血液神経関門の保護に着目した、神経内浮腫に起因する疼痛に対する新規薬物療法の開発

横田 淳司
YOKOTA ATSUSHI


医学部 整形外科学教室

カテゴリー:医薬品 

研究開発段階

 

研究のポイント

  • 我々は、神経内浮腫と神経支配領域の疼痛が関連していることを報告した
  • 神経内浮腫は血液神経関門の破綻によって生じる
  • 血液神経関門の保護効果を有する薬物は疼痛抑制効果が期待できる

研究の背景と概要

我々は、末梢神経慢性伸長損傷の病態解明を目的とした坐骨神経間接伸長動物モデルを作成し、基礎研究を続けてきた。
その結果、神経伸長に伴い、後根神経節(DRG)におけるテトロドトキシン抵抗性(TTX)ナトリウムチャネルNav1.8, 1.9の発現が低下し、支配領域は痛覚過敏に陥ること(文献1)、また伸長後早期にTTXナトリウムチャネルの発現が正常化し、30日後には変性に陥った無髄神経の再生が進行している(図)にもかかわらず、痛覚過敏が残存することが分かった(文献2)。そこで、我々は絞扼性神経障害による疼痛との関連が報告されている血液神経関門(Blood Nerve Barrier: BNB)の機能不全に着目し、慢性伸長後のラット坐骨神経におけるBNBの破綻と疼痛との関連を調べた。その結果、神経伸長損傷に伴い、遅発性にBNBが破綻し、神経内浮腫が発現すること、その回復が痛覚過敏の改善と関連することを証明した(図) (文献3)。
この結果より、末梢神経伸長に伴い遷延する疼痛のメカニズムにはBNB破綻に伴う神経内浮腫が関係していることが示唆され、血管内皮細胞に作用し血管透過性抑制効果を有する薬物が疼痛の新規治療薬になり得ると考えた。

産学連携の可能性

慢性の疼痛は全世界で15億人以上の患者がいると推計されており、我々が解明したBNB破綻に伴う疼痛のメカニズムを基にした創薬に一緒に取り組んでくれる企業や研究者を求めている。

関連論文・知財

1.Altered expression of sodium channel distribution in the dorsal root ganglion after gradual elongation of rat sciatic nerves. Ohno K, Yokota A, et al. J Orthop Res 28(4), 481-6, 2010
2.Role of sodium channels in recovery of sciatic nerve-stretch injury in rats. Hirofuji S, Yokota A, et al. Muscle Nerve 50(3), 425-30, 2014
3.mpairment and restoration of the blood-nerve barrier and its correlation with pain following gradual nerve elongation of the rat sciatic nerve. Fujino K, Yokota A, et al. Int J Neurosci 131(3), 254-263, 2021