OMPU13医 学 部― 法医学とはどのようなものか、はじめに全体像を教えてください。 端的にいえば死因を究明する基礎医学であり、分野としては実践的な医学となります。死因究明の柱となるのが法医病理学、毒薬物分析に関する分野、そしてDNA 解析に関する分野の3 つです。基本的には死因の不明なご遺体を解剖させていただき、亡くなられた原因を突き止めます。そのために組織の検査はもとより毒薬物の検査、あるいはDNAの検査まで行って死因を特定していきます。なかでも本学の特徴といえるのが、解剖に携わる医師がいるだけでなく、毒薬物からDNAの検査までを一貫して請け負える体制です。日本には数多くの法研 究 室 訪 問〜ご遺体の主治医とは何を意味するのか〜高齢化の進む日本では今後、亡くなる方が増えていきます。国の推計では、2040年に年間死亡数が最多になると予想されています。そのような多死社会に備えて、これから重要性を増すのが法医学者です。法医学者といえば司法解剖に携わる人と思われがちですが、決してそれだけにとどまらず多岐にわたる役割を担っています。法医学教室の佐藤貴子教授は、神経内科医時代に抱いたある思いと運命的な出会いをきっかけとして、法医学に転じて本学に赴任しました。それ以降ずっと、多忙な日々を送り続けています。今回の訪問先― 先生は元は神経内科医だったと伺いました。それがなぜ、法医学に転じられたのでしょうか。 確かに臨床医としてキャリアをスタートし本学に移るまでの10年余りは、大阪大学医学部の神経内科医として日々患者さんと接していました。学生時代から法医学に興味を持っていたのは間違いありませんが、研 修 医になる頃には、やはり目の前の患者さんを救いたいと神経内科に進んだのです。ところが神経内科医としてALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんを多く診ているうちに気持ちが変わっていきました。当時は治療法もなく、呼吸器装着を選択せず亡くなられる患者さんに接したりしているうちに医学教室がありますが、3分野すべてを揃えているところは稀です。多数のスタッフ雇用も含めて、法人の理解があればこそ実現できている体制です。大阪府には本学の他にも大阪大学、大阪公立大学、関西医科大学、近畿大学に法医学教室があります。そんななかでも体制の充実ぶりが評価され、大阪府警からはできる限り本学で鑑定したいと多くの依頼が寄せられ、年間約340体の解剖を行っています。しかも依頼数はここ数年、増加傾向にあります。2040年に向けて多死社会へとなっていく日本社会において、法医学はとても重要な仕事だと受け止めています。 これからの日本で重要性を増す法医学法 医 学 教 室教授 佐藤 貴子
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