外来のご案内

生殖医療(不妊症)

現在、不妊症グループは医師5名、培養士2名で、各曜日に専門外来を設け、 診療に当たっております。体外受精件数は年間100件以上であり、難治性である 高齢不妊、内膜症性不妊症例の割合が高いのが特徴です。

 

当科生殖医療グループの特色

●一般不妊治療から高度生殖補助医療まであらゆる不妊治療に対応  

●不妊治療としての腹腔鏡下手術
筋腫や難治性不妊の原因となる子宮内膜症などを合併した不妊症患者様に対し、腹腔鏡下手術と内科的治療を組み合わせ、最善の治療をご提案します。  

●テーラーメードな卵巣刺激
卵巣予備能から個々の患者様に適切な卵巣刺激法を選択します。   

● 不育症(習慣性流産や反復流産)の検査・治療および遺伝カウンセリング

● 不妊症看護相談外来
不妊専門カウンセラーが時間を掛け、精神面でのサポートを行います。

 

一般不妊治療

タイミング法
最初の段階として行われる治療で、基礎体温表や超音波、尿検査により、排卵日を予測します。

排卵誘発剤
クロミフェン療法:軽い視床下部性の排卵障害や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などに有効な、脳に働きかけ、卵巣を刺激するホルモン(FSH)の分泌を増加させることで卵胞発育を促す治療法です。現在もっとも広く使われていますが、副作用として子宮内膜が薄くなったり、頸管粘液が少なくなる欠点もあります。
ゴナドトロピン療法:卵巣を刺激するホルモン(FSH)自体を投与する治療法です。効果は非常に強力で、ほとんどのケースで排卵を起こすことができます。その反面、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などを発症する可能性もありますので、十分な注意と対策が必要です。

人工授精(AIH)

精子の数が少なかったり(乏精子症)、運動率が低い(精子無力症)の場合、また子宮の入り口から分泌される頚管粘液の状態が悪かったりすると(頸管粘液分泌不良や抗精子抗体陽性)、十分な数の精子が子宮内に進入できません。このようなケースでは、通常の夫婦生活での妊娠は難しいといえます。
配偶者間人工授精(AIH:artificial insemination with husband’s semen)は受精する場所により膣、子宮頚管、子宮腔内、卵管内、腹腔内、卵胞内など種々の方法が報告されていますが、子宮内人工授精(IUI:intra uterine insemination)が一般的です。
採取した精子より密度勾配法で活発な精子を選別したのちに濃縮し、子宮の奥深くに入れます。 この作業によって、精液に混じった細菌や赤血球や白血球を取り除くことができます。

体外受精治療

自然の妊娠は、卵巣から排卵された卵子が卵管で精子と出会い、受精して発育しながら子宮へ移動して着床することにより成立します。体外受精-胚移植法とは、受精から胚の発育までを人工的に補助することで妊娠を成立させることができる治療法です。体外受精・胚移植法では、排卵誘発剤による卵巣刺激をおこない、一度に複数の卵子を育て、体内より取り出した卵子と精子を体外で受精させ、分割を確認してから子宮に胚を移植します。

体外受精治療の適応

男性不妊症治療(乏精子症、精子無力症、奇形精子症、無精子症の方など)
人工授精などの治療で妊娠に至らなかった場合に体外受精・胚移植法の適応となります。男性不妊症のなかでもかなり精液所見が悪い場合や、精液中に精子を認めない場合に精巣から直接精子を取り出すことができれば顕微授精法で受精を助けることができます。

卵管性不妊症治療
子宮卵管造影や腹腔鏡などで検査した結果、卵管が狭窄もしくは閉塞している場合には、精子と卵子が出会うことができませんので体外受精・胚移植法の適応となります。

原因不明不妊症治療
不妊症の検査をおこなっても原因がわからず、タイミング療法や人工授精をおこなっても妊娠に至らない場合、体外受精・胚移植法へステップアップします。

難治性不妊症治療
子宮内膜症や卵巣機能低下などの難治性不妊症の方も体外受精・胚移植法の適応となります。

体外受精治療の流れ

一度に複数の卵子を発育させて、これを超音波診断装置を見ながら採取します(採卵)。採取できた卵子を精子と一緒に培養して体外で受精させ、さらに数日間培養した後、1個または2個の胚を子宮へ戻します(胚移植)。

1.卵巣刺激
良好な胚を得るため、1度の採卵で複数の卵子を獲得する目的で卵巣刺激を行います。卵巣刺激方法には自然排卵を防ぐ目的で、GnRHアゴニスト(ロング法またはショート法)やGnRHアンタゴニスト(アンタゴニスト法)という薬を併用します。これらの薬を使っている期間は自費診療となり、その他の処方、診察も全て自費になります。自然排卵を抑制しない自然周期法もあります。
治療周期の月経3日目より、排卵誘発剤を1日1回筋肉注射します。卵胞(卵子の入っている袋)の発育を超音波で週2~3回確認し、成熟が確認されればhCGという卵子の最終的な成熟を促す注射をして採卵します。
●ロング法
体外受精前周期の黄体中期(月経の21日目くらい)よりGnRHアゴニストを開始し、月経3日目より排卵誘発剤(HMG/FSH)の注射を10〜15日連日投与します。
●ショート法
月経初日よりGnRHアゴニストを開始し、月経3日目より排卵誘発剤(HMG/FSH)の注射を連日投与します。
●アンタゴニスト法
月経3日目より排卵誘発剤(HMG/FSH)の注射を開始し、1番大きな卵胞が14mmに成長したらアンタゴニストの注射を開始します。アンタゴニストの注射は1周期に3〜5本使用します。
●自然周期
卵巣刺激で卵胞の発育が少ない場合や胚の質が悪い場合に行います。卵巣刺激などを行わず、自然の卵胞発育に合わせて採卵します。
●クロミフェン周期
自然周期の場合でも、発育卵胞数を増やし、排卵を抑制する目的でクロミッドやアンタゴニストの注射の使用が有効な場合があります。
月経3日目よりクロミフェンを5〜10日服用します。場合によっては数日間、排卵誘発剤(HMG/FSH)の注射を併用することがあります。

2.採卵
子宮周囲の神経ブロック(局所麻酔)、鎮痛剤を使用して行います。経腟超音波をみながら、長い注射針を膣の壁から卵巣内の卵胞に刺し入れて、卵胞液ごと成熟した卵子を吸引します。

3.受精
受精培精:培養容器内で卵子と精子をかけあわせ、受精させます。
顕微授精:極端に精子数・運動率が悪い場合や、 体外受精-胚移植法では受精しなかった場合(培精では精子が卵子にたどり着けなかった場合)を対象に、精子を直接、卵子の細胞質へ入れて受精させる方法(顕微授精:ICSI)を行います。 細い針を用いて卵子の中に精子1つを注入します。

4.胚移植
多胎を防止するため、原則的に1つの胚を子宮内に移植します。(反復不成功や女性側の年齢が35歳以上であれば2個まで可)
初期胚::採卵後2~3日目の胚
胚盤胞:採卵後5~6日目の胚。

胚移植

5.黄体補充
排卵のあとに卵巣から分泌されるプロゲステロンというホルモンを補充します。プロゲステロンは子宮内膜を着床しやすい環境に変化させ、初期の妊娠維持に重要なホルモンです。腟坐薬を1日2回と週2回の筋肉注射を2週間行い、妊娠判定となります。

6.胚凍結、融解胚移植
移植を行わなかった胚は液体窒素内に凍結保存して、次の周期に融解、移植を行います。移植に向けて子宮内環境(子宮内膜)を整えるため、ホルモン補充を行います。治療周期の月経初日よりGnRHアゴニストとエストロゲン製剤(貼付剤または内服)を開始し、週に2回程度、超音波で子宮内膜の厚さを計測します。移植可能になったら、前述の黄体補充を開始し、移植を行って妊娠判定を行います。

アシステッド・ハッチング
胚盤胞が子宮内膜に着床する場合には、透明帯とよばれるタンパクの殻を破って胚自身が飛び出す「孵化(ハッチング)」と呼ばれる現象が起こります。この殻が硬いと孵化がうまく行われず、その結果着床しにくくなります。体外受精で良好胚を移植したにもかかわらず妊娠に至らなかった場合や、透明帯が厚い場合には孵化がうまくいかなかったことが原因の一つと考えられます。このような場合には、あらかじめ、透明帯に穴をあけるか、薄くする処理を行うことで孵化しやすくなります。これを孵化補助術(アシステッド・ハッチング:AHA)といいます。

アシステッド・ハッチング

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