治療方針

我々は最先端の設備と技術を駆使して、多くの選択肢の中から、より患者さまに適したテーラーメイド治療を行うよう心がけています。

①悪性脳腫瘍 悪性脳腫瘍の手術では、腫瘍の摘出度を高めるため、5-アミノレブリン酸を術前に経口内服(現在では悪性神経膠腫の手術において保険認可がされている薬剤です)を患者さまにしていただき観察できる手術顕微鏡や手術支援 (ナビゲーション)装置を用いています。

一方、手術の安全性を高めるため、運動野、言語野の腫瘍に対しては、誘発電位モニタリング、硬膜下電極による脳機能マッピング、覚醒下の開頭術を行い、神経機能の温存にも最大限の注意を払っています。
術後は、従来の放射線治療、化学療法に加えて、適応がある症例では、世界に先駆けて熱外中性子を用いたホウ素中性子補捉療法(BNCT)を導入しており、国内にとどまらず海外からも患者さまを多く紹介していただいています。

転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療( Xナイフ、サイバーナイフ)にも、放射線科と協力しながら積極的に取り組んでいます。
②良性脳腫瘍 良性脳腫瘍では、開頭による腫瘍摘出術以外に、低侵襲な神経内視鏡手術、定位的放射線治療 (X-ナイフ、サイバーナイフ)も行っています。
下垂体腫瘍、頭蓋底腫瘍の治療においても、神経内視鏡を導入しており低侵襲かつ最大限の摘出を目指しており、高い評価を得ています。
③脳卒中 脳卒中(クモ膜下出血、脳出血、脳梗塞)を24時間体制で受け入れ、治療(開頭術、脳血管内治療、t-PA静注療法など)が迅速に行える体制が整備されています。

脳外科医と脳血管内治療医がチームとして治療にあたり、開頭術(顕微鏡下手術)または血管内手術(コイル塞栓術、ステント留置術、再開通療法など)を選択しています。血管内治療においては、当院はフローダイバーターステント(パイプライン)実施医療機関であり、現在までに30症例以上の治療実績がありより最新の血管内治療の提供ができます。また開頭術においてもハイブリット手術室を完備しておりより幅の広い対象疾患に対応が可能です。

さらに当院では早くからクリニカルパスを導入しており、早期離床、早期リハビリテーションを図っており、患者さまの在宅復帰率に大きく貢献しています。また2003年10月より大阪医科大学健康科学クリニックにおいて脳ドックが開設され、無症候性病変の早期診断・治療、予防医学にも力を入れています。
④正常圧水頭症 正常圧水頭症では、体格に基づいた確実な圧設定法の開発や、腰椎透視による合併症の少ない腰椎腹腔シャント術など低侵襲手術で水頭症治療でも世界的にリードしてきました。また、リハビリ科と共同診療により正常圧水頭症の早期発見・早期治療を実現することが可能となりました。
これにより水頭症による認知症などの後遺症を最小限にすることが出来ます。神経内視鏡による水頭症の手術にも積極的に取り組んでいます。
⑤小児神経疾患 小児神経疾患としては、キアリ奇形などの手術、狭頭症(頭蓋縫合早期癒合症)の頭蓋形成手術を多数手がけております。特に、狭頭症では形成外科とチームを組み、「脳を守り、形を整える」をモットーとしております。
⑥機能的疾患 機能的疾患(三叉神経痛、顔面痙攣に対する微小血管減圧術、パーキンソン病や難治性疼痛に対する深部脳刺激): 顔面痙攣・三叉神経痛は顔面神経、三叉神経を脳血管が圧迫することで症状を起こすため神経血管圧迫症候群と呼ばれます。

三叉神経痛はお薬による治療で、顔面痙攣はボトックス(ボツリヌス毒素)で症状を改善させることはできますが、根治的には開頭による微小血管減圧術が必要です。

当科ではペインクリニックや歯科・口腔外科と連携し、慎重に手術適応を検討して微小血管減圧術を行っています。
また、薬剤抵抗性のパーキンソン病や難治性疼痛に対しては穿頭を行い、定位的に刺激電極を脳深部へ植えこむ手術を行なっています。電極を植え込んだ後も神経内科と連携して症状に応じて適切な刺激の強さや部位の設定を行なっていきます。
⑦脊髄・末梢神経疾患 脊髄・末梢神経疾患:脊椎・脊髄腫瘍に対する腫瘍摘出術を中心に、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、脊髄症などの対する椎弓形成術や開窓術も行っています。アンギオハイブリット手術室を備え、より安全な手術を心掛けています。
また脊髄動静脈奇形などの疾患に対しては脳外科医と脳血管内治療医が協力し、より質の高い治療が行える体制を整えています。