専門外来紹介

お問い合わせ contact

〒569-8686 
大阪府高槻市大学町2-7

TEL 
072-683-1221(代表)
患者様へ、ご相談は外来を受診してください。

臓器を摘除せずに治す
大阪医大式レーザー治療とアジュバント化学療法を用いた腎盂尿管癌の臓器温存治療“OMC-LRV”

ーOMC laser resection with vaporization(OMC-LRV)with adjyuvant chemotherapy(AC)療法―
この治療の背景

腎盂尿管癌(近年はヨーロッパ泌尿器科学会の影響を強く受けUTUCと専門家の間では略語で呼びます)の治療として世界標準となった腎尿管全摘除術(膀胱カフ法)を我々は腹腔鏡で低侵襲に行うことを積極的に行って来ました。しかし、もともと人の体に2つある腎臓のうちの一つを取り除くことで手術の後の総腎機能の低下は避けられませんでした。さらに腎臓は血圧調整や血液のもとを作るホルモンの産生臓器である側面も併せ持っており、腎臓の温存は泌尿器外科医師にとって積年の課題であったと言っても過言ではありません。

私たちは、経尿道的手術という低侵襲治療を長年にわたって行ってきました。この豊富な経験と新開発のレーザー内視鏡技術を生かして、尿管と腎盂に存在する腫瘍を経尿道的に切除し根治する臓器温存治療を積極的に行っています。

この治療の概要
治療の流れ

治療の流れ

初めて受診頂いた患者様には、まず、私たちの新規治療である“OMC-LRV”治療が患者様にとって最適の治療であるか否か、あるいは治療を受けることが可能か否か、を判定するため、いくつかの検査をお受け頂きます。そして、最適の治療である、あるいは、可能であると判断された場合には、治療日程を決めて入院となります。OMC-LRV治療はneodymium:Yttrium Aluminum Garnet (Nd:YAG)レーザーが色素の濃い組織の凝固作用を有する原理を応用して癌組織の血液の流れを言葉通り停止させ、その後、水分を含んだ組織を固化・蒸散する能力を有するHolmium:Yttrium Aluminum Garnet(Ho:YAG)レーザーで出血をコントロールされた癌組織を除去する低侵襲治療です。もちろんOMC-LRVを施行する直前に癌組織を生検し、病理学的評価を同時に行います。

LRV療法OMC-LRV治療後は一度退院頂き、腎機能の評価を経て“OMC-LRV治療後化学療法(AC)”を2クール行います。この化学療法の過程には最低2か月を要します。そして、再度入院頂き、経尿道的にOMC-LRV治療を施行された組織が完全に無くなっていることを、生検することで病理学的に評価判定します。尚、初回生検で非常に悪性度の高い癌であることが分かっており、治療後の生検で残存腫瘍が疑われる場合にはOMC-LRV療法を再度施行し、癌組織の根絶を図ります。

 

この治療の原理

そもそもレーザーの生体に対する物理的作用は4つあります。

@光熱作用(Photo-thermal effect)
A光衝撃波作用(Photo-Acoustic effect)
B光化学作用(Photo-Chemical effect)、そして
C光解離作用(Photo-Decomposition effect)です。

このうち、レーザー治療に用いるのは、主に@の物理的作用です。大凡1000nmを超えるレーザーの波長の場合、レーザーを照射された対象には熱が発生し、100万分の1秒から5秒程度で対象となる癌の温度が急激に上昇します。

我々が用いるNd:YAGレーザーは、波長1064nmあり吸収係数が非常に小さく組織深達性が5oと高いレーザーです。このことが、吸収係数が大きく組織深達性が小さなCO2レーザーやEr:YAGレーザーとの大きな違いです。Nd:YAGレーザーは薄い肌色の腎盂尿管癌の中に存在する暗色の組織である腫瘍血管に吸収されます。他のレーザーに比較して散乱係数が高いため広範囲の腫瘍血管に吸収が期待できます。そして優れた凝固能を持っています。

その一方でHo:YAGレーザーは水に吸収されるというユニークな特性があります。そしてNd:YAGレーザーと異なり、色素選択性がなく、散乱係数が低いため、Nd:YAGレーザーで固化した後の癌組織をHo:YAGレーザーを用いて“ピンポイント”で正確に注意深く蒸散・切開していくことが可能となります。

 

レーザーの特性
   Absorption Scattering 
Water Chromophores
Nd:YAG Weak Dark colored tissue
(melanin , hemoglobin)
Large
Ho:YAG  Strong None Small 

ホルミウムレーザーの設定画面 ネオジウムNdレーザーの設定画面

細径の軟性尿管鏡を用いて低侵襲に治療を行います手術では術者がフットスイッチを踏み分けることで瞬時にレーザーを切り替え、使い分けることが可能です。私たちの施設では最新のバーサパルスパワースイート(VersaPulse PowerSuiteTM : Lumenis Ltd.)を使用しています。100W高出力により効率的となっていて、手技時間の短縮が実現可能です。また、高い出力と細かい設定が可能で、様々な手技に最適な出力で対応できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ページ先頭へ