INTRODUCTION
そこで始まったのが、伊勢くすり本舗株式会社との共同開発プロジェクトだった。
※商標登録出願中
国産甘草を育てるという挑戦

甘草は、漢方薬をはじめ、さまざまな医薬品や食品に利用されている代表的な生薬である。しかし、日本国内で使用される甘草の多くは海外からの輸入に依存しており、安定供給の確保は長年の課題となっている。
さらに近年では、天然資源の採取圧力や気候変動などの影響により、薬用植物資源を持続的に利用することの重要性が高まっている。医薬品原料として欠かせない甘草を将来にわたって活用していくためには、海外資源に頼るだけでなく、国内で栽培・保存する技術を確立することが求められている。
大学発国産甘草「甘槻」

大阪医科薬科大学の研究所のひとつである薬用植物園では、こうした課題に向き合い、長年にわたりウラルカンゾウの研究と栽培に取り組んできた。
甘草は、種をまけばすぐに良質な原料が得られる植物ではない。栽培環境や生育条件、成分品質の評価など、多くの課題を一つひとつ解決していく必要があった。
試行錯誤を重ねた結果、本学薬用植物園では質の高い根を安定して収穫できる国内栽培技術と栽培種の開発に成功した。
この取り組みは、薬用植物資源の安定供給に貢献するだけでなく、薬用植物の保全や持続可能な利用を支える取り組みでもある。研究・教育の場として薬用植物を守り育てながら、その価値を次世代へつないでいく。国産甘草「甘槻」の開発には、そうした思いも込められている。
研究成果を、もっと身近なものに

薬用植物の研究成果を一般の人に伝える際には、一つの難しさがある。研究論文や学会発表だけでは、その価値や意義が広く社会に伝わりにくいということだ。
大阪医科薬科大学薬用植物園では、長年にわたり国産甘草の研究と栽培に取り組み、「甘槻」という独自ブランドを生み出した。しかし、その研究成果をより多くの人に知ってもらうためには、日常生活の中で気軽に触れられる形にする必要があった。
研究成果をより多くの人に届ける方法を模索するなかで、本学が出会ったのが伊勢くすり本舗株式会社である。
同社は、「くすりのまち」として知られる伊勢の地で、和漢素材や薬草文化を生かした商品開発を行い、人々の暮らしに寄り添う製品づくりに取り組んできた。薬草やハーブに関する知見と、多くの人に親しまれる菓子づくりのノウハウを併せ持つ企業である。
大学が培ってきた研究成果と、企業が持つ商品開発力。両者の強みを掛け合わせることで、「甘槻」の魅力をより身近な形で届けるプロジェクトがスタートした。
学生の視点が、「甘槻」の魅力を伝える

「甘槻ハーブ飴」の開発プロジェクトには、大阪医科薬科大学の医学部・薬学部・看護学部の学生有志も参加した。
プロジェクトでは、飴の名称の検討やパッケージデザインの制作に学生が参画。研究成果や薬用植物という専門的なテーマを、一般の人にも分かりやすく、手に取りたくなる形で表現するためのアイデアを出し合った。
医学・薬学・看護学という異なる学びの背景を持つ学生たちは、それぞれの視点から意見を持ち寄りながら議論を重ねた。研究成果を社会へ届けるためには、研究そのものだけでなく、その価値を伝える工夫も重要であることを実践的に学ぶ機会となった。
完成した「甘槻ハーブ飴」には、薬用植物園の研究成果だけでなく、学生たちの発想や感性も息づいている。
甘草とハーブを、親しみやすい味に
商品化にあたって目指したのは、甘草を初めて口にする人にも親しみやすく、日常の中で気軽に楽しめる味だった。
試作と検討を重ね、完成したのが「黒糖ミルクチャイ味」である。
甘槻を中心に、アセンヤク、シナモン、クローブ、フェンネルを加え、5種のハーブを調和させた。黒糖のまろやかな甘さとミルクチャイの風味が広がる、ほっとひと息つきたいときに楽しめるハーブ飴に仕上げた。
研究成果を伝える一粒が完成

長年にわたる甘草研究、企業の商品開発力、そして学生の新しい発想。それぞれが結びつき、「甘槻ハーブ飴」が完成した。
この商品は、甘槻を使用した飴であると同時に、大阪医科薬科大学の研究成果を社会に還元する新たな媒体でもある。
一粒を味わうことが、その背景にある薬用植物研究を知るきっかけとなる。薬用植物園で始まった研究は、産学連携と学生参画を経て、人々の暮らしに近い商品へと形を変えた。
商品情報
商品名 甘槻ハーブ飴
味 黒糖ミルクチャイ味
内容量 75g(個包装紙込み)
発売日 2026年11月(予定)
販売場所 大阪医科薬科大学内の食堂、医療売店などで販売予定
「甘槻ハーブ飴」の完成は、ゴールではない。
大学で生まれた研究成果をどのように社会へ届け、その価値を多くの人と共有していくのか。本プロジェクトは、薬用植物の研究、産学連携、学生教育を結びつける一つのモデルとなった。
大阪医科薬科大学は、これからも薬用植物に関する研究を推進するとともに、企業や地域社会との連携を通じて、教育・研究成果を社会へ還元していく。