バイオフィルム感染症に有効な予防・治療法の開発を目指す創薬

石井 誠志
ISHII SEIJI

医学部 生化学教室
カテゴリー:医薬品 

研究開発段階

 

研究のポイント

  • バイオフィルムの形成や維持に重要なタンパク質を標的とした低分子阻害剤の探索
  • バイオフィルムのマトリックスを分解する酵素の実用化
  • バイオフィルムに薬剤を送達するための特異的プローブの開発

研究の背景と概要

細菌はバイオフィルムと呼ばれる多糖類や細胞外DNAを含む粘液質のマトリックスを分泌しながらコミュニティを形成し、生育する。バイオフィルムは、う蝕や歯周病、中耳炎や副鼻腔炎、呼吸器感染症や尿路感染症の他、カテーテルや人工関節を含む様々な医療用デバイスの感染に関与する。バイオフィルム内の細菌は、免疫系(抗体)や抗菌薬に対して高い耐性を示すためこれらの感染症は難治化する。
私達はこれまでに、Streptococcus属細菌のクオラムセンシングがバイオフィルム形成の制御に関わることに着目し、このメカニズムを阻害する低分子化合物を開発した。この化合物は、 S.mutans(う蝕原性細菌)のバイオフィルムの初期形成過程を阻害するが、成熟したバイオフィルムに対しては有意な効果を示さなかった。
この例からわかるように、バイオフィルム創薬の課題は、バイオフィルムのマトリックスが複雑なネットワークを形成しているため、薬剤の浸透性が低いことにある。私達はこの問題を克服すべく、バイオフィルムに対する薬物送達システムの研究に取り組んでいる。
バイオフィルムの主要タンパク質を標的とした低分子阻害剤の探索とバイオフィルムのマトリックス分解酵素の実用化を目指すと共に、バイオフィルムに特異性の高いプローブを創出することで様々な薬剤を効率良く送達し、バイオフィルム感染症に対する有効な予防・治療法の開発に役立てたいと考えている。

産学連携の可能性

バイオフィルム感染症と関連する、製薬会社、オーラルケア商品を扱う企業、医療機器メーカー、医療素材メーカー等と連携が可能。

関連論文・知財

1. High-throughput Screening of Small Molecule Inhibitors of the Streptococcus Quorum-sensing Signal Pathway. Seiji Ishii*, Kenji Fukui, Satoshi Yokoshima, Kazuo Kumagai, Youko Beniyama, Tetsuya Kodama, Tohru Fukuyama, Takayoshi Okabe, Tetsuo Nagano, Hirotatsu Kojima, and Takato Yano*. Scientific Reports 7, 4029, 2017
2. Crystal Structure of the Peptidase Domain of Streptococcus ComA, a Bifunctional ATP-binding Cassette Transporter Involved in Quorum Sensing Pathway. Seiji Ishii, Takato Yano , Akio Ebihara, Akihiro Okamoto, Miho Manzoku, and Hideyuki Hayashi. Journal of Biological Chemistry 285, 10777‒10785, 2010

[特許] 特開2012‒023995