腫瘍細胞は大小の胞巣をつくりながら増殖し、基底側では立方状、 自由縁に向かうにつれて扁平となり、individual cell keratinizationやpearl formationの形成、細胞間橋、胞巣中心の壌死傾向などが見られ、典型的な高分化 型扁平上皮癌である。
腫瘍の進展形態として 1)空洞形成:空洞内面は扁平上皮癌細胞で被われ、薄いところでは肺胞隔壁の裏 と表の漫潤のみで空洞壁が形成される部分もあり、また肺胞隔壁か直接蕗出すると ろもある。空洞に気管支、脈菅系が関与する部分では気管支・脈管系のリンパ管 に沿って著しいリンパ管侵襲をしめす。空洞壁内表面には壌死物質はまったく見ら れす、内腔には凝血塊(内部に少量の壊死物質、腫瘍細胞を認める)がみられるが、 通常の壊死物貫は認められす、空洞がまとまった腫瘍壊死により形成されたとは考 えにくい。空洞の形成機序については、EVG染色て、elestosisが既存の脈管構造 周囲にはみられるが、空洞壁画肺胞と直接接するところでは見られず、また肺胞壁 か空洞内面に直接露出している部分もあり、既存のブラに接して発生した腫瘍がブ フ内面を表層浸潤したものととらえたい。
2)胸壁漫潤:臓側、壁側弾性板を越え、肋軟骨周囲、肋間筋筋層間隙に大小の胞 巣をつくりながら浸潤し、一部ではリンパ管侵襲もみられる。正常肋軟骨はみられ ない。
3)肺内伸展:気管支・脈管系のリンパ管を通じて周辺肺に浸潤した腫瘍細胞はそ こで、周囲の肺実賢内に、肺胞隔壁の裏表を表層浸潤し、また肺胞睦内に突出し 浸潤している。圧排性変化は軽い。
4)リンパ管浸潤:腫瘍細胞はおもにリンバ管侵襲仁よって拡大し、気管支系より も動静脈周囲のリンバ管に強い浸潤がみられ、特に問題となるA4、V4+5に関して はその中枢部にまでリンパ管浸潤がおよぷ.またS3aの領域においても著明なリン パ管侵襲がみられ、区域リンパ節にも腫瘍細胞の転移がみられる。
これらの所見は、高分化型扁平上皮癌であるにも関わらす、本腫瘍の悪性度がか なり高いものであることを示す。 気管支断端は陰性、葉リンパ節(+)、肺静脈、動脈は恐らく断端(+)、胸壁 断端は迅速では(-)だか印象としては(+)