50-54歳の時点で10年後に骨粗鬆症になる人を予測する骨密度の基準値を提案し、国際誌Menopauseに掲載されました。
もし10年後に骨粗鬆症になることがわかれば、それまでに十分な予防策を講じて骨粗鬆症にならないようにすることができます。 そこで、私たちはJPOS研究の2006年の参加者の内、50-54歳の女性の腰椎と大腿骨近位部の骨密度から10年後(2016年)に骨粗鬆症になる人を特定できるかどうかを検討しました。
その結果、骨粗鬆症の日本基準では0.834g/cm
2(世界基準では0.867g/cm
2)より低い場合に10年後に骨粗鬆症になっていることが、感度100%、特異度91%で予測でき、この基準は、2002年の 骨密度から2011年の骨粗鬆症を予測する場合でも感度92%、特異度87%で、精度はよく保たれていました。骨密度は現在の骨粗鬆症を診断するだけでなく、10年後の骨粗鬆症を予測できることが示されました。
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新しい大腿骨頸部の骨強度指標は、従来型の骨密度よりも大腿骨近位部骨折のリスクを正しく表していることを、国際学術雑誌 Osteoporosis
International に報告しました。
用いた骨強度指標はスペインの会社と共同研究している3D-Shaperというソフトウェアによるものです。通常の骨密度画像は2次元の画像ですが、これを定量的CTの画像データベースから作成した
3次元モデルに当てはめて3次元に再構成し、その3次元モデルを使って、大腿骨近位部の様々な部位の体積骨密度や構造強度指標を計算するものです。
この指標をJPOS研究の初回の大腿骨近位部骨密度画像から計算し、その後20年間に発生した大腿骨近位部骨折を予知できるかどうかを、従来型の骨密度と比較しました。結果は下の図です。この図はROC曲線といって、左上角に近い曲線を描く検査がよい検査であることを示します。図では青が従来型の骨密度、赤が新しい指標で大腿骨頸部海綿骨体積骨密度というものです。赤の方が左上角に近いのでよい検査であることがわかります。
この検査を用いることで、骨粗鬆症診療の質を上げることになると期待されます。
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納豆を習慣的に摂取している人では骨折のリスクが低いことを報告した論文が、国際学術雑誌Journal of Nutritionに掲載されました。
JPOS研究の初回調査を受診した45歳以上の女性1417人を15年間追跡し、その間に発生した骨粗鬆症性骨折を把握しました。そこで、初回調査時の納豆の摂取状況と骨折の発生リスクの関係を調べました。
納豆を1週間に1パック未満しか食べない人の骨折発生率を1とした時、1-6パック食べる人の骨折率は0.72、7パック以上食べる人の骨折率は0.51と有意に低下していました。
この傾向は年齢、体格、骨密度などを調整しても同様に認められました。また、この傾向は納豆以外の大豆食品では認められませんでした。 この結果には、納豆に含まれ、他の大豆製品に含まれないビタミンKが関与しているものと考えられます。
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JPOS研究の主任研究者、伊木雅之がNHK「きょうの健康」に出演し、骨粗鬆症予防のお話をしました。
タイトルは「いますぐ対策、骨粗鬆症」、12月11日と12日の2回にわけてお話しました。
11日「ビタミンDと骨の深~い関係」
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12日「骨太生活のススメ」
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低骨密度や骨折があると頸動脈エコーで見た動脈硬化が進展しやすいことがわかり、国際雑誌Maturitasに掲載されました。
JPOS研究でも、骨粗鬆症と動脈硬化の関連は指摘していました。その一つは低骨密度や骨折があると、頸動脈エコーでみた動脈の壁の厚さが厚くなるという結果でした。
今回はそれに加えて、血管壁の局所的な肥厚である頸動脈プラークが、低骨密度や骨折があると、生じやすいことを10年間の追跡で示しました。 この結果から骨粗鬆症と動脈硬化はまったく異なる疾患ではありますが、その発生機序の一部に共通の部分があるかもしれないと考えられます。
もしこの部分に介入できれば、骨粗鬆症と動脈硬化を同時に予防する画期的な対策が発見できるかも知れないと、夢の膨らむ結果です。この結果は、国際雑誌
Maturitasに掲載されました。
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握力が弱いと前腕と椎体の骨折が起こりやすくなることがわかり、国際雑誌Maturitasに掲載されました。
握力が弱いと骨粗鬆症性の骨折が起こりやすくなることはこれまでにも知られていましたが、どの部位の骨折のリスクが上がるのかは明らかではありませんでした。
そこで、JPOS研究の初回調査で測定した握力とその後に起こった骨折との関係を分析しました。その結果、握力が弱いと骨粗鬆症性骨折全体のリスクは上がっていましたが、部位別に見ると、前腕だけでなく、椎体骨折のリスクが大きく上がっていました。
握力は全身の筋力と正の相関があります。椎体骨折は筋力の低下に強く影響されるのかも知れません。
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JPOS研究の初回調査から提案した海綿骨指数(TBS)の値に誤りがあり、修正しました。
JPOS研究の初回調査で撮影した腰椎骨密度用の画像を再解析し、海綿骨指数(Trabecular bone score, TBS)を求め、日本人女性の標準値として提案し、国際雑誌Osteoporosis
Internationalに掲載されていました。ところが、その値に誤りがあることが判明し、修正版を同じ雑誌に掲載しました。TBSの計算は共同研究機関のMedImaps社で行われたのですが、その過程で機種間の校正の一部を欠落させるミスが起こったのでした。そのため、本来の値より0.177低い値を報告してしまいました。しかし、一律に0.177を足せば正しい値になりますので、年齢や骨密度との相関などに変化はありませんでした。今後はこのような誤りを犯さぬよう、最新の注意と管理体制で臨みたいと思います。
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低骨密度になると動脈硬化が進展しやすいことがわかり、国際雑誌Maturitasに掲載されました。
これまでの研究で、骨粗鬆症と動脈硬化の関連は指摘されていました。しかし、その多くは断面研究で、低骨密度の人の動脈硬化がそうでない人よりも大きく進展することを示した追跡調査はほとんどありませんでした。そこで、JPOS研究では2006年の10年時追跡調査で動脈硬化の検査として脈波伝達速度検査を導入し、20年次追跡調査までの10年間で動脈硬化の進展度合いを検討しました。その結果、大腿骨近位部骨密度が低いほど、動脈硬化に進展する人が多くなっており、年齢と血圧を調整しても、骨密度1標準偏差低下あたり、44%増加しました。骨粗鬆症と動脈硬化はその発生機序の一部に共通の部分があるかもしれません。もしこの部分に介入できれば、骨粗鬆症と動脈硬化を同時に予防する画期的な対策が発見でいるかも知れません。この結果は、国際雑誌
Maturitasに掲載されました。
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筋力は筋量を調整しても骨密度に関連していたことが、国際雑誌 Journal of Bone and Mineral Metabolismに掲載されました。
これまでの研究で、筋力が強いほど骨密度が高いことは知られていました。しかし、それは本当に筋力の強さが関係しているのか、強い筋力を発揮する筋肉の量(重さ)が関係しているのかはわかっていませんでした。そこで、JPOS研究に参加した閉経女性において、筋力と筋量の骨密度への影響を検討したところ、強い筋力は筋量を調整しても高い骨密度と関連することがわかりました。筋量を測定することは簡単ではありませんが、握力などの筋力は簡単に測れます。この研究により、運動等の骨密度への影響のモニタリングは筋量ではなく、筋力を使えば良いことがわかりました。この結果は、国際雑誌
Journal of Bone and Mineral Metabolismに掲載されました。
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JPOS研究の主任研究者、伊木雅之(近畿大学医学部公衆衛生学)がNHKあさイチでビタミンDについて解説しました。
ビタミンD欠乏になると、小児ではくる病、成人では骨軟化症を発症しますが、高齢者では骨粗鬆症と併存するため、骨粗鬆症性骨折のリスクが上がります。JPOS研究のベースライン時の血液中のビタミンD濃度を測定したところ、50%以上がビタミンD欠乏(25OHD濃度が20ng/ml未満)と判定されました。欠乏は特に20歳代で多く、80%にのぼります。この状態で出産し、児を母乳で育てると、児がくる病になる危険があり、高齢者では骨折が増えます。ビタミンD不足の原因は魚の摂取不足と紫外線への被曝不足です。魚をしっかり食べ、適度に日光に当たる生活が必要です。【2017年12月18日】
NHKあさイチのホームページです。 【
こちら】
JPOS研究の主任研究者、伊木雅之(近畿大学医学部公衆衛生学)が第17回日本骨粗鬆症学会学術振興賞を受賞しました。
日本骨粗鬆症学会学術振興賞は、骨粗鬆症に関連した活動を通じて学術の振興に貢献した個人ないし団体に年に1件授与されます。今回の受賞は「我が国における骨粗鬆症の疫学研究の第1人者として多くの優れた学術的成果」を挙げ、「日本骨粗鬆症学会理事・骨粗鬆症検診委員長として学会に貢献」したことを評価していただきました。【2017年10月21日】
学術振興賞の賞状です。 【
こちら】
学術振興賞受賞に当たって、伊木が日本骨粗鬆症学会雑誌に寄稿した文章です。【こちら】
ビタミンD不足でその後15年間の骨折リスクが上がることがわかり、国際誌 Osteoporosis Internationalに掲載されました。
ビタミンDが骨の健康維持に重要であることはよく知られています。たとえば、ビタミンD欠乏は小児ではくる病を起こし、成人では骨軟化症を起こします。しかし、ビタミンD不足で高齢者の骨折のリスクが上がるかどうかは実はよくわかっていませんでした。そこで、1996年のJPOS研究で採取し、保存していた血清中のビタミンD濃度を測定し、その後15年間の骨折リスクとの関連を検討しました。その結果、ビタミンD濃度が10ng/ml未満では30ng/ml以上に比べてその後5年間の非椎体骨折リスクが6.55倍にもなり、20ng/ml未満ではそれ以上に比べて15年たってもなお有意に上昇していました。高齢者では血清中のビタミンD濃度を測定し、骨折予防に活かすべきと考えられました。【2017年3月1日】
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JPOS研究の論文がアメリカ骨代謝学会雑誌の骨粗鬆症関係の論文で最も引用されたトップ10論文に入りました。
アメリカ骨代謝学会雑誌(Jounal of Bone Mineral Reseach (JBMR))はImpact factor 6.832で、骨代謝関係ではトップジャーナルです。これまでにJPOS研究からはこの雑誌に2編の論文が出ています。その内の1件、
Iki M, Tamaki J, Kadowaki E, Sato Y, Dongmei N, Winzenrieth R, Kagamimori S, Kagawa Y, Yoneshima H.
Trabecular bone score (TBS) predicts vertebral fractures in Japanese women
over 10 years independently of bone density and prevalent vertebral deformity:
the Japanese Population-Based Osteoporosis (JPOS) cohort study.
J Bone Miner Res. 2014 Feb;29(2):399-407. doi: 10.1002/jbmr.2048.
が、同雑誌に掲載された骨粗鬆症に関する論文の内、他の論文から引用された回数が多いトップ10論文に入りました。論文は多く引用されるほどインパクトが大きいと評価されます。これからもインパクトの大きな研究を行い、よい論文の執筆を進めたいと思います。
実は、この論文は昨年9月に日本骨粗鬆症学会森井賞をいただいた論文です。森井賞の権威の一部に報いることができたと喜んでいます。 【2016年6月9日】
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JPOS研究の主任研究者で近畿大学医学部公衆衛生学教授の伊木雅之が第10回日本骨粗鬆症学会森井賞を授与されました。
森井賞は大阪市立大学名誉教授、故森井浩世先生の御遺志で2006年につくられた賞で、国内で行われた骨粗鬆症に関する臨床研究のうち、特に優れた成果を示した論文、原則として各年度1編に授与されるものです。今回、受賞した論文は下記のもので、海綿骨の微細構造の状態を表す指標、Trabecular
Bone Score (TBS)が椎体計測で診断した椎体骨折のリスク(起こりやすさ)を表すことを世界で初めて明らかにしたコホート研究です。 【2015年9月18日】
[共著者] |
玉置 淳子、門脇 英子、佐藤 裕保、Namiraa Dongmei、Renaud Winzenrieth、鏡森 定信、香川 芳子、米島 秀夫 |
[雑誌名] |
Journal of Bone and Mineral Research, Vol.29, No.2, pp399-407, 2014 |
[論文名] |
Trabecular Bone Score(TBS) Predicts Vertebral Fractures in Japanese Women Over 10 Years Independently of Bone Density and Prevalent Vertebral Deformity: The Japanese Population Based Osteoporosis(JPOS) Cohort Study |
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なお、2011年の第6回森井賞は当時近畿大学医学部公衆衛生学准教授の玉置淳子(現、大阪医科大学衛生学公衆衛生学教授)が受賞しており、JPOS研究からは、2例目の受賞となりました。
JPOS研究によるTrabecular bone score (TBS)の日本人標準値が国際雑誌 Osteoporosis International
に掲載されました。
下でも述べますTBSですが、日本人の標準的な値はどれほどなのかはわかっていませんでした。実際、このようなデータがあるのは白人女性だけでした。そこで、JPOS研究のベースライン研究で測定した腰椎骨密度の画像を再解析して、日本人女性の代表性のあるTBSの値を求めたのです。これを基準とすることによって、測定したTBS値が日本人女性の基準からどれほど離れているのかが明らかになり、骨粗鬆症患者の診療や骨粗鬆症検診に役立つと期待されます。また、TBS値の白人女性との比較も可能になり、日本人値は白人に比べて、かなり低いことがわかりました。【2014年8月23日】
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JPOS研究が国際疫学会の学会誌 International Journal of Epidemiology に掲載されました。
International Journal of Epidemiology (IJE)は疫学の世界では最高峰の学術誌です。2012年のImpact
Factorは6.982となっています。この雑誌には世界の優れたコホート研究がCohort Profileとして掲載されています。本JPOS研究もこのほどこの仲間入りを果たしました(DOI:
10.1093/ije/dyu084)。これにより世界中の人々にJPOS研究の全貌をご紹介することができるようになりました。【2014年5月30日】
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Trabecular Bone Score (TBS)の有効性を日本で初めて明らかに
海綿骨の微細構造の状態を表す指標、Trabecular Bone Score (TBS)が椎体骨折のリスク(起こりやすさ)を表すことを、日本人を対象とする研究では初めて明らかにしました。
TBSは腰椎骨密度を測定する際に用いられる2重X線吸収法による画像を再解析して得られます。したがって、あらたな検査をすることなく、骨密度だけでは表現できない海綿骨の構造特性を表すことができます。このTBSが実際に椎体骨折のリスクを年齢や骨密度とは独立して表すことがわかり、今後の骨折リスク評価の改善につながるものと期待されます。【2014年1月20日】
この成果はアメリカ骨代謝学会誌の出版されました。
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