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前立腺がん治療センター

センター長
泌尿器科 教授 東 治人

基本理念

私たちは前立腺癌についての最新の知識と最良の技術を結集して、患者様に最適な治療を提供しています。

前立腺癌は、患者様が高齢であること、また、癌の進行がさほど早くないことなどから治療には極めて多くの選択肢があります。 
しかし、一人の患者さんが受ける治療は一つであり、重要なことはあなたに最適な治療法を選択することです。
当センターでは、泌尿器科腫瘍専門医、放射線科医、そして、病理医、それぞれのエキスパートが緊密なネットワークを組んで、あなたのがんの状態、年齢、体力、あなたの希望を含めたすべての状況を判断し、極めて多くの選択肢の中から最適の治療を提供します。

I. 早期がん

@ 極めて豊富な治療選択肢を持つ早期前立腺癌治療

基本的にがんが前立腺の中にとどまっている限局癌では手術療法、あるいは放射線療法が、また、周囲組織への浸潤や転移を有する進行がんではお薬による治療が主体となります。しかし、前述したように一人の患者様に最適の治療を提供するためには、個々の患者様における、がんの進展度(どこまで進んでいるのか)、および、がん組織の悪性度(正常との違いの程度)を充分に把握し、さらに患者様の年齢や社会的状態、そして患者の希望などを考慮して、総合的に最も適切な治療を決めることが必要となります。 

すなわち、同じような癌の状態でも、患者様の年齢、体力、そして、希望によって最適の治療選択は異なるわけです。

A フルラインアップを備えた前立腺癌低侵襲治療

前立腺癌に対する治療は、大きく放射線療法と手術療法に分けられます。 

手術療法ではお腹をきらない腹腔鏡下手術と腹腔鏡補助下に極めて小さい手術創で手術を行うミニ創手術の両方の認定施設となっており開腹手術も含めて毎年100例近い患者様に対して手術を行っています。

また、放射線治療においても、前立腺内部に照射する組織内照射法とコンピューター制御で前立腺に限局して体外から照射するIMRTの両方を備え、患者様の病態や病状に合わせて最も適切な治療を選択しています。組織内照射法では早期癌の患者様に対して施行する密封小線源治療とやや進行癌でありながら何らかの理由で手術ができない方に行う高線量組織内照射法があり、毎年40例以上の患者様に施行されそれぞれ有効な治療効果を上げています。IMRTに関しては高齢者で組織内照射に適さない方が適応となりますが、これも治療効果が高く30-40例の方に施行しています。これらに加えて4門照射といわれる通常の放射線照射法を適用する患者様を合わせると手術を含めて全体で200名の患者様を治療しています。 

A−1 手術治療(腹腔鏡下前立腺全摘術)

A 翌日から歩行、食事摂取が可能な低侵襲手術療法「腹腔鏡下前立腺全摘術」
前立腺に限局した腫瘍の場合、75歳以下であれば基本的に「病巣を摘除する」手術療法を考慮します。 
手術は腹腔鏡で行い、術後翌日から歩行、食事摂取が可能です。術後約1週間から10日間で退院可能なので高齢者にとって極めて有用です。

B 術中リアルタイム経直腸超音波ガイドを用いた合併症軽減の工夫
手術の合併症には2通りあります。一つは手術中におこる直腸損傷と出血、そして、もう一つは術後の尿失禁、および、インポテンスです。我々の施設ではこれらの合併症を予防するため術中リアルタイム経直腸超音波ガイド下手術を行い大きな成果を上げています。 

  1. 1) 術中の直腸損傷と出血: 
    前立腺と直腸は背中合わせで隣接しているので、前立腺を摘除するときには直腸から剥離する必要がありますが、その際、腫瘍や炎症が原因でくっついている場合があります。直腸を破れば直腸損傷、しかし、これを怖がって控えめに手術を行えば取り残しのリスクがあり、技術と決断を要するポイントといえます。
    この際、直腸からエコーのプローブを挿入しておくことで、直腸と前立腺の境界が明瞭に把握可能となり直腸損傷も、残存腫瘍もない、極めてレベルの高い手術が常時実現できるようになりました。
  2. 2) 術後の合併症「尿失禁、インポテンス」の予防: 
    2-a) 尿失禁は、前立腺全摘除術における最も大きな課題の一つです。
    私たちは、術後尿失禁を改善するため、
    @ 括約筋の温存     (前立腺を摘除する際、膀胱や尿道との境界部を超音波で明瞭に把握し、
                  尿道括約筋や膀胱の出口をできる限り温存する)、
    A 神経温存術      (超音波ドップラーという機能を用いて括約筋や陰茎を支配する神経と血管を
                  手術中リアルタイムに把握しこれらを温存する;下記に記載) 
    B 骨盤内臓器の位置矯正 (前立腺を摘除した後、膀胱と尿道のつなぎ目の角度や位置をできる
                  限り手術前の位置に矯正する) 
    を主題として「術後尿失禁改善手技 7項目」を実施することによって術後尿失禁の改善に努めています。一人一人の患者様にこれらの項目を忠実に実現することによって失禁は著明に軽減しました。
    2-b) インポテンスもまた、膀胱や、前立腺摘除術における最も大きな合併症の一つです。
    勃起能を司る神経を温存する神経温存術は、その治療法として広く認識されていますが、私たちは、神経温存をより確実に施行するため、超音波ドップラーを用いた神経温存術を行っています。 
    方法は、先程述べた直腸から挿入したエコーのプローブを用いて行います。超音波にはドップラー機能という機能があり、エコープローブに近づく血流の流れを赤で、遠ざかる血流の流れを青で提示することができます。 そこで挿入したエコーのドップラー機能を用いて陰茎に流入する血管を把握し、血管に沿って走行する神経を把握することによって、リアルタイムに神経存在位置を確認しながら神経温存術を施行することが可能となります。もともとが高齢者の方が多いため評価が容易ではありませんが、この手術を行うことによって50歳代の患者様においては勃起能の温存に成功しています。
B 4つのオプションを備えた放射線治療

全ての放射線治療法 “4つのオプション” から最適な治療法を選択して患者様のニーズにあった治療を提供しています。癌の進行が極めて軽度な早期癌で、癌の悪性度が低い方には密封小線源治療と呼ばれる「小さい放射線物質を前立腺に埋め込む治療法」を行っています。悪性度が高い癌には再発のリスクがあってあまり勧められませんが、入院は1泊2日と短いのでがん細胞のグレードが正常に近く早期の患者様には最適です。 

癌のグレードが高い場合、あるいは、病期がやや進行していて手術ができない患者様に対しては、高線量組織内照射法を行います。この方法は治療効果が高く、骨盤部に体外から放射線を照射する外照射を併用することで 多くの患者様が再発なく経過しています。 

前立腺に線源を刺入する操作ができない方(血液をさらさらにする薬剤を服用されている方や、高齢者) にはコンピューター制御で前立腺に限局して体外から照射するIMRTを行います。 これも治療効果が高く30-40例の方に施行しています。  

いづれの治療法も治療効果があり、放射線治療は、頻尿、血尿などの副作用を認めることがあるので、

C ダヴィンチを用いたロボット手術

我々のスタッフが関連施設である徳洲会病院に出張し、ダヴィンチを用いたロボット支援手術を行っています。ロボット支援手術とは、人間の手と同じ動きをする機械アームを、お腹に開けた小さい穴を通して挿入し、操作パネルを通してアームを動かす遠隔操作システムです。

ロボットの操作アームは人間の手の動きを忠実に遂行できるため、より確実な手術操作が可能であり、また、お腹の中に搭載された3 次元カメラによって、実物の10 倍の拡大視野で手術を行うことができるため、出血量の減少、そして、勃起機能を温存する神経温存術に極めて効果的です。ロボット手術は、術後の痛みが軽く、全身状態の回復が早いため、高齢者でも安心して受けられる手術です。

II. 進行がん

早期がんだけでなく、転移を有する進行がん、特に通常のお薬では効かなくなった内分泌療法不応癌に対する治療法を開発、提供しています。

@ 進行性前立腺癌には内分泌化学療法が効果大。諦めずに受診を

前立腺癌に対する治療には、手術、放射線、そしてホルモン療法と呼ばれる薬剤療法など、様々な治療方法があり、我々はこれらの治療法を患者様の病状や、年齢、そして患者様ご本人のご希望などを考慮して使い分けています。ホルモン療法は基本的に手術をせずに治療する方法の一つで、近年注射薬と抗男性ホルモン剤という内服薬を併用するTAB療法という方法が登場し奏効率は飛躍的に向上しました。しかしながら、組織型の悪いタイプの進行性前立腺癌では、治療導入時には一時的に軽快しても数年以内に治療に反応しなくなり、重篤な状況になることもしばしばみられ、現在の前立腺癌治療における最大の問題の一つです。 

本院ではこのような患者様に対して、約10年前から女性ホルモン剤と抗癌剤を併用した内分泌化学療法を開始しました。内分泌療法をはじめ、他の方法では全く効果がなく病気が進行していた、或いは初診時にすでに骨に無数の転移を認めていた場合においても、本療法導入後、血液検査や画像診断で癌が全くわからなくなるまでに効果を認めた患者様が少なからず見られています。当初は、全例入院点滴による治療を行っていましたが、現在ではQOLや患者様のニーズにあわせて、内服による外来通院での治療を主に進めています。他の施設で諦められた患者様、あるいは、このような患者様を受け持っていらっしゃる先生、是非一度御相談いただければ幸甚です。

A Individual chemotherapy

人によって癌細胞の性格が異なるからこそ、ひとりひとりに合った治療方法が大切。  

通常、人間の体の中では、それぞれの細胞がそれぞれの役割をもって存在し、その数などもうまくコントロールされています。一般的に「癌」とは細胞分裂の過程などで普通の細胞とは異なる細胞ができ、生体内のコントロールを受けずに無制限に増殖し、広がる病態をいいます。ここで重要なのは癌は普通とは違う細胞であって、「癌とはこんなもの」という定型的なものではないということです。癌に対する抗癌剤治療は以前から行われている治療法ですが、癌細胞は個人差があるため、ある程度までは効果があっても、腎臓癌にはA,膀胱癌にはBといった具合には抗癌剤のレジメは決められません。  

そこで我々は患者様それぞれの細胞を採取して、その方の癌細胞に最も適した抗癌剤を感受性試験という検査を用いて充分に検討し、最も効果の高い抗癌剤を投与する方法を行っています。現在は医学の倫理上、全ての患者様に適用することはできませんが、一般的な化学療法に反応しない方には充分なインフォームドコンセントの後、施行しています。

 

 

 

 

 

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