研究内容

大学院における教育・研究活動

教育・研究指導方針

日常の臨床活動などを通じて個々の多面的な側面が出るように、互いに刺激し合い、新しい芽が出るよう育てて行くよう、医学研究者の養成を目的とし、臨床研究の基本となるpatient-oriented researchを基盤として、糖尿病の様々な成因解明や治療開発などについて学ぶ。
当面の目標は学位の取得であるが、これに留まらず研究者としての視点を大切にし、その成果を臨床に還元するべく普遍的な真理を探究し続ける意志を培っていく。

現在の研究テーマとその概要並びに展望

1型糖尿病の成因解明と治療法の開発

劇症1型糖尿病は、極めて短期間にほぼ完全に膵β細胞が破壊され、インスリンの絶対的欠乏によって糖尿病を発症する新しい疾患単位であり、花房・今川により世界に先駆けて発見・確立された(Imagawa A, Hanafusa T et al. New England Journal of Medicine 2000)。しかし、その発症メカニズムについて、HLA遺伝子やウイルス感染などの関与が示唆されているが、詳細は未だ不明である。
 現在、患者膵について免疫組織学的アプローチ、あるいは網羅的な発現遺伝子解析や末梢血中のT細胞機能の解析などを行っている。また劇症1型糖尿病のモデルマウスや、自然発症1型糖尿病モデルマウス(NODマウス)などを用いて、膵β細胞傷害メカニズムや糖尿病発症の抑制効果などを明らかにしようとしている。さらに概要のところで述べた劇症型糖尿病調査研究委員会との共同研究として、全ゲノム解析と候補遺伝子の同定も行う予定である。


糖尿病合併症の臨床的研究~血糖値変動指標の検討

CGM(持続血糖モニター)を用いると、血糖自己測定では把握できない血糖変動の情報を得ることができる。劇症1型糖尿病では、他の1型糖尿病と比較して細小血管障害が進行しやすいことが明らかになっている。血糖値変動の大きさを示す指標であるM値が有意に高値であることから、病初期からの内因性インスリン分泌低下が血糖不安定性をきたし合併症を進行させることを報告してきた。本研究ではCGMを用いて、より詳細な血糖変動指標を解析すると共に、薬物介入により血糖変動そのものを是正しようとする試みに取り組んでいる。


抗PD-1/PD-L1抗体起因性免疫関連有害事象としてのACTH分泌不全症に関する研究
-血清ナトリウムによるスクリーニングの有用性について-

免疫チェックポイント阻害薬である抗ヒトPD-1/PD-L1抗体によって、約1%程度と稀ではありますが、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が障害され、診断が遅れると生命を脅かす重篤な状態に陥ることがあります。ACTH分泌不全症では低Na血症を生じることがあります。そこで抗PD-1/PD-L1抗体薬を投与後に低Na血症を生じた患者さんの経過、血液検査データを用いて、ACTH分泌不全症の合併率、予後への影響を明らかにすることを目的としています。

自主臨床研究

我が国における1型糖尿病の実態の解析に基づく適正治療の開発に関する研究

1型糖尿病は、標準的な治療が定まっておらず、よりよい治療を開発する必要があります。そのためには、患者さんの病状やどのような治療を受けたかなどを詳しく調査する必要があります。 日本糖尿病学会の劇症1型糖尿病、急性発症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病の診断基準により、全国の日本糖尿病学会認定教育施設に通院中(2019年11月?2019年12月に受診歴のある方)の1型糖尿病を登録(レジストリー)します。

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抗ヒトPD-1/PD-L1抗体投与後に発症する1型糖尿病に関する疫学調査

免疫チェックポイント阻害薬である抗ヒトPD-1/PD-L1抗体の投与による1型糖尿病の発症が報告されています。抗ヒトPD-1/PD-L1抗体の投与により発症した1型糖尿病症例を抽出し、症例調査票を用いてその臨床背景や経過、血液検査結果などを後ろ向きに解析し、他の新規発症1型糖尿病と比較することで、その臨床像や発症リスク、病態、発症時の対応等を明らかにします。

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劇症1型糖尿病における感染因子の検討

劇症1型糖尿病は2000年に報告された1型糖尿病に属する新しい糖尿病のタイプです。ウイルス感染や感染防御機構の破綻が発症に関与していると考えられています。本研究では、劇症1型糖尿病発症時のウイルス抗体価と抗ウイルス免疫反応に関与する因子の特徴を明らかにすることを目的とします。

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成人成長ホルモン分泌不全症におけるGHRP-2負荷試験およびグルカゴン負荷試験の有用性

成長ホルモンがどの程度分泌されているかを調べる成長ホルモン分泌刺激試験(GHRP-2負荷試験およびグルカゴン負荷試験)の有用性を明らかにします。

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高齢者1型糖尿病の病態と治療についての実態調査

日本における人口の高齢化および1型糖尿病の治療法の進歩による予後改善に伴い、1型糖尿病患者も高齢化していると考えられます。しかし、本邦における高齢者1型糖尿病患者の病態と治療については殆ど報告がありません。そこで本研究では、後ろ向き調査により、高齢者1型糖尿病患者の背景、治療方法、治療成績、および合併症の状況などの病態と治療を対照となる糖尿病患者と比較検討することにより明らかにします。

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GAD抗体ELISA測定キットの検討

1型糖尿病の診断や進行予測の重要な検査であるGAD抗体の測定が、平成27年12月より新規測定法(ELISA法)で測定できるようになりました。そこで本研究では、1型糖尿病の診断に現在使用されているGAD抗体の新規測定法(ELISA法)を用いて基礎的・臨床的に検討をおこなうとともに、GAD抗体ELISA法を使用した1型糖尿病の進行予測に関する検討を行います。

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IA-2抗体ELISA測定キットの検討

1型糖尿病の診断に重要な検査であるIA-2抗体の測定が、平成30年12月より現在使用されている方法(RIA法)から新規測定法(ELISA法)での測定に変更されることとなりました。そこで本研究では、IA-2抗体の新規測定法(ELISA法)を用いて基礎的・臨床的に検討を行います。

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劇症1型糖尿病患者における血清中抗CD300e抗体の検討

劇症1型糖尿病患者の急性期に上昇する血清中の抗CD300e抗体をインフルエンザなど他のウイルス疾患や自己免疫性1型糖尿病においても解析することで、鑑別診断マーカーとして実際に利用可能であるか否かを明らかにすることを目的とします。

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亜急性甲状腺炎における患者背景および臨床像の多様性に関する研究

高松内科クリニックと共同で、亜急性甲状腺炎の患者背景および臨床像の多様性を検討しています。高松内科クリニックを受診し亜急性甲状腺炎と診断された患者の診療録から発症時の症状やその後の経過、血液検査データを用いて、亜急性甲状腺炎の臨床的な多様性を明らかにすることを目的としています。

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難治性副腎疾患レジストリを活用した難治性副腎疾患の診療の質向上と病態解明に関する研究

難治性副腎疾患は、稀な病気で病気の研究が進みにくいことから、複数の専門医療機関の患者さんの診療情報を集めて解析し、最適な診断方法や治療方法を確立する必要があります。この研究では診療録の記録から患者さんの病気に関する情報を収集・解析して、副腎腫瘍に対する、より優れた診断方法や治療方法を見つけ出すことを目的としています。

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劇症1型糖尿病発症時(超急性期)の病態探索に関する研究

日本糖尿病学会の「1型糖尿病における新病態の探索的検討に関する委員会」において、劇症1型糖尿病の成因解明のため、新規発症の1型糖尿病患者(劇症の他、急性発症1型、免疫チェックポイント阻害薬投与後1型糖尿病も含む)について、超急性期の残余検体(入院時、発症2週後、4週後)を収集し、網羅的にサイトカインを測定します。そのほかの情報として病歴、治療歴、検査データ等、試料として血液を用います。なお、この研究は大阪大学主体となり、全国の約20施設が参加予定です。

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