特色
大阪医科薬科大学病院では、麻酔科は「麻酔科・ペインクリニック」と「集中治療部」の主に2つの部署において診療を行っています。
1964年に診療科を開設して以来、長年にわたり北摂地域における地域医療に従事してきました。2022年7月からは最も重篤な患者さんを受け入れる三次救急を担う救命救急センターが設置されたことから、超緊急の手術を常に受け入れることができる手術室体制を整え、より高度かつ円滑な手術麻酔を提供することを行動目標の一つに掲げています。
麻酔とは、手術侵襲や疾患による痛みやストレスを軽減させ、それに伴って変化しうる循環や呼吸などの生命機能を維持させることを目的とした医学分野です。手術を受けるための準備、手術中の麻酔管理、術後の回復や疼痛のコントロールといった周術期のサポートのみならず、ペインクリニック外来や集中治療室において私たちは生体管理の知識を活かして麻酔の医療技術を患者さんに提供しています。また、当院は「がん診療連携拠点病院」であり、数多くのがん患者さんの診療を行っているなか、麻酔科も緩和ケアチームの一員に加わってがん患者さんの疼痛コントロールを行うなど、多岐にわたる分野で診療を行っています。誰しも痛みは耐え難い苦痛であり、手術を受ける患者さんはさまざまな不安を抱えます。難病に対する最先端の治療や高度な医療技術を提供・開発することを国から承認された「特定機能病院」としての役割を担う一方で、単なる麻酔技術だけでなく患者さんに“安らぎ”を提供できるように院内システムを整え、麻酔診療に関わるチームが一丸となってサポートすることを目指しています。
手術麻酔
途切れなく安全な手術麻酔の提供
当院の中央手術棟の2階と3階に合わせて20の手術室があり、全身麻酔は主に3階にある手術室で実施しています。
特色としては、下記のシステムを構築していることです。
新生児から超高齢者までの
幅広い年齢層に対応
各診療科と連携して
高度技術の手術に対応
24時間麻酔管理
可能な体制
小児麻酔や心臓血管麻酔の
専門医の配置
術前診察・
術後診察の体制
当院の救命救急センターの開設に伴い緊急手術件数が増加していますが、同時に感染症に対する対策も完備された状態で手術を受け入れています。中央手術室以外では、低侵襲・血管内治療センターでの脳神経外科・血管内治療科と小児科におけるカテーテル検査・治療時の全身麻酔を担当しています。また、集中治療室部の医師とは密に連携をして術後管理に繋げています。
毎朝のカンファレンスには手術麻酔担当のスタッフ全員とローテーション中の初期研修医が参加しますが、他部署からも手術室看護師と臨床工学技士の代表者や集中治療部当直医が出席して情報共有の場としています。症例の経過報告や注意事項の周知を行うことで安全で円滑な麻酔業務を目指し、日々スタッフ一丸となって切磋琢磨しています。手術麻酔や集中治療で扱った症例の中で検討が必要な場合は他診療科の医師や看護師などにも参加してもらい、症例検討会を随時実施しています。
心臓血管麻酔
当院ではさまざまな種類の心臓血管外科の手術を行っています。
成人例
開心術(主に人工心肺を用いる手術)
- 冠動脈疾患(冠動脈バイパス術)
- 心臓弁膜症(大動脈弁置換術、僧帽弁形成術)
- 大動脈疾患(大動脈解離に対する人工血管置換術)
非開心術
- 大動脈疾患
(腹部人工血管置換術、血管内ステント留置術) - 大動脈弁狭窄症(経カテーテル的大動脈弁置換術)
小児例
- 姑息的手術(BTシャント、肺動脈絞扼術)
- 根治的手術(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、
ファロー四徴症、完全大血管転位症) - 単心室に対する手術(グレン手術、フォンタン手術)
最近は、成人例において低侵襲手術である経皮的僧帽弁クリップ術MitraClipTMや心耳閉鎖術のWatchmanTMなどの症例も増えてきています。また小児の先天性心疾患患者は軽症から複雑心奇形まで多岐にわたり、高難度な麻酔管理を必要としています。
麻酔科医は肺動脈カテーテルや経食道心エコーなどを用いて循環管理や手術の評価を行っています。心臓外科医・看護師・臨床工学技士とのコミュニケーションを大切にし、チームで手術の管理をしています。
教育面では経験豊富な専門医・指導医が日本周術期経食道心エコー認定試験(JBPOT)、アメリカ周術期経食道心エコー認定試験(PTEeXAM)、心臓血管麻酔専門医などの資格取得のサポートを行い、心臓手術チームを統率できるような人材育成を目指しています。