医学専攻博士課程 概要

1. 教育目的

高度の医学知識と医療技術を身に付けた人間性豊かな医療人の養成を通じて社会の発展に貢献することを目的とする。

2. 教育理念

人間性豊かで、国際的な医学・医療の指導者となるに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを教育理念とする。

3. 教育目標

1.研究能力の高い臨床医と医療関係者の育成
2.地域医療への貢献
3.国際交流の推進
4.他大学との研究交流の推進
5.IT技術を取り入れた e-Learning の推進

4. 医学専攻の設置

本学大学院医学研究科は、進展めざましい医学を取り巻く環境により対応するため、専攻や分野の別を超えて、大学院の目的と教育内容を明確にし、組織的に教育研究活動を実践することを目的として、平成21年度より、これまでの形態系専攻、機能系専攻、社会医学系専攻、内科系専攻および外科系専攻の5専攻を改組転換し、新たに医学専攻を設置しました。

5. コース制の導入

医学専攻の設置に伴い、現代社会の多様なニーズに対応できる目的別のコースを導入して統合教育を展開することで、広範な研究が展開できるとともに、目的に沿った幅広い臨床能力を身につけた研究者の養成および高度医療人の養成を目的として、コース制を導入しています。大学院生は、いずれかのコースに所属することとなります。
 

(1)予防・社会医学研究コース

医学・医療が社会と接点を持つ領域での研究、特に疾病予防、健康の保持増進、社会・家庭復帰、終末期医療といった社会の健康に関する諸問題が近年重要視され、疫学・統計的手法、動物実験、機器分析といった研究手法の必要性が叫ばれています。
また、地域保健・地域医療の中心となる保健所活動には公衆衛生医師の配置が必要不可欠であり、公衆衛生医師の養成・確保は喫緊の課題です。
本コースでは、職域健康問題に関する産業衛生、医療倫理、地域保健・福祉、老人介護・保健、環境中毒、国際保健、感染症予防、法医鑑定、救急医療、臨床疫学、心理学、リハビリテーション、スポーツ医学などを課題とし、広範囲な領域での活動を推進するために、異なる専門分野を持つ5分野と協力部門のスタッフが教育・研究に携わり、予防医学を地域医療に役立てる研究者の養成を目指します。
 

(2)生命科学研究コース

医学と生命科学との連携を目指し、次世代を担う医学を含む生命科学研究者を養成することを目的とします。
本コースでは、臨床医学だけでは解決できない問題に取り組むための先端的生命科学について、ヒトの体の正常な構造や機能を支える仕組み、それが破綻して病気が生じるメカニズム、そして病気を予防・治療する方法等を研究し、分野を横断して学際的研究を展開することにより、生命の普遍的原理を探究することを目指します。
 

(3)高度医療人養成コース

近年、我が国においては高齢化による疾病構造の変化、国民の医療ニーズの多様化・複雑化の中で、これらに対応できる高度医療人の養成がますます重要となっており、社会から幅広い臨床能力を身につけた認定医・専門医あるいは臨床研究者が求められています。
本コースでは、社会からの要請に応えられる質の高い医師や臨床研究者の養成を目指すとともに、各学会が認定する認定医・専門医の取得も併せて推進することにより、地域医療に貢献できる人材の養成を目指します。
 

(4)再生医療研究コース

再生医療は、細胞移植・組織移植によってこれまでの医療を根本的に変革する可能性を有する新しい医療であり、その実用化は我が国だけではなく全世界から注目を浴びている研究のひとつです。
本コースでは、再生医学・再生医療、臓器移植・細胞移植の概念と基本的技術を充分に習得させるとともに、体性幹細胞、ES細胞、移植免疫などについての最新の知識と研究の動向を理解させ、これらの総合的理解に基づき基礎的素養を充分身につけ、かつ再生医療、臓器移植、細胞移植における独自の研究を展開しうる広い視点と技術を持った研究者の養成を目指します。
 

(5)先端医学研究コース

医学研究は、医療機器、医薬品、再生医療などの研究や臨床応用の進展において、最先端の医療を支える基礎医学研究から臨床医学研究への橋渡しとなる研究(トランスレーショナルリサーチ)の重要性が増しており、新たな技術や知見に基づいた高度な先端医療が求められている。また、現段階では初歩的でも将来的に発展しうる研究内容もあり、自由で萌芽的研究の重要性はいうまでもありません。
他方、近年の高度化した医療の推進は、医療に習熟した医師、薬剤師、看護師、その他の医療技術者等(コメディカル)の各種専門家が参画し、チームとして機能することが何より重要となっています。
本コースでは、そうした将来展望を見据え、最先端の医療を支える教育・研究について独自コースを定め、最先端医療の担い手となる知識・技術を持つ医師または研究者の養成を目指します。

6. 共通科目

これまでも専攻共通の科目を設置していましたが、本学大学院において高度の医学知識と医療技術を身に付けた人間性豊かな医療人を目指すにあたり、その導入教育として多岐にわたる専門分野の講義を多角的に履修し理解することを目的としています。
その一環として、「統合講義」および「基礎研究法実習」を共通科目として位置づけています。
「統合講義」は、各自が目指す今後の専門研究に必要な基本的知識および考え方を修得するための科目として、医学分野に関する基礎的素養の涵養に配慮し、入学後の速やかな医学研究活動の開始を目指します。
また、「基礎研究法実習」においては、特に基礎的な医学分野の研究手法を履修し理解することにより、今後の各自の専門研究に必要な基本技術および考え方を修得することを目的としています。

7. 修了要件

大学院に4年以上在学し、所定の授業科目31単位以上を修得するとともに、必要な研究指導を受けながら研究成果発表会で基準を満たすことが学位申請の要件になります。
大学院4年生で修了するためには、学位論文を提出し、かつ最終試験に合格しなければなりません。
なお、特に優れた研究業績を上げた場合については、3年以上在学すれば修了を認めることがあります。

8. 給付奨学金制度

解剖学、生理学、生化学、化学、薬理学、創薬医学、病理学、微生物学・感染制御学、衛生学・公衆衛生学、法医学、社会・行動科学に所属する大学院生に対し、在学中の研究活動等を奨励することを目的とし、年間授業料及び教育充実費相当分を給付奨学金として給付します。

9. ティーチング・アシスタント(TA)制度

大学院在学中、医学部生に対する実験、実習等の教育補助業務に従事し、これに対する手当支給により経済的支援を行うとともに、大学教育の充実および指導者としてのトレーニングの機会提供を図ることを目的とした制度を設けています。
ただし、主たる本務先及びレジデントや教育職としての身分を有している場合、手当は支給されません。

10. リサーチ・アシスタント(RA)制度

大学院における研究体制の充実および若手研究者の養成に資するため、研究プロジェクト等に必要な補助的業務に従事する大学院生に対し、手当支給により経済的支援を行う制度を設けています。
ただし、主たる本務先及びレジデントや教育職としての身分を有している場合、手当は支給されません。

11. 学生教育研究災害傷害保険

大学院在学中、実験・実習などの正課、大学行事、課外活動、大学敷地内における不慮の事故および通学途中・施設間移動中における交通事故等が発生した場合に対する補償制度です。
本学医学研究科では、大学院在籍中により安心して研究活動を推進できるよう学生教育研究災害傷害保険(通学中等傷害危険担保特約/接触感染予防保険金支払特約含む)Aタイプおよび医学生教育研究賠償責任保険(医学賠)に全員加入しています。
これに係る費用については、大学院生の個人負担として任意加入としている場合が多いのですが、本学研究科ではすべて大学負担とし、全員加入しているのが特徴です。

12. 長期履修制度

本研究科では、社会人入学試験を経て入学した学外にて勤務する臨床医、開業医、または本学にて勤務するレジデント等の身分を有する大学院生や、育児、介護等の事情によりやむを得ない事情が生じた大学院生のうち希望者を対象に、標準修業年限(4年)を超えて一定の期間(5年)にわたり計画的に研究を進めて修了を目指すことができるよう長期履修制度を平成22年度より導入しました。長期履修適用者は5年次においては登録料35万円、教育充実費15万円の納入が必要です。
これにより、初期臨床研修2年目やレジデントからの早期に大学院に入学して医学研究に取り組む若年医師等のキャリア形成を支援します。