右上葉S1原発の分化型腺癌、cT2N2M0の診断で、88.08.03:右上葉切除術+リンパ節郭清(完全なR2aとはいえない)
手術時所見:第5肋間にて開胸、胸膜癒着なく、胸水もないが横隔膜面の胸膜上に白苔上のものあり。上下葉は完全分葉、中上葉は不全分葉、S1域に bullous change 、S3域に3x3x3cmの弾性硬の腫瘤を触知、A1+3、V1、V2a、V3、V2、A2bの順に処理して上葉を切離、リンパ節は#1,2,3、#3aが一塊となり腫大、これを郭清、#12触知、#7は触知せず。
リンパ節 郭清範囲 R1(←R2)#1#2#3#3a:一塊、うち#3が1/3(+)、他は0/1 #7腫大無し #12 0/1
浸潤 胸膜浸潤(P1、p0) 胸膜播種(D−) 胸水(E−)、 肺内転移(PM−、pm0)断端 気管支(BrS−)
根治度 相対的非治癒切除
手術材料:14.0x14X4 cm、重さ56グラム、切除断端に明らかなリンパ節腫大、腫瘍浸潤はみられない。炭分沈着は比較的強く、肺尖部はbullousな印象を受ける。背側に過分葉傾向有り。腫瘍部は広基性の胸膜嵌入と胼胝をともなっており、周囲の胸膜は軽度集束している。一部に深い嵌入もみられる。
伸展固定肺 肉眼所見: 伸展固定肺は13.5x13.5x6.5の大きさで、背側に軽度の過分葉がみられ、炭分沈着は比較的強い。肺門部に明らかなリンパ節腫大なく、気管支断端にも明らかな浸潤像はない。外側面のほぼ中央に、1.5x0.8cmの胼胝性の肋膜嵌入がみられ、やや表面が粗造である。これに向かって周囲胸膜は嵌入しており、かなり鋭い嵌入もみられる。この部分を中心として肺尖部からS3にかけ軽度の胸膜の肥厚がみられる。癒着性の変化や腫瘍の胸膜外への明らかな浸潤を思わせるところはないが、胼胝部への浸潤は疑われる。割面では、 paraseptal emphysema 、 centrilobular emphysema を多く認め、また末梢気管支の拡張像も散見される。肺尖には小数の bulla が認められる。
腫瘍は最大割面で2x3(x3)cmの大きさで、周囲との境界は不鮮明で、内部には拡張した気管支や centrilobular emphysema の腔が保たれている部分が多い。浸潤先進部は小葉間結合組織で境界されるところもあるが、一方で浸潤の境界面がはっきりしないところもある。炭分沈着は強い。基本的にはB1bの気管支が中心となるが、B1aやB3aの末梢枝も集束する。B2系の関与は少ない。
乾燥伸展標本(FlashPix:612K)