教室紹介

女性予防内科・骨盤底再建グループ

平均寿命が80歳を超え社会の高齢化が益々加速している今、予防医学の重要性が認識され始めています。

女性予防医学科(更年期外来)

更年期の諸症状に対するホルモン補充療法、漢方代替医療による治療はもちろんのこと、高脂血症や骨粗鬆症の早期発見を心がけ、積極的なスクリーニングを行ない診療に当たっております。

骨盤底再建外来(子宮脱、骨盤臓器脱)

骨盤臓器脱は女性の生涯罹患率10%を超えるとも考えられており、決して珍しい病気では無い事はご周知だと存じます。治療方針としてはペッサリーリングによる保存的治療と手術療法の二つに大別されます。手術療法は、骨盤臓器脱の程度や合併症の有無や程度によりに総合的に判断し、術式を決定しております。従来法としての腟式子宮全摘出術とMcCall術はもとより、特に開腹手術の既往がある症例にはより安全性を確保するために腹腔鏡補助下腟式子宮摘出術を選択しております。

また、高齢者症例や重症合併症症例に対しては、LeFort式腟中央閉鎖術を施行する事で術後合併症を回避しQOLの改善を試みております。また、再発率の最も少ないTVM手術(Tension-Free vaginal Mesh)を平成21年度から取り入れております。骨盤臓器脱の約50%に尿意切迫感を主体とする過活動膀胱を合併していることが明らかとなり、過活動膀胱が患者様のQOLを大きく損なう原因となっています。我々は以前、骨盤臓器脱の外科的根治によりその多くが改善することを報告してまいりました(Hirota C, Tanabe A, Ohmichi M et al. 日本女性医学学会雑誌 in press)。

また米国では、メッシュを使用する手術に対してFDAが注意勧告を行ない、術前のインフォームドコンセントの徹底と、習熟した熟練医師による施行の必要性がさらに強調されることになりました。

当院でのTVM後の成績では、周術期合併症はほとんどなく多くの患者様に満足して頂いております。現在、手術まで約半年待ちの状態でありますが、骨盤臓器脱の治療方針でお困りの患者様がおられましたらご紹介頂ければ幸いでございます。なお、腹圧性尿失禁(尿意を伴なわず腹圧のみで失禁する状態)に関しては当院泌尿器科とのスムースな連携をとっております。

骨盤底再建外来(子宮脱、骨盤臓器脱)

婦人科癌治療後のトータルヘルスケア

近年の早期発見、早期治療、そして癌治療の進歩により、より多くの患者が癌を克服し余命を全う出来るようになってきました。よって、悪性腫瘍に対する治療のみを目的とするだけでなく、治療後の女性のトータルヘルスケアに対応する必要性が我々に求められる時代となりました。

●婦人科癌治療後のトータルヘルスケア

婦人科領域の成績ではありませんが、精巣がんの克服患者を追跡し心血管疾患やメタボリックシンドローム罹患リスクを検討した報告がいくつかあり、放射線療歴や抗癌剤治療歴がメタボリックシンドロームのリスク因子になり得ることがわかってきました。同様の治療を標準治療にしている婦人科悪性腫瘍患者においても、動脈硬化性疾患への影響が懸念されるにもかかわらず、それらに留意した診療は行われていないのが実情だと思われます。我々は卵巣癌や子宮内膜癌に対する抗癌剤治療は血管内皮細胞を傷害し、ひいては動脈の硬化を引き起こすことを報告してまいりました(Sekijima T, Tanabe A, Ohmichi M et al. Climacteric 2011)。 

また、有経の子宮頚癌患者に対する両側付属器摘除と術後放射線治療が、腰椎の骨密度を急速に減少させることが我々の検討で明らかとなりました(Nishio K, Tanabe A, Ohmichi M et al. Endocrine Connections 2013) 。よって私共の外来では、婦人科悪性腫瘍患者に対するトータルヘルスサポート体制を充実させるべく、図のような診療体制を構築し、癌克服だけではなく、克服後の健やかな生活を目標としたサポート体制を充実させており、患者様から非常に好評を得ております。

婦人科悪性腫瘍患者に対する健康ドック

 

 

 

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