主な脳腫瘍

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髄膜腫(図1、図2)

最も頻度の高い原発性脳腫瘍の一つです。脳を包む膜から発生し、原則的に良性の脳腫瘍の一つで手術で摘出すれば治癒します。しかし、稀に悪性の性格をもち再発し易い髄膜腫もあります。40~60歳の女性に多く発生します。非常にゆっくり大きくなるため、大きくなるまで無症状のことも多く、高齢者の小さい髄膜腫は、手術などの治療が必要ないこともあります。また頭蓋底と呼ばれる脳の深部に発生した場合にも、腫瘍が小さければ定位放射線手術が有効と言われています。また、私たちは、従来治療に難渋していた悪性髄膜腫に対して、ホウ素中性子捕捉療法が有効であることを世界で始めて報告しており、この治療にも積極的に取り組んでいます。


神経膠腫(しんけいこうしゅ)(グリオーマ)(図3、図4)

脳の神経細胞を助ける細胞である、星状(せいじょう)細胞や稀突起膠(きとっきこう)細胞から発生した腫瘍です。原発性脳腫瘍の約25%を占め、浸潤性に増殖します。悪性度を4段階に分類し、最も悪性のグレード4は神経膠芽腫(こうがしゅ)と呼ばれ、最も予後の悪い腫瘍です。未だこれといって有効な治療法がないのが現状ですが、神経症状を悪化させない範囲で極力広範囲に摘出し、そのあとに放射線治療と化学療法を追加するのが一般的です。


下垂体腺腫(図5)

下垂体は頭蓋底の中心に位置し、ホルモン分泌の司令塔です。様々なホルモンが分泌されていますが、このホルモン分泌細胞が腫瘍化してホルモンを過剰に産生しますと、その種類によって、先端巨大症、巨人症、不妊、クッシング病、などの症状を来します。ホルモンを産生しない腫瘍ですと、大きくなって視神経を圧迫して先ほど述べた視野傷害を来します。さらに、他のホルモンの産生を障害し、下垂体機能低下症をきたします。下垂体腺腫のほとんどは良性で、開頭術を行なわずに鼻の穴から手術をする方法が一般的です。知っておくべき大切なことは、不妊の原因となるプロラクチンというホルモンを産生する腫瘍に対しては、現在では手術することはほとんどなくて内服薬で治療することが可能であるということです。


神経鞘腫(図6)

脳から出た神経を守っている神経の鞘から発生した腫瘍です。代表的なものに先に述べた聴神経から発生した聴神経腫瘍(または、前庭神経鞘腫(ぜんていしんけいしょうしゅ))があります。平衡感覚を司る前庭神経から発生することが多く、ふらつきや聴力障害で発症します。やや女性に多く、良性腫瘍です。手術で全て摘出できれば治癒しますが、聴力の温存や顔面神経麻痺を起さないためには全てを摘出できないことも多いのが実際です。残った腫瘍や小さい腫瘍には、定位的放射線治療も行なわれています。


転移性脳腫瘍

癌などが体の他の部分から転移してきた腫瘍です。かつては、予後はきわめて不良で生存期間はせいぜい6ヶ月と言われていましたが、ガンマナイフやエックスナイフ、サイバーナイフが出来て、転移性脳腫瘍が原因で亡くなる患者さんはほとんどいなくなりました(図7、図8)。もともとの癌が悪化して亡くなる場合が多いのですが、最後まで頭ははっきりしていて内容の濃い生存期間の延長が得られるようになりました。