教授あいさつ

教授あいさつ

院長

技量と知識だけでなく
心を兼ね備えた外科治療を

大阪医科薬科大学 外科学講座
一般・消化器外科学教室

教授李 相雄(りそうゆう)

 昭和51年4月に旧第一外科、第二外科が臓器別の脳神経外科、胸部外科、一般・消化器外科の三科に再編成され、一般・消化器外科学教室が開講しました。
初代教授は旧第二外科の板谷博之教授(昭和22年京大卒 昭和42年6月より第二外科教授)が就任されましたが、教室発足間もなく発病されて昭和52年4月にご逝去されました。
その後、昭和53年8月1日に岡島邦雄教授(昭和28年岡大卒 前岡山大第一外科助教授)が就任され、医局の礎を築かれました。取り扱う疾患は、頚部(甲状腺)、乳腺、消化管、肝胆膵、血管と多岐にわたり、とくに胃癌切除数は2,000例を超え、胃癌取扱い規約の改版、多施設共同試験に貢献するとともに、切除例の詳細な検討に基づくType oriented surgeryを確立されました。
続いて、谷川允彦教授(昭和45年京大卒 前福井医科大学第二外科助教授)が平成9年4月16日に就任され、臨床では消化器外科領域における低侵襲手術の開発と普及に貢献されました。また、ストラスブール大学の研究機関であるIRCADとの共同研究によりWebSurg日本語版を設立するなど国際交流にも注力され、フランス国家功労賞シュバリエを受賞されました。
平成23年6月には、内山和久教授(昭和58年大阪医大卒 前和歌山県立医科大学第2外科准教授)が着任され、専門の肝胆膵領域における高難度手術の定型化とともに低侵襲化を推進されました。2015年には胃癌に対するロボット支援下手術を導入されました。また同年、小児外科診療をスタートさせて新生児から超高齢期まですべての年代に対応できる外科診療体制を確立されました。

そして、2022年4月からは、李相雄が主宰者として教室の診療・教育・研究の指導に携わっています。私は平成元年に大阪医科大学に入学し、学生時代はラグビー部に所属し生涯続く仲間を得ました。平成7年に卒業後、当時の岡島外科に入局し、外科医として根幹となるべき基本的価値観を叩き込まれました。北摂総合病院での後期研修を終えて2000年に帰学し、当時では先進的治療であった腹腔鏡下大腸癌手術に初めて出会い、その後の外科医人生が決定づけられました。2013年度からは上部消化管グループの責任者として、1600例以上の食道・胃疾患の外科診療に携わり、外科手術の低侵襲化と安全な普及に取り組んできました。

当教室は、現在では、年間1500例超の手術症例数を誇る臨床診療科に発展し、三島二次医療圏の高難度消化器手術に加えてロボット支援手術等の最先端医療を提供するとともに、乳癌治療そして小児外科治療をも担っており、地域外科医療の中心的役割を果たしています。今後は、高い質の外科手術を提供しつつ、横断的協力体制による超高齢社会に即した低侵襲集学的治療の開発を進めます。さらに、手術後のケアを包括した地域健康管理システム構築へ積極的に関与してまいります。

教室では、「患者さん、教職員とその家族、そして地域社会から、信頼され称賛される大阪医科薬科大学」をOUR VISIONとしており、日々の外科診療と研究、そして若手外科医教育に取り組んでいます。
外科医を表するのに、「鬼手仏心」という言葉があります。広辞苑には、「外科手術は体を切り開き鬼のように残酷に見えるが、患者を救いたい仏のような慈悲心に基づいているということ」とあります。確かに、外科手術は患者さんにとって残酷な医療行為ですが、近年の外科手術の低侵襲化には目を見張るものがあります。ただし、今後どれだけ医療が発展し低侵襲化が進んだとしても、「仏心」は外科医に備わっておくべきもっとも大切な資質であると私は考えます。技量と知識だけでなく心を兼ね備えた外科医を育成すること、そして、次代のリーダーを残すことが私の最大の使命だと考えています。若い医局員と力を合わせて、外科学の発展に貢献でき、そして地域の信頼に応えられる外科医療を提供できるよう鋭意努力する所存でございます。