高血圧

高血圧とは 高血圧の原因 高血圧はなぜ怖い 高血圧の治療 高血圧Q&A

高血圧とは

心臓は全身に酸素や栄養を届ける血液を送り出しています。血液が心臓から押し出されて血管(動脈)に加える圧力を血圧といいます。心臓(左心室)が収縮して血液を動脈に送り出すときの血圧が収縮期血圧で、最髙血圧や上の血圧とよばれることもあります。心臓(左心室)が拡張していて血液を送り出していない時の血圧が拡張期血圧で、最低血圧や下の血圧とよばれることもあります。  

高血圧とは血圧が正常より高い状態のことです。収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHgのうち、どちらかがこの値以上のときに高血圧症と診断されます。  

血圧は基本的に低いほうが心臓や血管にはやさしいのです。しかし、下がりすぎてふらつきが起こったり、循環の悪い状態になっては困りますので、このような基準が示されています。高血圧を予防・治療する目的の一つは、狭心症や心筋梗塞といった動脈硬化によって起こる病気の予防です。そのため、いままでにそのような病気にかかったことのある方や、糖尿病など、他のリスクを有している方については、「収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg」よりも少し低い値を血圧の目標値とすることもあります。日本高血圧学会によって作成された「高血圧治療ガイドライン2009」では、そのことについて一覧表にしています。ただ、実際、血圧の目標をどこに置くのかは個々人によっても変わってきます。

高血圧の原因

高血圧には原因のはっきりしているものと、そうでないものがあります。高血圧の85~90%は原因がわからない高血圧で、ちょっと難しく「本態性高血圧」とよばれます。ご存知のとおり、肥満、喫煙、塩分やアルコールの摂りすぎ、運動不足やストレスなども高血圧の発症に関係します。日本人では塩分の摂りすぎによる高血圧が多いといわれており、また、食生活の欧米化の影響で肥満に伴う高血圧も増えています。  

本態性高血圧より頻度は少ないのですが、原因となる病気がある高血圧は「二次性高血圧」とよばれます。二次性高血圧の原因となる病気には、腎臓の病気や内分泌の異常などがあります。二次性高血圧の場合には原因となる病気の治療が大切です。

高血圧はなぜ怖い

高血圧のために頭痛やめまいなどが起こることがありますが、ほとんどの場合には自覚症状は起こりません。しかし、自覚症状がないからといって血圧が高いままにしていると、さまざまな臓器の障害が起こります。  

血圧が高いということは、全身に血液を送り出す心臓には大きな力が必要になるということです。これに対応しようとして心臓の筋肉は厚くなります。これが心肥大という状態です。さらに進行すると心臓の働きが低下して、血液の循環がうまくいかなくなる心不全という状態になります。  

また、高血圧は動脈硬化の最大の危険因子です。血管の壁に常に高い圧力がかかっているため血管の壁が傷つき、血管の内腔が細くなったり、血管壁が硬くなったりします。心臓の筋肉に栄養を送るための血管(冠動脈)が動脈硬化のために狭くなったり詰まったりすると狭心症や心筋梗塞の原因になりますし、脳の血管が詰まったり破れたりすると、脳梗塞や脳出血の原因となります。腎臓を栄養する血管が傷つくと腎臓の機能が低下してしまいます。このように、血圧が高いことによって起こるいろいろな合併症は、大きく健康を損なう原因となる可能性があります。

高血圧の治療

高血圧治療の目的は、心臓や脳や腎臓などの臓器の障害を予防したり、進行を抑えることです。血圧を下げることにより、臓器の障害が抑えられることが多くの研究で示されています。高血圧治療の基本は生活習慣の改善です。食事療法や運動療法に加え、禁煙やストレス解消を心がけましょう。食事療法の中心は減塩です。食塩を多く摂り続けると血圧が上がることがわかっています。食塩は今の半分程度に減らす必要があります。生活習慣を改善してもまだ血圧が高い場合には降圧薬による治療も必要となります。もちろん、降圧薬を服用していても生活習慣の改善は続けなければなりません。

高血圧Q&A

皆さんが疑問に思われていることについて、簡単に説明したいと思います。

Q 血圧を測ってもらうたびに値が違うのですが、どうしてでしょうか。

A 血圧はたえず変化しています。起床前からその日の活動に備えるように血圧は上がり始め、日中の動いている時間帯では高くなり、夕方から夜にかけて下がり、睡眠中はさらに低くなるという日内変動を示します。日内変動の程度は個人差があり、同じ人でも日によって異なります。また、日内変動による影響以外にも、緊張や気温、運動の影響により血圧は変化します。また、病院で測る血圧に比べ、自宅で測る血圧は低めであることも少なくありません。

Q 自宅でも血圧を測定するようにすすめられたのはどうしてでしょうか?

A 病院で測定する血圧が正常でも、適切に血圧がコントロールされているとは限りません。血圧が正常な人でも起床前後の血圧は上昇し、この反応がいろいろな原因で過剰になっていることがあります。ストレスの多い職場でのみ血圧が高くなる人もいらっしゃいます。病院での血圧は正常なのに、それ以外での血圧が高い場合を仮面高血圧とよびます。反対に、普段の血圧は正常なのに医師や看護師の白衣を見ただけで緊張して血圧が上がってしまう人もおり、白衣高血圧とよばれます。  
血圧を家庭でも測定することで、日常の血圧がわかる、というメリットがあるといえます。

Q 家庭で使う血圧計はどれを選べばよいでしょうか?

A 自動血圧計は薬局や家電販売店などで購入できます。いくつかの種類があり、上腕にカフ(腕帯)を巻いて測るタイプ、手首で測るタイプ、指にはめて測るタイプの3種類があります。上腕にカフを巻くタイプが最も正確なため、これから購入される場合には上腕型を選ぶことをおすすめします。

Q 家庭での血圧測定のポイントを教えて下さい。

A 家庭血圧は朝と夜の2回測定することが推奨されています。朝は起床後1時間以内で、排尿をすませてから、また朝食前、降圧薬を服用する前に測定します。夜は寝る前に測定します。いずれも座って1〜2分間安静にしてから測定して下さい。測定した日時と血圧の値を記録しておけば、後で経過を見るときの参考になります。測定するのは1回でいいですが、複数回測定したときは、いくつかの測定値を記録しておいてもよいでしょう。血圧の値は食事、飲酒、喫煙、運動、入浴などにより影響を受け、いつも変動しているため、あまり神経質になる必要はありません。毎日測定することがベストですが、週に数回であっても継続して測定することが大切です。 血圧の記録は、診察時に持参して担当医にも見てもらいましょう。

Q 病院で測定する血圧と家庭で測定する血圧の値は同じでしょうか。

A 家庭での血圧は病院で測定する血圧よりも低くなる傾向があります。「高血圧治療ガイドライン2009」での高血圧の基準とは、病院で測定した血圧では収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg、家庭血圧では収縮期血圧135mmHg、拡張期血圧85mmHgとなっています。

Q 降圧薬は飲み始めたら一生飲まないといけないと聞きましたが本当でしょうか?

A 降圧薬治療が始まった後でも、減塩や禁煙、肥満解消などの努力により徐々に血圧が下がり、降圧薬を減量したり中止したりできることがあります。食生活や肥満の改善に成功し、血圧が下がってきたら、降圧薬の減量が可能かどうか、担当の先生に聞いてみましょう。自己判断で治療をやめてしまうのは危険な場合もありますので注意してください。

Q 健康診断で血圧が高いといわれました。なにも症状がないので治療しなくてもよいと思うのですが?

A 高血圧ではこれといった症状がないことがほとんどです。しかし、症状がないからといって放置していると、心臓に負担がかかったり、高い圧力を受けている血管が徐々に傷んできます。その結果、心不全や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、腎臓病などの合併症が進行し、突然命の危険が生じます。そのため、高血圧は別名「サイレントキラー」ともよばれます。

Q 塩分制限のポイントを教えて下さい。

A 高血圧の食事療法のなかでも塩分制限が最も大切です。現在、日本人では1日の平均食塩摂取量は11g前後で、徐々に減少傾向にはありますが、欧米に比べるとまだ多い状態です。「高血圧治療ガイドライン2009」では1日6g未満が推奨されています。  
包装食品の栄養成分表示は食塩ではなくナトリウム(Na)表示にするよう義務づけられています。Na表示の単位が「g」の場合、2.5倍すると食塩量に換算することができます。  
食事の時には以下のことに気をつけて下さい。
◇ うどんやそば、ラーメンの汁は飲まない。
◇ しょうゆ、ソースなどはかけずに小皿にとって、少しつけるだけにする。
◇ レモンなどの香味を利用した味付けをしたり、ごま油やオリーブオイルなど風味のある油を使うのが効果的。
◇ かまぼこ、ちくわ、ソーセージなどの加工食品は塩分が多く含まれています。

Q 血圧を下げるために運動をすすめられました。運動をすると血圧が上がると思うのですが?

A たしかに運動中は一時的に血圧が上がることがあります。とくに激しい運動中は心臓から出ていく血液量が多くなりそれに伴い血圧も高くなります。ところが、適度な運動では、心臓から出ていく血液量が増えても血管が拡張して抵抗が減少するためそれほど血圧は上がりません。適度な運動を毎日繰り返すことで、血圧を下げるホルモンが増加したり、血圧を上げるホルモンが減少したり、肥満が解消されるなど、血圧にとってよい影響が多いのです。
高血圧に好ましい運動は有酸素運動とよばれるものです。可能であれば脈が少し速くなる程度の「はや歩き」もよいでしょう。駅の階段の上り下りや家の中の掃除など、日常生活のいろいろな場面で意識的に運動を取り入れる工夫も有効です。筋力トレーニングや短距離走などの無酸素運動は高血圧には適しません。また、重症の高血圧の方や、狭心症や心不全を合併している方は、運動制限がある場合がありますので、どのような運動まで可能であるか、主治医と相談する必要があります。

Q 適量のお酒は健康にはよいと聞きましたが、血圧にもよいのでしょうか?

A 適量のお酒は「百薬の長」ともいわれ、健康によいとされています。また、適量のお酒は血管を拡張させて一時的に血圧を下げることもあります。しかし、習慣的な飲酒は血圧を上昇させ、高血圧の原因になるためよくありません。また、お酒のつまみには塩分が多く含まれているものが多いことも高血圧に関係します。適量のお酒とは、日本酒では1合、ビールでは中ビン1本、焼酎は半合弱、ウイスキーやブランデーはダブル1杯、ワインではワイングラス2杯のことです。

Q 降圧薬にはどのような種類がありますか?

A 代表的な降圧薬として以下の5種類があります。このなかから医師は患者さんの体の状態にあわせて降圧薬を処方しますが、複数の降圧薬が併用される場合もよくあります。
◇ カルシウム拮抗薬
血管を拡げて血圧を下げます。
◇ アンジオテンシンII受容体拮抗薬
血圧を上げる物質であるアンジオテンシンの作用を抑えて血圧を下げます。
◇ ACE阻害薬
血圧を上げる物質であるアンジオテンシンが作られるのを抑えて血圧を下げます。
◇ 利尿薬
ナトリウムの尿への排泄を増やして血液の水分を減らすことにより血圧を下げます。
◇ β遮断薬
交感神経の受容体の1つであるβ受容体を遮断します。主に心臓にあるβ受容体を遮断して心臓からの血液拍出量を抑えて血圧を下げます。  

これ以外にも、α遮断薬、アルドステロン拮抗薬、中枢性および末梢性交感神経抑制薬など、さまざまな降圧薬があります。

文責        
星賀正明、宗宮浩一

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