小児の肺血流減少性チアノーゼ性先天性心疾患に対し、肺血流を増加させ肺動脈の成長を促す鎖骨下動脈と肺動脈とを小口径人工血管(径 3-5mm)で接続する Blalock-Taussig 手術が行われます。過大なサイズの人工血管は肺血流過多による肺うっ血と心不全、また重症な場合には全身血流量低下による臓器潅流 低下によるショック状態を引き起こします。過少サイズでは、肺動脈の低形成と低酸素血症が時に生じます。しかしながら患者背景が広範でありそれらのサイズ選択に一定の基準設定できないため、サイズに関係なく何らかの方法で人工血管の流量を調整できることが望まれます。
この課題解決には手術により体内に埋植された小口径人工血管の流量を体外から調整可能とするデバイスが必要と考え、誰もが使用可能な簡便な構造、および数か月以上に渡る性能維持が可能な耐久性を有するミニチュア化バルーンを作成しました。術後の目まぐるしい循環動態の変化の中で、必要性に応じた人工血管血流量の最適化が図れることが目的です。
ミニチュア化した円筒形バルーンに人工血管が内挿され、バルーン内容量の変化により人工血管の断面積が変化し流量の調節が可能でした。動物への埋植試験では、皮下に埋植されたポートに接続されるバルーンは経皮的に注射水の出し入れさせることで作動し、人工血管の流量の調整が可能でした。
本開発の初期段階における結果の学会および論文報告後に多くの実用化を望む声を頂戴しました。実用化に向け、バルーン素材への耐久性と非透水性の付与とユーザーフレンドリーなデザイン変更へ研究を継続させています。
特許
「人工血管の流量調節装置」—特許第6466120号(登録日平成31年1月18日)
助成金
科学研究費補助金 若手研究(B)(平成 26、27、28 年度 )
共同研究先
東海メディカルプロダクツ株式会社