書籍『実践 多職種連携教育』の紹介

教える側・学ぶ側の双方に役立つ多職種連携教育テキストの決定版。本書では、多職種連携が求められる背景となる、現代医療および医学教育の課題をていねいに整理。それぞれの医療専門職について役割と成長過程を20項目、さらには病院と地域において多職種連携が必要となる部署や状況を19項目で詳述。すでに大阪医科大学などの授業を事例として取り上げながら、多職種連携教育の実践的な方法論を解説しています。

寺崎文生  監修 / 赤澤千春  監修 / 駒澤伸泰  編集
A5判 304頁/定価(本体3,600円 + 税)
ISBN978-4-498-10912-4
2020年02月発行
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監修者より

多職種連携教育がはじまったのは1987年の英国。The UK Centre for the Advancement of Interprofessional Education(CAIPE)が設立され、多職種連携をテーマに研究や研修が行われるようになったときです。日本では、2005年に文部科学省の「大学教育の充実:特色ある大学教育支援プログラム」から、医療系大学で多職種連携教育が本格的に取り入れられるようになり、2008年には日本保健医療福祉連携教育学会が設立されました。それぞれの医療職の専門性が高まっている現在、医療の現場においても患者を中心とした「チーム医療」によって医療の質の向上を目指すべきであり、その実現には多職種連携は必要不可欠なものとして強く認識されています。ところが残念ながら、各医療現場では多職種連携の実践が効率かつ円滑に行われているかというと必ずしもそうではない現状があります。本書はこれらの現状を打開し、多職種連携を築いていくための実践的な教科書。教育方法のみならず、各医療関連専門職の役割や連携について臨場感をもって理解でき、各医療専門職に共通の認識を学べるという点で画期的な構成になっていると思います。

寺﨑文生 専門教授
医学教育センター 副センター長

多職種連携が推進される背景には、高齢化社会と医療安全上の対策という二つの要因があると考えます。高齢化社会に対応するためにはじまった地域包括ケアは、医師や看護師に加えてソーシャルワーカーやヘルパーなどが一緒に取り組まなければ成り立ちません。また、高度化する先進医療の安全性を期するには、医師と看護師だけではなく、薬剤師、理学療法士、作業療法士、栄養士、臨床工学技士、ソーシャルワーカーなどの専門職が力を合わせて、治療や服薬指導を行う必要があります。多職種連携は、お互いの職種の役割と専門性を理解し、課題に合わせたチームを編成することから始まります。この連携をつなぐのがより良いコミュニケーションであり、その媒体となるのが査察や記録のあり方です。本書では各職種の専門性、実際の連携において要となるチームワーク育成、課題の生じる部署・状況別の具体的な連携事例までを幅広くカバー。卒前・卒後教育における合同授業、シミュレーション、実習などの具体的な実施方法までを提示しました。多くの専門職大学でも本書を参考にしていただき、これからの医療現場の課題解決に活かされることを切望しています。

赤澤千春 教授
看護学部長

 ※掲載情報は2021年作成時のものです