人工ヘモグロビン試薬による生体試料中有害ガス分析法の構築及び有害ガス成分の体内分布に関する研究

森 一也
MORI KAZUYA

医学部 法医学教室
カテゴリー:医療素材 

研究開発段階

 

研究のポイント

  • 人工ヘモグロビン試薬(hemoCD)を利用した、血液中一酸化炭素(CO)及びシアン化水素(CN)の簡易同時分析法の構築
  • 有害ガス中毒における臓器に対する影響の検証
  • 有害ガスの病態解明と詳細な死因の究明

研究の背景と概要

有害ガスの吸引による中毒は、法医中毒学の分野で最も重要な懸案事項である。特にCOの吸引による死亡事案は、薬物中毒死の70%程度を占めている。さらに、断熱材やクッション等石油由来加工製品群が火災の際に燃焼することで猛毒の青酸ガス(CN)を放出することが知られており、CNの吸引による影響も考慮した死因判定が求められるようになってきた。方法論として、中毒者から採取した血液中のガス濃度を測定して重要な死因判定基準としている。しかしこれら有害ガスの血液中濃度測定法は簡便性に欠ける他、腐敗あるいは熱による焼損で血液が採取できない場合には適用が困難となる。また、脳をはじめとする臓器への適用が不可能であることから、有害ガスの吸引による中毒者の臓器への残留性や組織へのダメージ等の影響は評価できていないのが現状である。
そこで、我々は近年同志社大学 理工学部 北岸宏亮 教授が開発した、hemoCDに注目した。本試薬は、COやCNと強力に結合し、特異的な錯体を形成することが知られている。そこで本研究では、この人工ヘモグロビン試薬を利用した、生体試料からのCO及びCNの一斉迅速簡易定量法を構築するとともに、脳をはじめとする臓器に適用し、これら有害ガス中毒における臓器への影響を検証し、有害ガスの病態解明と共に詳細な死因の究明に繋げる。

産学連携の可能性

有害ガスの血中濃度測定の簡便化及び高精度化により、生体組織への有害ガスの影響を詳細に検討できるような研究の協働を求めている。

関連論文・知財

1. Synthetic heme protein models that function in aqueous soluti on. Kitagishi H et al. Chemical Communications 57, 148‒173, 2021
2. A synthetic porphyrin as an effective dual antidote against c arbon monoxide and cyanide poisoning. Kitagishi H et al. PNAS 120, e2209924120, 2023