考察
RAではUIP、BOOP(bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia)、lymphoid hyperplasia等、多彩な肺病変を呈する1)。また、RAの治療に用いられる金製剤は副作用として間質性肺炎を来たすと言われている2)。金製剤使用歴のあるRA患者に間質性肺炎が出現した場合、RA固有の肺病変の増悪と、金肺炎の鑑別が問題となる。現在までに金製剤投与に続発した間質性肺炎の報告のうち、BALF中のCD4/8比の記載がある症例につき、CD4/8比の順に表1に示している。BALF中のCD4/8比が低値を示すものは、DLSTが陰性のことが多く、CTにて気管支血管束周囲の斑状影が多発し、肺野全体に認められる。今まで金肺炎として報告されたものにはこのタイプが多い3)4)。逆にCD4/8比が比較的高値なものは、DLSTが陽性のことが多く、CTにて胸膜下の病変が強く、UIPと同様の所見である。本例は、DLST陽性、BALF所見、画像上の特徴より後者であり、金製剤使用前からすでに軽度の間質性肺炎を来たしていること、剖検にてUIPに合致する組織所見を得たことを合わせ、シオゾール投与を契機にRAによる肺病変(UIP)が悪化したものと考えられる。
本例は剖検所見にて全身の血管炎を認め、MRAと結節性多発動脈炎(PN)の鑑別が問題となる。MRA、PNはともに多臓器に障害をおこす。MRAは腎病変に比し、肺病変の合併が多くみられ、PNは腎糸球体病変をしばしば合併し、肺病変は比較的稀であるといわれている5)。本例は肺病変はあるが、腎に病変は認められず、PNよりはMRAと考えられた。
( 胸部XP(9201) / 胸部XP(9204) / 胸部CT(9204) / 胸部CT(9206) / 経過表 / 組織像(肺) / 組織像(小腸) / まとめ )