外来のご案内

婦人科腫瘍

女性の子宮・卵巣に関する良性・悪性疾患を中心に診断治療を行う科です。良性腫瘍・初期癌については、子宮や卵巣などの温存を心がけ、また、術後の回復が早く、傷の目立たない腹腔鏡下手術を積極的に行っています。進行癌については、根治術を中心に新しい治療法を駆使し、さまざまな方法を取り入れながら集学的に治療を行っています。また、治療法に関しては、患者さまと十分に話し合ったうえで、できる限りご要望に添えるようにすすめていくことを心がけております。

 

主な特徴

  1. 子宮頸癌・体癌・卵巣癌の診断・治療
    悪性腫瘍に対する手術件数は、年間約200件です。
  2. 子宮頸癌の機能温存を考慮した手術(円錐切除術、広汎子宮頸部摘出術、神経温存広汎子宮全摘出術)
    術後の妊娠、合併症の軽減に配慮した手術を行っています。
  3. 初期子宮体癌・子宮頚癌の腹腔鏡下根治手術
    小さな傷で手術することが可能になりました。
  4. 子宮体癌、卵巣癌のエビデンスに基づく集学的治療
  5. 子宮頸癌の集学的治療(術前動注療法、放射線抗癌剤併用療法)
  6. 子宮筋腫の治療
    薬物療法、腹腔鏡下筋腫摘出術、腹腔鏡下子宮全摘出術、子宮鏡下筋腫摘出術、塞栓療法など、さまざまな選択肢を御提案します。
  7. 子宮内膜症の低侵襲治療
    薬物療法、腹腔鏡下手術など
  8. 卵巣良性腫瘍の腹腔鏡下手術
    腹腔鏡手術の中でもさらに目立たない傷で手術を行っています。

 

子宮頸がん

前がん状態や初期癌である上皮内がんの診断がついた場合には、子宮頚部円錐切除術を行うことにより、妊娠の可能性を残すことが出来ます。
進行子宮頸がんに対しては、通常、広汎子宮全摘出術とよばれる子宮頸部の周辺の骨盤奥深くの血管や神経が走行している近くの傍子宮結合織まで大きく摘出する手術が行われます。その結果、出血、術後腸閉塞、排尿障害などの様々な合併症が起こる可能性があります。神経温存広汎子宮全摘出術は排尿関連神経である下腹神経と骨盤内臓神経をなるべく温存すべく、神経と血管を分離しながら子宮を摘出する手術です。また、同時に出血量は他施設と比較して 1/2-1/5 という良好な成績を得ており、結果的に術後早期に退院、社会復帰が可能となっています。
次に広汎子宮頸部摘出術ですが、近年の女性の晩婚化や若年者の子宮頸がんの増加により、妊孕能温存を希望する患者の割合は増加してきています。そこで、従来は子宮を摘出しなければならなかった子宮頸がんに対して、子宮頸部のみを摘出して、子宮体部と腟を再結合させる妊孕能温存術が開発され、当科でも実施しております。

広汎子宮頸部摘出術

 

子宮体がん

近年子宮体がんは増加傾向にありその50-70% は初期の子宮体がんです。当科では初期子宮体がんに対し腹腔鏡下子宮体がん根治術を行っています。平成26年4月より初期子宮体がんに対して保険適応が認められましたが、私どもは本手術を全国に先駆けて導入し、全国トップの症例実績があります。開腹手術と比較して治療成績は同等でありながら、傷が小さく、出血量は少なく、入院期間も短くてすみます。今後は子宮頚癌に対しても、同様の手術を行っていく予定です。

腹腔鏡下子宮体がん根治術

卵巣がん

術中ナビゲーションシステム我々は従来から卵巣がんの手術において合併症軽減をはかる様々な工夫を行っています。卵巣がん手術において、傍大動脈リンパ節郭清は大変重要ですが、一方で術後腸閉塞などの重篤な合併症を引きおこす事が知られています。
我々は、手術時の 20 分毎の定期的な腸管圧迫の解除と生食による湿潤を行なう手技により、術後腸閉塞発生ゼロというすばらしい成果をあげております。若年者に対する卵巣がん手術における工夫の、卵巣がんに対する術中ナビゲーションシステムを用いた卵巣動脈温存術についてですが、近年、卵巣がんが増加してきており、若年者で卵巣がんに罹患する方がおられます。そこで、我々は、リンパ節郭清時に傷つけやすい卵巣動脈を、術前に 3D CT で描出し、術中ナビゲーションとして、卵巣動脈の走行を確かめながら傍大動脈・骨盤リンパ節郭清を行う方法を開発いたしました。この方法を用いた場合、根治性を損なわずに卵巣を温存し、リンパ節転移の有無を確認することにより妊孕性の温存が可能か否かを決定することができる画期的な方法です。


癌患者様へのトータルヘルスケア

近年の癌に対する早期発見、早期治療、そして治療技術の進歩により、より多くの患者様が癌を克服し余命を全うできるようになってきました。一方で、治療による副作用で、癌克服後に悩みを抱える患者様は少なくありません。よって、悪性腫瘍に対する治療のみを目的とするだけでなく、治療後の女性のトータルヘルスケアに対応する必要性が我々に求められる時代となりました。婦人科領域の成績ではありませんが、精巣がんの克服患者を追跡し心血管疾患やメタボリックシンドローム罹患リスクを検討した報告がいくつかあり、放射線療歴抗癌剤治療歴メタボリックシンドロームリスク因子になり得ることがわかってきました。同様の治療を標準治療にしている婦人科悪性腫瘍患者においても、動脈硬化性疾患への影響が懸念されるにもかかわらず、それらに留意した診療は行われていないのが実情だと思われます。

また、閉経前の女性に対する外科的閉経や、抗癌剤に伴う大量のステロイドの骨密度への影響に関してはまだわからないことが多く残っています。よって私共の外来では、婦人科悪性腫瘍患者に対するトータルヘルスサポート体制を充実させるべく、図のような診療体制を構築いたしました。癌克服だけではなく、克服後の健やかな生活を目標としたサポート体制は、患者様から非常に好評を得ております。


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