機能改善

減量・代謝改善手術

肥満症について

肥満とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態の事を言います。BMIと言う体格指数「Body mass index(BMI)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」を用いまして25kg/m2 以上を肥満と定義し、35以上を高度肥満と定義します。日本でも食生活の欧米化に伴い肥満患者さんは年々増えています。

Body mass index(BMI)

肥満の患者さんは、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常など様々な疾患に合併する事が知られています。さらに平均寿命が明らかに短くなっていることも知られています。しかし治療により減量することで、肥満関連の合併症も改善されるだけでなく、予後も改善することがわかっています。すなわち肥満症は、単に「太っている」という言葉で片づけるのではなく「治療すべき病態」なのです。

肥満症は「治療すべき病態」

肥満治療の基本は、食事療法、運動療法、内科的治療が中心なのですが、高度肥満の患者さんはなかなか、それのみでは効果が不十分な方も存在します。そんな患者さんは手術治療の対象となります。

 

肥満外科手術について

日本では2014年より腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険収載されました。そこで、我々も、肥満外科手術として腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を導入しました。

この手術を受けられる患者さんは以下の通りです。

  • 年齢は18歳~65歳までの患者さん。
  • 6ヶ月以上の内科的治療によっても、十分な効果が得られずBMIが35kg/m2以上、かつ糖尿病、高血圧症、脂質異常症または睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上合併している患者さんです。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は、腹腔鏡下に胃の大半を切り取り、胃をバナナ1本ぐらいの大きさにして食事摂取量を制限する手術です。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術

外科的治療の実施件数は日本ではまだ少ない状況ですが、世界では年間35万件近くも行われています。当院は、胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術の経験は年間100例を超えております。腹腔鏡ならびに、胃の手術に関しては全国的にトップクラスの症例数です。手術手技だけでなく、術後管理も含め経験豊富なスタッフが治療にあたります。

 

肥満外科手術のエビデンス

肥満外科治療に関するエビデンスは非常にたくさんあります。その中でも、海外の有名な試験を紹介します。4047名という多数の重症肥満患者さんを、性別、年齢、体重などをマッチングさせて、減量手術を行った患者2010名と、内科的治療を受けられた2037名に分けて追跡調査を行いました。観察期間も15年という非常に長期に渡る結果です。内科的治療を受けられた患者さんは、減量効果はほとんど見られなかったのですが、減量手術を受けられた患者さんは、術式毎の差はあるものの、全ての術式で一定の減量効果を認めています。更に、減量手術を受けられた患者さんは、死亡率が30%も低下していることが分かりました。

その他、高血圧、高脂血症、糖尿病など併存している合併症に関しても、減量手術を受けられた患者さんで高い改善効果が認められました。

すなわち減量手術は、高い減量効果をもたらすだけでなく、併存する合併症も改善するため、減量・代謝改善手術と呼ばれています。

肥満外科治療に関するエビデンス

The New England Journal of Medicine August 23,2007より抜粋

手術までの流れについて

まず当院の代謝・内分泌内科を受診していただき、他の疾患が原因で肥満を引き起こしていないかの鑑別を行います(二次性肥満の除外)。
そして、糖尿病、高脂血症など肥満関連合併症の治療を行うと同時に、栄養士、理学療法士と相談のうえ、栄養療法、運動療法を含めた生活習慣の改善を試みます。場合によっては、教育入院、ダイエット食導入目的の入院をしてもらいます。

また高度肥満の患者さんは、精神的疾患をかかえていることが多いとも言われています。そのため、精神科も受診していただき、手術に問題となる精神疾患が無いかの確認も行います。ストレスなどのメンタルケアも行います。

このように、肥満の患者さんに対して、外科だけでなく、多職種でチームを結成し、治療にあたります。

決して楽に痩せるわけではない

患者さんの中には、手術をうけると痩せると思っておられるかたがいますが、決してそうではありません。
ここが、大事な事ですが、手術は単なるきっかけに過ぎません。手術しても、食事療法など守れなかったらリバウンドしますし、嘔吐など不利益を被ることになります。
一番大事なことは、患者さん自身が自分のライフスタイルを変えていこうという努力です。

その患者さんの目標のために、我々もしっかりサポートします。

チーム医療

安全確実な、肥満外科手術をうけていただくためには、チーム医療は、欠かせません。当院では、外科、内科医、麻酔科医、精神科医、看護師、栄養士、理学法士、ソーシャルワーカーなど連携を密にしてチーム医療を行い、包括的な肥満症治療を行いますので安心して下さい。

多職種で定期的にカンファレンスを行います

初診外来 火曜日、木曜日
担当 今井

 

 

機能改善手術について