大阪医科薬科大学学報 8号
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Osaka Medical and Pharmaceutical University8 ―新本館建築コンセプトの「超スマート医療を推進する患者さんの面倒をすべてなくす「スーパースマート」中央手術棟2階日帰り手術室これが理想ですね。患者サポートセンターでは、たとえば銀行の窓口のように、患者さんが座っていれば、医師や看護師、薬剤師とソーシャルワーカー、さらには事務スタッフなどの多職種の担当者が入れ替わり立ち替わり来てくれる。これまでは患者さんがあちこち動き回っていたのを、動かなくてもよくする。そのためには、舞台裏での職員間の効率的で遅滞のない情報のやり取りが必要です。私たちは、これらの情報の移動を一方向 “ワンディレクション” で完了できる準備を進めています。決して簡単ではありませんが。―実現すると患者さんには大きなメリットがありますが、いろいろ難しい問題を解決する必要がありそうです。勝間田 そのとおりです。今もいろいろ議論しながら進めているところです。導入に際してはいくつか先進的な事例を見学に行き、良いところを取り入れていきました。とにかくこだわったのが、患者さんはできる限り動かなくても済む、すなわちワンストップです。この体制は患者さんのためでありながら、結果的には医療者サイドの業務もスマートに、つまり効率化を図れるのです。―診療スタイルから事務のやり方までを変えるとなると、いろいろ抵抗もあったのではないでしょうか。南 慣れ親しんできたやり方を変えるのは、最初は誰でも嫌がるものです。だからワンストップの導入にしても、いきなり全診療科で一斉にというわけではなく、最もスムーズに受け入れてくれそうなところから始めています。勝間田 実際にやっているところを見ると、自分たちのところでもできそうだなと納得してもらえますから。とはいえ旧態依然とした体制を変革するには、相当のエネルギーが必要でした。例えるなら農地改革のようなもので、こり固まっていたこれまでの畑を思いっきり耕して土をほぐしたうえで、種を撒いたのです。おかげで花が咲き、実がみのりつつあるのが現状でしょう。 つバイオクリーン手術室、CT装置も備えたCTハイブリッド手術室、手術室とカテーテル室の機能を併せ持つアンギオハイブリッド手術室、手術支援ロボット(ダヴィンチ)を導入した手術室など合計20の手術室を備えています。また規制薬剤保管室については入退室に指紋認証と静脈認証を使い、さらに24時間体制で内部を録画するなどセキュリティに関しては、おそらく日本最高レベルの厳格さです。もちろんスタッフにとって仕事のしやすい環境も整備されています。南 少しでも仕事をしやすくするため、メディカルスタッフの意見をできるだけ取り入れました。たとえば手術室の中でベッドの周辺だけは、床の色を変えていますが、これは形成外科手術などで細い針を落としたときなどに、すぐわかるようにするためです。一方では手術室の並ぶ廊下のパネルには風景画を採用しました。無機質な手術室がずらっと並んでいると、それだけで患者さんは圧迫感を受けますから、少しでも安らいでほしいと思ったのです。大学病院 〜 Super Smart Hospital〜」には、どのような思いが込められているのでしょうか。南 自分自身が患者として受診してみて「これは面倒だな」と感じた点を、すべて解消しようと思いました。たとえば初診の際に紹介状を持って受付に行くと、カルテが作られます。そのカルテを持って診療科を回っているうちに、書類がどんどん増えていきます。その紙の束をなくさないように、ずっと持って回らなければならない。それでなくても体調の良くない患者さんにとっては、面倒なことこの上ない。植木理事長から「スーパースマート」といわれたときに、このような患者視点での不便をできる限り一掃したいと考えました。勝間田 患者さんはワンストップ、つまりいったん席についたら、移動することなく必要な手続きが順次進んでいく、

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