大阪医科薬科大学
救急医学教室

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大阪府三島医療圏の救急医療体制

三島医療圏とは?

大阪医科薬科大学病院が位置する大阪府三島医療圏は、大阪府北部の高槻市・茨木市・摂津市・島本町からなる広さ約213km²の地域で、2020年時点の総人口は約75万8千人です。この地域は2020年まで人口が増加しましたが、その後は減少傾向と推計され、高齢化率は2020年に27 .3%、2045年には35.8%に上昇すると見込まれています。また、4市町のうち高槻市の高齢化率が最も高く29.6%、茨木市が最も低く24.5%という特徴があります。

救急医療体制の概要

三島医療圏では、地域の一次救急(診療所やかかりつけ医)が軽症患者に対応し、より専門的な治療が必要な場合は二次救急病院で診療が行われます。二次救急医療機関は複数の病院が輪番制や非通年制で運営されるため、曜日ごとに当番病院が決められており、夜間や休日を含めて切れ目なく対応できる仕組みです。輪番制は特定の診療科に限定して運用されており、多くの診療科では24時間診療する体制が取られています。

最も重症な患者さんを受け入れる三次救急(救命救急センター)は、大阪医科薬科大学病院が担っています。三島医療圏に限らず、広域から重要救急搬送を受け入れる高度な設備と専門スタッフを備えています。

地域の救急医療の流れを下図に示します。一次、二次、三次の医療機関が連携し、患者さんの状態に応じて適切な医療につなげています。

大阪医科薬科大学病院の役割

大阪医科薬科大学病院は、三島医療圏の救急医療の「最後の砦」として救命救急センターを運営しています。新本館A棟1階の大部分が救命救急センター初療フロアで、三次救急対応のCT室に隣接する蘇生室・手術室が2室あり、二次救急の初療エリアも備えています。3階には救命救急専用ICU(EICU)が直通エレベーターで結ばれており、初療から集中治療までシームレスに診療できる構造になっています。

本病院の救命救急センター開設のきっかけは、旧三島救命救急センターの老朽化と本学創立100周年記念事業による新病棟建設が重なったことです。大学病院内に設置されたことで、心臓血管外科や脳神経外科、循環器内科などの全専門診療科が救急患者診療に従事する体制が取れるようになり、急性期治療の間に転院の必要がなくなった点が地域の患者さんにとって大きな利点となっています。

救命救急センターでは1人の患者さんに医師3名以上と看護師を含めた5〜8名のチームで対応します。複数の医師が頭から足の先までを同時に診ることで必要な処置や手順をその場で即決し、重症度や緊急度を評価しながら多職種連携による迅速な治療を行います。高齢社会に対応するため、90歳を超える患者さんが多く救急搬送されており、病態が救急隊トリアージで三次救急基準に該当しない場合でも総合的に判断して受け入れる社会的責任を果たしています。

三次救急の搬送依頼には救急診療科医師が、二次救急の依頼には救急外来看護師が受け入れ電話対応し、各診療科と連携して「断らない救急医療」を実践しています。患者さんやご家族の不安に寄り添いながら迅速で適切な看護を提供できるようスタッフ一同日々研鑽を重ねています。

地域との連携

三島医療圏の4市町にわたるネットワークの中心に立つ当院は、救急搬送ホットラインを整備して救急隊との連絡を円滑にし、地域の医療機関や介護施設と連携しながら患者さんを支えます。退院後は地域のかかりつけ医やリハビリ施設にスムーズにつなぎ、地域完結型の医療を目指しています。下の図は三島医療圏内の自治体と当院の位置を示したものです。

今後も私たちは、地域住民が安心して暮らせるよう、一次・二次救急医療機関や行政と協力して救急医療体制の充実を図ります。地域の皆さまに信頼される病院であり続けられるよう努力し、未来に向けてより良い地域医療を築いていきます。

北海道美唄市での地域医療貢献

2024年4月より、当科では北海道にある市立美唄病院に対し、週替わりで救急医を派遣する体制を開始しました。

北海道の地域医療においては、人口減少や医師不足、医療資源の偏在など、さまざまな課題が指摘されています。特に救急医療は、24時間365日対応が求められる分野であり、地域の医療機関だけで維持していくことが難しい場面も少なくありません。

こうした中、当科では大学病院としての役割の一つに「地域医療への貢献」があると考え、ご縁があったこともあり市立美唄病院との連携を進めてきました。現在は当科の救急医が週替わりで現地診療にあたり、救急外来対応や入院診療支援を行っています。

地域の救急医療では、高齢患者の急性疾患対応、転倒外傷、感染症、慢性疾患の増悪など、多岐にわたる症例に迅速な判断が求められます。大学病院で培った知識や経験を地域医療の現場に還元することで、住民の皆さまが安心して医療を受けられる体制づくりに貢献したいと考えています。

また、この取り組みは若手医師にとっても大きな学びの機会となっています。限られた医療資源の中で総合的に患者さんを診療する経験は、救急医としての視野を広げ、地域医療への理解を深める貴重な機会となっています。

今後も当科は、大学病院として高度医療を提供するだけでなく、地域の医療機関との連携を通じて、北海道の地域救急医療を支える取り組みを継続してまいります。

特別救急隊(ドクターカー)

高槻市消防本部の特別救急隊は、救急救命士と救急科専門医がともに現場へ出動するドクターカー体制です。当科では、心肺停止・重症外傷・脳卒中・心筋梗塞など一刻を争う傷病者に対し、病院到着を待たずに高度な医療介入を開始するため、特別救急隊へ医師を継続的に派遣しています。

病院前からのホットライン連絡により院内受け入れ体制を迅速に整えることで、救命率の向上につなげています。

地域の救急医療を支える特別救急隊との協働を通じて、当科は一人でも多くの命を救える体制づくりに取り組み続けます。

災害医療への取り組み

当科は大阪医科薬科大学病院のDMAT(災害派遣医療チーム)活動の中核を担っています。現在、医師10名・看護師12名・業務調整員7名の計29名が日本DMAT・大阪DMATの資格を有しており、平時から災害への備えを整えています。

2024年1月の能登半島地震(M7.6)では、元日の発災直後に院内災害対策本部を立ち上げ、情報収集と初動対応を即座に開始しました。その後、被災地へのDMAT派遣要請に応じて3隊を石川・北陸へ派遣し、現地での医療支援活動を行いました。大阪府全体でのべ810名が派遣されたこの災害において、当院はすべての派遣要請に対応するとともに、災害支援ナース・DMORT・JRATへの協力も果たすことができました。

昨年は新棟が完成したことを受け、病院総出を挙げて大規模な多数傷病者受け入れ訓練を実施いたしました。また、地域への貢献として、各地医師会において災害対応机上訓練やトリアージ(傷病者の重症度分類)をテーマとした勉強会を開催し、災害医療対応力強化にも積極的に取り組んでいます。南海トラフ地震への備えも見据え、今後も訓練・教育・実動の三本柱で災害医療体制の強化を推進してまいります。