大阪医科薬科大学学報 8号
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3危機的な財政状況からの復活 私は2010年に理事長を拝命しましたが、最初に手がけたのが、全教職員に参加を呼びかけて開催した全体集会でした。私は2000年に病院長に就任し、2005年に学長になりましたが、その後2009年に常務理事となって初めて、法人の財政状況の悪化を知りました。財政が逼迫しているため新しい事業に取り組めず、大学・病院職員などのモチベーションも低下していました。 現状を打開するためには何が必要なのか。考えた末に出した答えが、全教職員による一致団結した取り組みでした。そこで全体集会を開催し、それまで非公開だった財務の実態を洗いざらい話したうえで、再建のため何よりも必要なことは患者さんの増加だということを全員に呼びかけました。併せて、これまでの状況を精査して無駄を徹底的に削ぎ落とし、精緻な予算の作成と執行を徹底しました。 そのおかげで翌年度には4億円の黒字へと転換し、その次の年に14億円、さらに23億円と年を追うごとに黒字が伸びていきました。ようやく資金面で目処が立ち、一連の大学病院全建替え事業に取りかかることが可能になりました。 この事業を考える際には、もう一点重要な条件がありました。本学の本部キャンパスの敷地は、周囲を道路に囲まれています。この道路の拡張整備ごとに少しずつ土地を削られていきました。まず阪急電車が高架になるときに南側の土地を、東側の府道、北側の市道整備に加えて、西側の道も元々一車線だったのが二車線にすることになり、本学の土地が削られていきました。合計で1,500坪ほどの土地を無償で提供したことになり、土地が足りなくなった分として中央手術棟の建っている西側の土地や看護学部の土地などを買い足しています。いずれも私が理事長に就任する前の話です。ただ一連の土地収用の補償として、現在の土地が都市再生特別地区として認められ容積率を200%から400%へと大幅に緩和してもらうことができました。2010年の理事長就任以来、大学病院全建替え事業に着手し、2025年5月のB棟竣工をもって一連の診療系建築工事を完了しました。ただし、ここに至るまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。財政難に陥っていた法人の財務立て直しから始め、二度の法人合併の諸問題と積み重なっていた課題を一つずつ丁寧に解決してきた結果が、現在の姿として結実しています。“温かみは最良の医療”にかけた思いと、これまでの歩みについて植木實理事長に語っていただきました。特 集〜病院建替えに込めた思いと歩み〜「温かみは最良の医療」中央手術棟思いと歩みOMPU

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