学校法人大阪医科薬科大学 理事長 植木 實

「関西BNCT共同医療センター」は、学校法人大阪医科薬科大学がその基本構想の策定に着手して以来、多くの皆様から貴重なご指導・ご支援を賜り、3年余りを経て、2018年3月に竣工しました。
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、がん患者のQOLの維持向上が求められる中、手術を要さず原則1回(30分~60分)の中性子照射という短期間・短時間で施療可能な治療法で、副作用も少ないという優れた特長を有しております。手術(切除)が困難ながんや難治性がんにも効果が期待できるほか、特に通常の放射線治療を行った後に再発したがんにも適用できる治療法であり、今日、がん治療の新たな選択肢としてさらに期待が高まっております。
本法人は、早くからこうしたBNCTの特長に着目し、京都大学複合原子力科学研究所と連携し原子炉を利用した臨床研究を重ね、現在進められている治験においてもその実施機関となるなど、BNCTの実用化に向けた取組みを先導してまいりました。この結果、脳腫瘍に対する臨床数では世界的にも群を抜いた実績を有しております。
BNCTが臨床研究から治験、そして臨床治療への抱卵期にある今日、本法人は、これまでの実績を基盤として、治療技術の向上と適応がんの拡大等に向け、このセンターにおいて、大学附設という特性を活かしながら、臨床治療の実施に併せ更なる研究の推進に努めてまいります。
BNCTに関する研究集積が世界的にも優位にある関西圏にあって、関西BNCT共同医療センターが、関係機関等との連携のもと、BNCTの医療研究の拠点としての役割を果たし、がんの撲滅という医療界の今日的課題の解決に貢献できるよう取組んでまいりますので、皆様方の更なるご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
大阪医科薬科大学BNCT共同臨床研究所 所長 小野 公二
大阪医科薬科大学関西BNCT共同医療センター センター長 二瓶 圭二

令和2年4月1日、関西BNCT共同医療センター長を拝命いたしました。令和元年8月16日より本学の放射線腫瘍学教室(放射線治療)を担当しております。これまで主にX線や粒子線などを用いた外部放射線治療の診療と研究に従事して参りました。
BNCTは、外部から照射する中性子とがん細胞に取り込まれたホウ素が核反応を起こすことにより、がん細胞を選択的に破壊し死滅させる治療法です。放射線治療の一種といえますが、従来の外部放射線治療とは作用機序が異なり、これまでにない画期的な治療法です。その歴史は長く30年以上にわたり関西の研究者が中心となって基礎研究と臨床応用を牽引してきましたが、本格的な臨床導入という意味では、新しいこれからの治療、promisingな(将来性有望な)治療です。
BNCTは、研究、治験の段階を経て、いよいよ令和2年6月1日切除不能局所進行又は局所再発頭頸部癌を対象に保険診療が開始されます。また、今後の活発な臨床応用だけでなく、関連する様々な分野での基礎研究によってさらなる飛躍が期待されています。新たなホウ素薬剤の開発研究、中性子照射システムや治療計画・線量管理などの物理工学研究、またFBPA-PETによる質的診断や治療効果判定の研究、正常組織への影響を解明する放射線生物学研究などです。このような臨床と研究のニーズに対応するための人材育成は大きな課題のひとつです。
関西BNCT共同医療センターは、教育研究機関に附属する世界初の臨床施設です。今後は、診療、研究とそのための人材育成を三本柱として、大阪医科大学附属病院の協力のもと、スタッフ一丸となってがん診療の発展に貢献して参る所存です。どうぞご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。