田中 義久

キナーゼ活性化剤による癌細胞死誘導メカニズムの解析

 キナーゼは、自己免疫疾患、癌、細胞死を伴う多くの疾患の薬剤の標的である。現在世界で約300種のキナーゼ阻害剤が臨床試験されており、また20を超えるキナーゼ阻害剤が承認されている。抗癌剤のスクリーニングの多くは、活性阻害を指標とした探索系を用いるために、阻害剤として取れてくる小分子はATP と拮抗するようなものである (Erlotinib,Gefetinib,Sunitinib,Sorafenibなど)。
 我々は抗癌活性を示す薬物のスクリーニングを行った中で、キナーゼを活性化させる低分子化合物を見い出した。アロステリックに作用することでキナーゼの活性に影響を与えるものをアロステリックモジュレーターといい、キナーゼ活性を正に制御できるアロステリックモジュレーターをキナーゼアクチベーターという。キナーゼを活性化させることで癌細胞死を誘導する薬剤はほとんど報告されていないため、私はキナーゼ活性化による癌細胞死の誘導メカニズムを解析するとともに、癌におけるキナーゼ活性化剤の有用性についても検討していきます。