9対談 ―病院のDXも進められていると伺いました。南 病院のDXというよりも、患者さんのためのDXですね。たとえば再診の患者さんだと、診察券を専用機で読み取らせると受付証が発行されます。それを持って外来窓口に行けば受付終了です。受付証には二次元コードがあり、それをスマホで読み込めば外来での待ち時間がわかります。だから患者さんは、自分の診 察順が来るまで 院内のカフェでお茶をするなどして時間を過ごしてもらえる。車で来院された方なら、車内で寛いでいてもらってもよいわけです。勝間田 これはコンシェルジュとHOSPISION®というICTを活用したシステムで、自分の診察まで何人待ちなのか、待ち時間がどれぐらいなのかがスマホでわかるようになっています。一連のシステム導入をサポートしてくれたのは事務方です。彼らも、どうすれば患者さんの利便性が高まるかという視点で、さまざまなシステムや製品を提案してくれます。それを会議にかけて吟味しながら決めていきました。― 患者さんに寛いでもらうといえば、デジタルアートも導入されています。勝間田 岡山県の大原美術館と病院のコラボレーションで絵画をデジタルで展示する。しかも展示されている絵画の情報をパネルで解説してくれる。これは日本の病院で初めての取り組みです。その絵画が誕生した時代背景に始まり、画家の人物説明や、使われている描画の技法などさまざまな側面から説明してくれる。大きなデジタルサイネージが患者サポートエリアに面して設置されていますから、待合にいるだけでそれこそ美術史を学べてしまうほどです。もちろん子どもが見ても楽しいし、年輩の方が目にされるとあらためて絵画の持つ意味や魅力を感じていただける。相当なインパクトがあると思います。―先に開院しているA棟にも先進的な設備が整えられています。勝間田 A棟が開院したのは2022年7月ですが、それ以来毎年約1万人の患者さんを救命救急センターを介して診療しています。救急車の搬入回数は年間6,000から7,000回ぐらいで、その約半数以上はそのまま入院患者として受け入れています。とにかく「断らない救急」をスローガンに、スタッフが一丸となって運営してきました。だから困っている― B棟は外来メインですが、外来の受診が従来の内科とOMPU外科に分かれているのではなく、臓器別のユニット※制外来になっています。南 臓器別のユニット制外来はなんとかして実現したかった。たとえば消化器内科と消化器外科が一つになっている、呼吸器、循環器なども同様です。これも患者さんにとって、どうあるべきかを追求する中で生まれたアイデアです。たとえば消化器内科を受診した患者さんが、何らかの手術を受けることになったとき、別のところにある消化器外科までわざわざ行かなければならない。そんな面倒を患者さんにさせたくないと思ったのです。―内科と外科を一緒にするのは画期的ですね。勝間田 歴史の長い病院ですから、各診療科ごとに違いは当然あるわけです。だから「さあこれからは一緒にやろう」と声をかけても、最初は戸惑いもある。けれども、すべては患者さんのためにというスタンスで話をしていくと、みんな納得してくれるものです。そもそも病院とは患者さんのためにある施設ですから、患者さんを中心として組み立て直す方向性については、医師、看護師、事務方を含めてみんなが納得してくれました。いざというときには、一つにまとまろうとする。これは大阪医科薬科大学病院のDNAのようなものかもしれません。南 まとまるといえば、コロナ禍のときがそうでした。勝間田 コロナ禍のとき私は、南病院長の下で医療安全や感染対策に携わりました。あのとき強く印象に残っているのが、当院は特定機能病院であり高度医療を提供するという軸足を堅持した病院長の覚悟です。前代未聞のパンデミックという何の手本もない状態であり、一方では自治体などからの相次ぐ要請などもある中でも基本姿勢を崩さなかった。高度医療、先進医療、ここでしかできない医療、これがこの大学病院の風土なのだと改めて認識しました。 診療科の壁をなくし、病院全体でまとまる意識患者さんに寛いでもらうための仕組み可能な限り患者さんを受け入れるユニット制外来※注 すべての診療科がユニット化するものではありません。特 集
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