aa.フォンタン手術

 様々な解剖学的問題により、心室が一つだけしかポンプとして使えない場合の最終到達点としての手術がフォンタン手術です。以下の疾患が対象となるカテゴリーとなります。


  • 三尖弁閉鎖症
  • 発達できていない右心室を持つ肺動脈弁閉鎖症
  • 左室性単身室症
  • 修復不可能な病変を合併した両大血管右室起始症
  • 左心低形成症候群
  • フォンタン手術以外の他の手術方法以外で修復できないような複雑な先天性の心疾患

 ただし、残念ながら全てのお子さんがフォンタン手術を受けることが可能とは限らず、下の条件を満たしていることが必要です。


  • 肺の動脈(肺動脈)が良好な(正常な)大きさであること
  • 肺の血管の抵抗が低く、肺への血液の流れが良好であること(小学校で習ったオームの法則を思い浮かべてください)
  • 良好な肺の血液の流れが高い圧力をかけなくても保てること(オームの法則!電圧は肺動脈の血圧、抵抗は肺動脈の血管抵抗、そして電流は肺動脈の血流)
  • 残った一つの心室が体に血液を十分に拍出できる元気が十分にあること
  • 弁の漏れ(閉鎖不全)がないこと

 お母さん、お父さんに知っていただきたいことは、フォンタン手術を受けた後にも、生涯にわたって病院でお子さんの経過を観察していかなくてはならないということです。フォンタン手術はいくつかの違った方法でなされますが、当院では現在世界的に標準術式となった方法(心外導管法)を行っており、出来るだけ多くの血液の流れを肺に送り込めるように努めています。手術直後を乗り切り退院できれば、少しずつ運動の程度が改善し、チアノーゼも軽減してきます。


    心外導管法によるフォンタン手術:
  • 上半身の大静脈は右の肺へ行く動脈に結合させます(フォンタン手術の前に両方向性グレン手術として行われていることが多いです)
  • 下半身の大静脈は人工血管(導管:ゴアテックス素材)に結合させて、この人工血管を心臓の外を通して(心外)肺へ行く動脈に結合させます
  • 左右の心房を分ける中隔を取り除き(前の手術でなされている場合があります)、左心房の血液が右心房(続いて心室と大動脈を通って体に出て行きます)にも通るようにします

 手術後に残念ながら静脈の血圧が許容範囲以上に上昇すると(肺に血液が流れにくい状況を意味します)、様々な問題を生じたり、著しく低い心拍出状態になることがあります。この場合はフォンタン手術によって新しくなった血液の流れにお子さんが適応できないと判断され、もう一度手術によってフォンタン手術前の状態に戻さなければならない状況が時に発生します。