小児心臓手術では、心臓への到達のために胸骨正中切開がなされます。乳児期の胸骨正中切開後は、骨化が十分でない胸骨への手術侵襲が加わることにより竜骨型鳩胸(船底の様な前方への突出変形)がしばしば発生します。その原因は横隔膜前方部の発育不良、肋骨及び肋軟骨の過剰増生、そして胸骨分節の癒合異常が類推されています。
この胸郭変形の理想的な予防法はなく、現時点では変形発生時の装具着用による矯正が行われています。現在市販される矯正装具は、変形部のみならず胸郭全体を圧迫する構造であり、胸郭の成長と肺機能の発達への悪影響が懸念されます。
本研究では、胸郭全体ではなく、胸骨突出部のみに適度な圧迫力をかけることで変形の予防や増悪を防止する矯正装具を新規開発と臨床応用です。その効果判定には被爆リスクを回避すべく一般的に行われるX線CT検査ではなく、3Dスキャナーを導入し変形角度の経時的測定を行いました。
現在まで約100例の乳幼児に装着され、中央値9か月の装着後に約76.9%に3Dスキャナーによる鳩胸角度の改善が得られました。一方保護者の視覚評価では約61.5%の改善であり、着用およびデザインの満足度は高かったです。現在全国展開で本装具の普及を行っています。効果改善のための開心術後の装着タイミング、装着期間、および圧迫圧力等の適正化を研究しています。
特許
「胸骨変形防止装具」—特許第6302752号(登録日平成30年3月9日)
助成金
なし
共同研究先
大阪医科大学医学部 整形外科学教室、永野義肢株式会社