大阪医科薬科大学学報 8号
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OMPU超スマートホスピタル構想を実現予防から急性期、さらに慢性期まで対応できる体制へ日本で最先端となるがん医療の導入へ病院本館A棟(2022年7月)健康科学クリニック 予防医学への取り組みとしていち早く始めたのが、健康科学クリニックです。未病の発見を推進し、地域住民の健康を守るための施設は2009年6月にJR高槻駅に隣接するビルに開設されました。医師や技師、看護師、事務からなる体制を整えて、住民や市民を対象に精密な健診業務を行っていて大変好評です。一方、大学病院に在宅医療を行うための訪問看護ステーションも設置しています。 さらに地域医療の中核としての使命を果たすため、次の課題となっていたのが慢性期病棟の整備です。2010年に設置した看護学部の実習先を増やす意味でも、いわゆるケアミックス型の病院施設が必要となっていました。そこで2014年に社会医療法人信愛会から新生病院からの事業譲渡の申し出を受けて、これを大阪医科薬科大学三島南病院として開設する運びとなりました。その結果、急性期、慢性期、療養病床、リハビリセンター、血液浄化センターからケアプランセンターを備えたケアミックス型病院とし、さらに地域医療に貢献する体制が整備されました。 2014年5月に大阪で「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)実用化推進と拠点形成に向けた検討会議」が開催されました。BNCTとは「ホウ素薬剤をがん患者に投与し、薬剤が集積したがん細胞に中性子線を照射してがん細胞を破壊する」次世代の治療法です。以前から本学が京都大学の原子炉実験所で試験的に取り組んでいた治療法を本格的に実施するための場として本学がセンター設置の候補となりました。 しかし、導入を決断するまでには相当に悩みました。革新的な治療法とはいえ、当時はまだ保険適用にもなってお5 思いと歩み らず、治療法としても確立されているものでなく、中性子線装置の設置には相当な工費が必要でした。ただアメリカではすでに少数ながら治療実績もあるのだから、日本でも一人でも多くの難治のがん患者さんを救うために、今までにないがん治療法の拠点を本学に設立すべきだと腹を括ったのです。 施設は2018年に竣工し、まずPET診療を開始しました。2020年には頭頸部がんのなかでも切除不能ながんと再発したがんに対して保険適用の許可が下り、次第にこの治療法が認知され、現時点では年間約130例の治療を行っています。本 学ではそのうちの約80%に効果 が見られ、約45%は寛解に至っています。脳腫瘍(髄膜腫)についても治験の成果が出ていて、早期に保険適用が認められることを期待しています。このBNCTはがん治療でありながらも非常に低侵襲で副作用もほとんどなく、あまりにも治療が楽なのか、治療後、ベッドにいるはずの患者さんが居ず、探すと帰り支度をして病院玄関でタクシーを待っていたなどというケースもありました。 大学病院全建替え事業のハイライトとなるのが、新本館A棟・B棟の建築です。建替えに際しては、次の3つを目的として掲げました。1)手術と検査等の診療の高度化に対応し、安全診療を徹底する2)診療や検査を含め、会計や薬剤受取などの患者さんの待機時間を短縮する3)入院はもとより外来患者さんも含め病院内の快適さを追求する  まずA棟が2022年7月に開院しました。ここでは放射線撮影をはじめとする最新の機器や設備が導入された各種検査部門、化学療法センター、がん医療総合センターなど特 集

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