肺血栓塞栓性肺高血圧に対するバルーン肺動脈拡張療法

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension; CTEPH)は、器質化血栓により広範囲の肺動脈が慢性的に狭窄・閉塞し、肺高血圧症を呈する疾患です。平均肺動脈圧が30mmHgを超える症例では、肺高血圧は経過とともに悪化する場合が多く、一般には予後不良で、厚生労働省が難病に指定しています。

肺動脈血栓内膜摘除術は外科的に器質化血栓を摘除する治療で、器質化血栓の近位端が主肺動脈から区域動脈近位部にある、いわゆる中枢型CTEPHがよい適応となり、症状、血行動態および生命予後の改善が期待できます。しかし、区域動脈や亜区域動脈に限局する末梢型CTEPHでは、手術は困難であると考えられています。

バルーン肺動脈拡張術(balloon pulmonary angioplasty; BPA)は、外科的治療の適応とならない末梢型CTEPHに行われる治療です。肺高血圧症の予後を決定する重要な因子である肺動脈圧を低下させ、息切れといった自覚症状を改善させることができます。

大阪医科薬科大学循環器内科では、2016年7月からBPAを始めました。心臓血管外科と適応について十分な検討を行い、また、BPAにおける最も重要な合併症である肺障害を予防するために、治療範囲や拡張の程度を慎重に判断しています。

右A10に対するBPA前後の画像所見

 

 

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