酸化亜鉛が新型コロナウイルスの感染性を低下させることを確認
ー堺化学工業株式会社との共同研究ー

研究

概要

本学の医学部微生物学教室と堺化学工業株式会社(本社:堺市堺区、社長:矢部正昭)は、酸化亜鉛が新型コロナウイルスの感染性を低下させる効果を有することを世界に先駆けて明らかにしました。
元来、酸化亜鉛の抗菌効果や抗ウイルス効果は知られていましたが、新型コロナウイルスに対しても有効であることを確認いたしました。
ウイルス溶液に0.1gの酸化亜鉛(粒子径2μm)を添加して1時間後の感染性を調べたところ、酸化亜鉛なしと比較して、新型コロナウイルスの感染性を99%以上減少させることが確認されました。酸化亜鉛は塗料、繊維、化粧品、樹脂成型品に広く配合されている素材であり、今後、新型コロナウイルス対策用品向け素材としての応用が期待されます。

※酸化亜鉛開発品、酸化亜鉛の粒子径は2μmである。

形成されたプラーク数(3回測定)

  平均値 標準偏差
酸化亜鉛開発品 483 236
酸化亜鉛 1,167 176
酸化亜鉛なし 178,333 29,297

詳細

1.研究背景

酸化亜鉛は白色顔料、脱臭剤、紫外線遮蔽材、放熱材、加硫促進助剤などの用途で幅広い分野で使用されてきた素材です。また、従来から抗菌・抗ウイルス効果も知られており、用途によっては配合実績もあります。
今回、新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2)にも有効であるかを検証しました。

2.試験方法

  1. 酸化亜鉛粉末0.1 g を50 mL チューブに入れ、50万感染価のSARS-CoV-2を含む5 mL のウイルス溶液を加えました。
  2. 振盪(しんとう)しながら、室温で1時間処理しました。
  3. 処理サンプルを遠心分離することによって粉末とウイルス溶液とを分け、細胞培養液を使って遠心上清を希釈しました。
  4. 希釈ウイルス溶液をSARS-CoV-2感受性細胞に接種しました。
  5. 2 時間後、細胞培養液をメチルセルロース粘性培地に交換し、37℃のインキュベータにて2 日間培養しました。
  6. ホルムアルデヒドで細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色後、ウイルス感染によって作られたプラーク(死細胞の集団)を観察し、その数を定量しました。

3.試験結果

酸化亜鉛開発品、酸化亜鉛ともにウイルス感染価の減少が確認されました。

今後の展開

今回、酸化亜鉛の新型コロナウイルスに対する効果を確認できました。これは感染性ウイルスを不活性化あるいは除去できることを示しています。酸化亜鉛はその粒子サイズや結晶構造など、その物性を変化させることで不活性化効果をさらに高められる可能性をもっており、多方面への実用化が期待される素材であると考えられます。

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