全国の統合失調症治療薬クロザピン服用患者のデータから、 重篤な副作用の背景因子を突き止めました

研究

本学 医学部 神経精神医学教室の金沢徹文教授、豐田勝孝助教、今津伸一助教と大阪医科薬科大学病院 薬剤部の畑武生主任の研究グループは、日本の9000人以上のクロザピンを服用している難治性統合失調症患者のナショナルデータベースから得られた情報を基に、副作用の発生を予測する背景因子を同定しました。

クロザピンは全世界で治療抵抗性統合失調症の治療薬として承認されており、日本では2009年から使用されています。しかし、治療薬として使用している患者さんはまだまだ限られています。原因として重篤な副作用が一定数発生し、それに対する懸念が強いため処方数が伸び悩んでいる現状があります。
大阪医科薬科大学医学部神経精神医学教室および同大学病院薬剤部では、東京女子医科大学や日本神経精神薬理学会などの協力を得て、日本でクロザピンが使用されている全ての患者さん9000人以上のデータを解析し、白血球減少症や心疾患、高血糖、便秘といった副作用の詳しいプロファイル、すなわちどのような量や投与期間で起こりやすいのかを明らかにしました。特に心筋炎といった死亡リスクとなる心疾患は3.9週(2.9-9.4)と早期に発生し、またこれも中断に至る主要な原因となる白血球減少症は全患者の5%(411名)に発生し、14.3週(7.3-45.6)を中央値とする時期に、200mg(100-350)を服用する頃に多く見られました。さらに、高血糖による中断は0.7%に発生しており、比較的少量の投与量(125mg, 50-200)でも血糖上昇を認めました。この研究の結果から特定の副作用の発生をあらかじめ予測することで、中断に至る症例をできるだけ少なくすることとなり、ひいてはこの薬剤の恩恵を受けられる患者さんが増えることになるものと考えられました。

関連リンク