診療案内

ペインクリニック

Pain clinic

概要

日本人の大半は腰痛や頭痛、肩こりなど何らかの慢性の痛みを抱えて生活していると言われています。本来、痛みは身体に生じた異常を知らせる警告として大切な役割をもっています。多くの痛みは原因となる病気の改善とともに軽減・消失します。しかし、警告の役割を終えた痛みが様々な理由で長く存在すると、より強い痛みや新しい種類の痛みが加わり、病気の部位の器質的異常や機能低下だけではなく、身体的・精神的・社会的要因が複雑に関与して私たちの生活の質(QOL)を低下させます。これが慢性痛という状態です。ペインクリニックでは慢性痛に対して症状や身体所見・画像所見から多角的に痛みの原因を診断し、薬物治療だけではなく神経ブロックやレーザー照射・脊髄刺激療法など様々な方法で複雑な痛みを緩和させ、QOLを向上させます。

また当院のペインクリニックの特色として、鍼灸や漢方薬などの東洋医学の併用や、リハビリテーション、心理療法など他診療科や多職種と連携したチーム医療で難治性の痛みの治療にあたることが可能です。
全国的にペインクリニックは比較的新しい診療科ですが、伝統のある当医局から多くのペインクリニック専門医や開業医を輩出しています。大学病院で治療を終えた後も、信頼ある地域のペインクリニック診療所にご紹介させていただきます。
2021年12月には全国で唯一の「こどもの痛み専門外来」を開始し、治療が難しいこどもの慢性痛に対して鍼灸師・小児科・小児専門臨床心理士などと連携して治療にあたっています。
がん性疼痛にも力を入れており、内服の医療麻薬ではコントロールができず病院で最期を迎えるしかないケースでも、神経破壊薬を用いた神経ブロックやくも膜下鎮痛法などを用いて痛みをコントロールし、在宅診療所と連携して、最期の時をご家族とご自宅で過ごせるようお手伝いしています。

痛みでお悩みの方は、諦めずに一度ペインクリニックを受診してみてください。受診に関してはかかりつけ医の紹介状をご用意頂いて予約診察をしています。

主な対象疾患と治療法

頭部・顔面痛

片頭痛・緊張型頭痛・三叉神経痛・舌咽神経痛などが治療対象となります。薬物療法では効果がない場合は、神経ブロックが有効である場合があります。

治療

翼口蓋神経節ブロック・ガッセル神経節ブロック・星状神経節ブロック・トリガーポイントブロックなど

脊椎を含む
筋・骨格性疼痛

椎間板ヘルニア・神経根症・椎間関節症・脊柱管狭窄症・筋筋膜性疼痛症候群など整形外科疾患が対象となります。

治療

硬膜外ブロック・神経根ブロック・椎間関節ブロック・椎間板ブロック・仙腸関節ブロック・脊髄刺激療法・筋膜リリースなど

帯状疱疹後
神経痛

帯状疱疹発症後に皮疹が消失したあとも痛みや異常感覚が残る難治性の疼痛です。発症早期に治療しないと痛みが一生残ることがありますので、入院加療も行っています。

治療

持続硬膜外ブロック・くも膜下ステロイド注入・神経根パルス高周波療法・脊髄刺激療法・鍼灸など

がん性疼痛

がんの痛みは複雑で、全体の2割の患者さんは医療麻薬だけでは痛みをコントロールできません。神経ブロックをすることで痛みを軽減させるだけでなく、医療麻薬の量を減らしてその副作用を減らすメリットがあります。

治療

腹腔神経叢ブロック・ガッセル神経節ブロック・上下腹神経叢ブロック・下腸間膜動脈神経叢ブロック・くも膜下ポート挿入術など

遷延性術後痛

手術の後3カ月以上持続する創部の痛みです。日常生活に支障をきたすほどの痛みが生じることもあります。

治療

硬膜外ブロック・肋間神経ブロック・脊髄刺激療法など

血行障害性疼痛

バージャー病や閉塞性動脈硬化症、レイノー病などの末梢の血行障害によって生じる痛みです。

治療

星状神経節ブロック・腰部交感神経節ブロック・脊髄刺激療法など

痛みを
呈さない疾患

脳脊髄液漏出症・顔面神経麻痺・顔面/眼瞼けいれんなど

治療

ブラッドパッチ療法・星状神経節ブロック・ボツリヌストキシン療法など

鍼灸部

当院での鍼灸部門の歴史は古く、ペインクリニック外来が開設された1966年8月当初より、鍼灸師がスタッフとして加わり鍼灸治療を行ってきました。当院は内服薬や神経ブロックなどの西洋医学による治療と鍼灸を用いた東洋医学による施術を同時に同一施設内で受けることができる全国でも数少ない大学病院で、現在は常勤の鍼灸師2名が在籍しています。
鍼灸部門では主に髪の毛ほどの細い鍼を用いた刺入痛の少ない施術を行っています。鍼の本数や深さは患者さんの症状に合わせて判断します。また鍼を刺すことに抵抗がある方、抗凝固薬を服用して鍼を刺せない方など、患者さんの状況に合わせて鍼を刺さない療法である小児鍼(てい鍼・イチョウ鍼)やSSP(Silver Spike Point)療法を行っています。また、近赤外線照射療法も取り入れています。

鍼と同等の効果を認めるSSP療法

鍼灸というと馴染みのない患者さんも多いですが、鍼やお灸を用いてツボを刺激して全身の気血の流れを整えることで効果がでます。近年は科学的にもメカニズムが明らかにされつつあります。一般的な鍼灸院では肩こりや腰痛など整形外科的疾患の患者さんが多いですが、様々な疾患や症状に鍼灸は用いられています。

現在、当科の鍼灸療法で対象としているのは主に次のような症状です。

  • 西洋医学による治療を受けても慢性的な痛みが続いている
  • 痛みやしびれに伴ってイライラや冷え症状などの自律神経の乱れ、更年期障害がある
  • 抗がん剤治療の後などの手足のしびれや痛みがある
  • 検査で特に異常がないのになんとなく体調がすぐれない
  • 抜歯後に痛みや違和感が継続している

上記症状以外でも、主治医からの依頼で施術することがあります。
西洋医学に基づいた治療と東洋医学の鍼灸療法を併用することで患者さんと症状の改善を目指しています。
鍼灸治療を希望される方は当院ペインクリニックの主治医にご相談ください。

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