膠芽腫に対するジアシルグリセオールキナーゼ(DGK)阻害による免疫療法の強化

矢木 亮吉
YAGI RYOKICHI

医学部 脳神経外科学教室
カテゴリー:医療素材 

研究開発段階

 

研究のポイント

  • 近年注目されている「免疫療法」の膠芽腫(GBM)に対する臨床的優位性は示されていない
  • 全細胞に存在する脂質代謝酵素であるDGKが免疫治療抵抗性の原因である「T細胞疲弊」を抑制する報告がある
  • GK阻害によるglioma細胞への抗腫瘍機序を明らかすることで、臨床成績が向上する可能性がある

研究の背景と概要

膠芽腫(GBM)は増殖能と浸潤能を併せ持つ悪性腫瘍であり、根治的な摘出手術を行うことは不可能であることが多い。また放射線や化学療法に対する感受性も高くなく、現在の標準治療でも平均余命は2年に満たない。近年、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体が開発されたが、GBMに対する抗PD-1抗体の臨床試験では有効性は証明されていない。
ジアシルグリセオール(DAG)は脂質リン酸化酵素であるジアシルグリセオールキナーゼ(DGK)によりホスファチジル酸(PA)に代謝され、DGKの活性化はDAG量を減少させる(図1)。免疫機構の中心的役割を持つT細胞では、DGK過剰発現によるT細胞疲弊が確認されており、DGKを抑制することによりIL-2やIFNγなどのサイトカイン産生やT細胞増殖やT細胞活性が亢進し、T細胞疲弊が抑制される。DGKは中枢神経細胞に多く存在しており、GBMにおいてもDGKは存在する。ヒトglioma幹細胞(GSC)でもDGKが確認されており、DGK KO脳腫瘍マウスにおける腫瘍縮小効果も確認されているが、その機序は明らかにされていない。
本研究では、DGK阻害によって引き起こされる①T細胞活性化による間接的抗腫瘍機序、②glioma細胞への直接的抗腫瘍機序を明らかにすることで、免疫治療抵抗性の悪性腫瘍に対するDGK阻害による免疫療法の臨床成績を向上させる(図2)。

産学連携の可能性

DGKの阻害がGBMに対する免疫療法の治療効果向上に寄与することを証明し、悪性脳腫瘍に対する新たな治療選択肢となる新薬の開発に取り組みたい。DGK阻害薬の開発研究を共同で行える薬学系の研究室や製薬企業との連携を望んでいる。

関連論文・知財

1. Oncology meets immunology: the cancer-immunity cycle. Chen DS, et al. Immunity 39(1), 1-10, 2013
2. DGKζ Plays Crucial Roles in the Proliferation and Tumorigenicity of Human glioblastoma. Gu X, et al. Int J Biol Sci 15(9), 1872-1881, 2019
3. Loss of Diacylglycerol Kinase-Ζ Inhibits Cell Proliferation and Survival in Human Gliomas. Diao J, et al. Mol Neurobiol 53(8), 5425-35, 2016