に移行しつつあります。私は医用工学に明るいことからeポートフォリオやシミュレーション教育や電子テキストブックなどのICTの分野も担当させていただいております。ICTを活用した医学教育の拡充に関しましても、尽力してまいりますので皆様方のご指導をお願い申し上げます。

瀧谷公隆
医博 小児科専門医
Kimitaka Takitani M.D., PhD.
研究分野:医学教育、小児栄養学

現在の本邦における医学教育は変革の時期を迎え、新たなる時代へ移行しつつあります。その例として、国際基準に則った医学教育プログラムを作成し、遂行することです。
本学は新しい医学教育プログラムを作成し、2018年4月、世界医学教育連盟の認証機関である日本医学教育評価機構の認証を受けました。現在、新しい医学教育プログラムの元で、学生教育を行っております。
あらたな医学教育の取り組みとして、新カリキュラムの3年生から学生研究が始まります。これは、研究マインド醸成の試みとして、学生が基礎・臨床医学教室に配属され、それぞれの専門分野の研究を行います。さらには垂直的統合教育の一環として、各学年を通じて、段階的に「医療プロフェッショナリズム」に関する講義を設定しています。さらに大きい改革として、診療参加型臨床実習の期間が大幅に増えました。そこで、本臨床実習におきまして、院外臨床実習(実習協力病院および診療所)の充実、シミュレーションによる体験型実習の拡充、屋根瓦方式による臨床実習、WEBによる学生評価方法の導入(UNIVERSAL PASSPORT)を行うことで、効率的な臨床実習プログラムを構築し、さらには卒後臨床研修へのシームレスな移行を目指しております。
本学学生を全方位的に取り巻く教育環境・システムを構築し、さらに本学学生に適した独自の統合カリキュラム(垂直的統合と水平的統合の融合)を策定していきたいと思っております。そのためには、学内の大学教職員、レジデントのみならず院外臨床実習をさせていただく実習協力病院における指導医の先生方のご協力が必要となります。さらには多職種連携教育も重要ですので、医療スタッフのご協力も不可欠となります。
是非ともご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

森龍彦
医博 腎臓専門医、総合内科専門医、笑い療法士
Tatsuhiko Mori, M.D., PhD.

病気を見るだけでなく、患者を診れる医師の養成が求められています。診察を行うことは、知識、基本技能(医学教育での講義、PBL、OSCE等で取得)を前提に、介入(治療)の必要性の判断、治療方法(薬)選択、生活指導(運動、食事等)の検討にあたり、メリットだけでなく、リスクも考えながら、さらには、患者さんの背景(経済、理解度(学歴)、家族、仕事、生活環境)、医療経済等も考えながら行うことが求められています。学生の時から外来や入院診療見学等を通し、日常診療に触れることで、医療が医師中心に行われているのでなく、チームで行われていること知り、患者さんのサポートとして地域包括ケアシステムの重要性、医療安全等についても学ぶ必要性があります。医学の進歩は凄まじく、必要な知識も膨大になってきていますが、これらを駆使するのは大変です。今後は、インターネットやAI等による補助を期待するところです。しかし、これらの技能や知識の取得以外に、態度、すなわちプロフェッショナリズム、特に、患者さんとのコミュニケーションの確立が求められます。患者さんの気持ちを汲み取り、安心して治療に参加して頂ける事(患者さんに理解して頂ける説明が出来、ニーズや情報が引き出せる、すなわちコミュニケーションスキル)については、AIでの介入が難しい範囲です。患者さんのそばに立ち、生きる気力を引き出す事が出来る医師の養成が大切と考えます。以上、医学や医療の発展に貢献でき、患者の気持ちを考えられる医師に養成に、微力ながら尽力させていただく所存です。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

伊藤隆英
医博 総合内科専門医、循環器内科専門医、超音波専門医・指導医(心臓)、産業医
Takahide Ito, M.D., PhD.
専門分野:心臓超音波、心不全、心筋症

未曾有の超高齢化社会、医療の高度化と細分化、百年に一度のパンデミックなど、社会環境が大きく変動する中、医学教育のあり方もこれまでにない変革を迫られています。少なくとも、世の中のさまざまな要請に対して、短いスパンで柔軟に対応できるしくみづくりを目指す必要があります。
昨今の若者は、全体の空気を読むことに長けている一方で、臆することなく自分の考えを述べることができます。「プロフェッショナリズム」が教育現場に導入され久しいですが、プロフェッショナリズムは明確に定義されたものではなく、時代により変容します。現在の医学生の気質や価値観に合致したプロフェッショナリズムを模索する必要性を感じています。
ウィリアム・オスラーは、「医療はアートであり取引ではない、使命であって商売ではない、その使命を全うする中で、あなたはその心を頭と同じくらい使うことになる」と述べています。この言葉は私の「プロフェッショナリズム」の原点であり、臨床医として、折に触れ思い出すようにしています。
私は令和4年12月に医学教育センターに配属されました。関係する教員やスタッフが、豊富な現場経験に裏打ちされたノウハウにより、大胆かつ繊細に医学生を後押ししている姿を見るたびに啓発を促されています。
まだまだ力不足でありますが、世の中に広く貢献できる、ひとかどの医師養成を目指し、医育機関としての本学の発展に寄与する所存です。どうぞご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。