平田 あずみ

- 歯・歯周組織の発生と口蓋形成機構の解明 -

1.歯・歯周組織の形成に関する研究
ヒトの歯の発生は胎生6週頃から始まり、口腔粘膜上皮細胞とその下にある間葉細胞との相互作用によって、20本の乳歯と32本の永久歯が形成される。どの部位にどの歯が発生するかは歯胚の位置と数によるが、個々の歯の形成の基本プロセスはどの歯にも共通し、形成過程の歯胚の形によって蕾状期 (bud stage) (Fig. 1A)、帽状期 (cap stage) (Fig. 1B)、鐘状期 (bell stage) (Fig. 1C) と呼ばれるステージを経て進行する。歯冠が完成すると歯根の形成、さらに歯を支持する歯周組織の形成へと続く (Fig. 1C)。このような歯・歯周組織の形成に関わる細胞の分化と基質形成を制御するメカニズムを解明することを目的として、細胞生物学的手法により研究を行っている。

Fig. 1. マウス歯胚の組織像。
Bars=100μm.


2.口蓋形成を制御するメカニズムの解明
口蓋形成過程では、胎生7~8週頃、両側の上顎突起から突出した口蓋突起が、舌の上方で癒合し二次口蓋が形成される (Fig. 2)。口蓋突起の癒合や口蓋を形成する細胞の分化を誘導するメカニズムを明らかにするとともに、それらの口蓋裂発生への関与を探ることを目的として研究を行っている。


Fig. 2. マウス口蓋形成過程の組織像。(A) E13.5では口蓋突起は舌の両側に位置する。(B) E14.5になると口蓋突起は水平位をとる。(C) E15.5では両側口蓋突起が癒合している。(D) P0では口蓋骨形成も観察される。PS, 口蓋突起; T, 舌; P, 口蓋; MB, 上顎骨; PB, 口蓋骨. Bars=100μm.