ロボット支援胃がん手術のご紹介

Qualityの高い外科治療を目指したロボット(da Vinci Surgical System)支援胃がん手術

手術ロボット

当科では、2015年7月よりMaster-slave manipulator system 型の手術支援ロボットであるda Vinci Surgical System(以下 ダ・ヴィンチ)を用いた腹腔鏡下胃がん手術を行っています。
ダ・ヴィンチを用いた手術では、従来の腹腔鏡下手術と比べて、さらに繊細で安全性の高い手術治療が期待されています。

胃がん手術と低侵襲性

近年の胃がん外科治療のキーワードは、「超高齢化」と「早期胃がん」、「低侵襲性」です。超高齢社会を迎えた現在では、胃がん手術の平均年齢は70歳に達し、胃がん手術での早期胃がんの占める割合が過半数を超えている状況です。こういった方々に対して、傷が小さくて回復が早く、体にやさしい手術を、当科では積極的に行ってきました。

2000年から現在までに1600例以上の「低侵襲手術」、つまり「胃がんに対する腹腔鏡下手術」を実践してきました。 さらに、2015年7月からは、胃がんに対する手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)を導入し、さらなる質の向上を目指してきました。ダ・ヴィンチは「Surgeon Console」、「Patient-side Cart」、「Vision System」の3つから構成されています。手術を行う外科医は、ダ・ヴィンチのSurgeon Consoleでリアルな三次元画像を見ながら、ロボットを操って手術を行います。この外科医の操作を、患者さんのおなかに入ったPatient-side Cartの鉗子が、高い精度の手術操作を再現してくれます。ロボットの大きな特徴のひとつは、手術鉗子を外科医の意図通りに自由な方向に動かすことができる「EndoWrist」機能であり、これにより安全性と根治性がさらに高まると考えられています。

ダ・ヴィンチ

胃がん手術とダ・ヴィンチ

胃がん手術の目的は、「胃がんを治す」ことです。それには取り残しのない確実なリンパ節郭清が必須です。ダ・ヴィンチでは、鉗子の自由な動きによって従来では難しかった部分にも容易に到達できます。さらに、ダ・ヴィンチでは三次元画像でよく見えるために、従来の腹腔鏡下手術では難易度の高いリンパ節郭清が、緻密で安全に行えるようになると考えられています。

「Qualityの高い外科治療」とは、ダ・ヴィンチのもつこのような「優れた機能を駆使した胃がん手術」を指しています。2018年4月からは胃がんをはじめ食道がん、直腸がんといった消化器がんに対するロボット支援手術が保険収載されたことを契機にダ・ヴィンチを導入する施設が増加しました。しかし、手術ロボット操作するのは外科医であり、習熟した外科医によって初めてロボットの長所が活かされるとういことも大切な事実です。

低侵襲手術とダ・ヴィンチ

今日、さまざまな外科領域において、開腹手術から内視鏡下での低侵襲手術へと変換されつつあります。内視鏡下による低侵襲手術の利点は、より早い術後の回復および経口摂取、より短い入院期間、術後疼痛の軽減、美容上の美しさ、そして医療費用の削減などが挙げられます。より複雑で細やかな手術手技を可能とするロボット支援手術は、今までの内視鏡下手術の利点をさらに向上させうる次世代の医療改革の一端を担った分野です。

ダ・ヴインチの特徴として、完成度の高い3次元視野、自由な関節機能を有する操作鉗子、コンビュータ制御された操作性が挙げられます。ダ・ヴィンチを用いた胃がんに対するロボット支援胃切除術は、自然に近い3D画像と自由な操作性により、安全で根治性の高い手術が可能になると考えられます。当院では、胃がんに対する外科手術を、年間約150例行っていますが、ロボット支援下胃切除術の執刀は、日本内視鏡外科学会技術認定取得医、かつダ・ヴィンチ使用の認定を正式に受けた外科医が行っています。

当院での胃がん治療

今まで述べてきたように、胃がんの外科治療では、がんの根治を担保しつつ、患者さんの負担軽減を図ることが必要です。

当院では、ロボット支援手術、腹腔鏡下手術、開腹手術などの外科治療だけでなく、胃がん治療を専門とする消化器内科医、化学療法内科医との連携を密に取りながら、ひとりひとりの患者さんに最適の治療法を提供できるよう、日々、取り組んでいます。さらに栄養士・療法士・薬剤師・看護師とのチーム医療の実践により、患者さんに寄り添ったがん治療を行えるような体制作りを心掛けています。