天然高分子シルクーフィブロインを基盤とする医療用シート材

小児心臓血管外科領域における手術治療ではシート状材料をパッチとして用い欠損孔の閉鎖や狭窄部の拡大を行います。既存の製品(PTFE、ウシ心膜など)は遠隔期での劣化に伴う変性、石灰化、硬化、退縮が問題と なり再手術による交換を必要とする場合が多く、またそれらの既存製品はすべて海外製品であり、供給の問題、我が国のニーズに基づく改良ができないなどの問題もあります。それらの問題を解決する製品の登場が望まれています。
この課題解決のため古来より手術縫合糸として応用されてきた繊維“絹”のフィブロイン蛋白に合成高分子を配合し、従来にない 生体適合性を有する人工パッチを開発します。
繭から抽出したシルクーフィブロイン溶液と合成高分子(熱可塑性ポリウレタン)を配合した混合溶液からエレクトロスピニング法を用いてシートを作成しました。 この作成したシートは小児心臓血管手術で汎用される既存製品 PTFE パッチと遜色ない物性 (弾性力、手術時のハンドリング、止血程度など)を有しています。 動物の大動脈への埋植実験では、生体内で長期的に安定し劣化等が生じないことが認められました。引き続き最適な配合高分子と実用化に向けた成形技術の選定を行っています。また埋植部位で必要とされる効果発現(血管新生など)をさせるための機能性ペプチドをフィブロインに結合させたシートの作成に展開させています。

特許

「医療用組成物及び組成物の製造方法」—特許第6590198号(登録日平成30年3月23日)、特許第6537656号(登録日令和1年9月27日)

助成金

農林水産省「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業 シーズ創出ステージ(26051A)」 科学研究費補助金 基礎研究(C)26462094(平成26、27、28年度)

共同研究先

東京農工大学