̶大学としては今後、どのような人材育成を考えているのでしょうか。植木理事長 医学部が110人余り、薬学部は300人弱、看護学部からは90人弱が毎年、社会に巣立っていきます。卒業生に対しては当然ですが、まず各分野で求められる技術を身につけているよう求めています。けれども技術だけでは、良い医療人にはなれなません。医療に携わるために欠かせないのが、豊かな人間性であり、人間性を育むためには自己研鑽を積む必要があります。したがって大学としては全人的な指導を徹底しています。̶高槻市の「先進」医療を推進するため、大阪医科薬科大学としてはどのような取り組みを考えておられますか。植木理事長 先進という意味では、現状では頭頸部がんに保険適用されているBNCTを、さらに多くのがん治療にも拡大していき、世界でも最先端のがん治療法への確立を考えています。加えて特定機能病院として高度な先進的医療に対応するだけでなく、指定された16疾患の拠点病院としての責務も果たしていく。そのうえで地域医療についての最後の砦となる。一方で医療の根幹となるのは予防です。未病の発見から早期治療、さらに高度先進医療に幅広く対応しながらも「温かい病院」として、高槻市民の皆さんに親しまれる存在を目指していきます。̶100周年を迎えて打ち出している「スマートホスピタル」や「温かい病院」などに象徴される、病院の理想像はどのようなものでしょうか。植木理事長 スマートホスピタルとは、機能性の高い病院を表す言葉です。いま建て替えている新本館ができた暁には、さまざまな最新の医療設備をはじめとして、多機能を備えた病院が完成します。その一例をあげるなら、患者さんの案内から会計、支払いなどについても利便性を高めるための機能を整えていきます。設備を整える一方で、人が人に心を込めて接する「温かい病院」も忘れてはなりません。大学病院といえば画一的な対応で、ともすれば冷たい印象をもたれがちですが、本大学病院では、決してそんな対応はとりません。そのためにホスピタリティ教育に力を入れ、さらには病院内にご意見箱を設置し、寄せられたご意見をきめ細かくチェックし、適宜対応しています。濱田市長 大学病院といえば、テレビドラマにもなった『白い巨塔』のイメージがあり、昔から冷たくて少し近寄りがたい雰囲気の漂う場所と思われる方も多いでしょう。そんOsaka Medical and Pharmaceutical Universityのです。本市では昭和40年代から50年代にかけて、人口が一気に増えました。過去の統計データをみると、この10年間だけで20万人も増えています。その理由は明らかで、ベッドタウンとして開発された本市には、当時40歳前後のいわゆる企業戦士の方々がたくさん来られて、その方々が高齢化されているのです。将来に備えて本市ではいち早く、昭和63年に健康都市宣言を行い、行政としても健康寿命延伸をテーマに据えてさまざまな事業に取り組んできました。その際にも頼りとなるのが、大阪医科薬科大学の存在です。最近の例でいえば2024年3月芥川緑地にオープンした、健康づくり広場「アクトレ」があります。アクトレでは「健康づくりを楽しめる」「自然を学べる」などの整備方針に基づき、大阪医科薬科大学の監修のもとで、体力レベルや運動目的に合わせて利用できる5つのエリアを設定、関西最大級となる30基の健康遊具も備えています。もちろん、市内の診療所や二次病院にとっても、大学の存在は非常に大きいと受け止めています。な方が大阪医科薬科大学病院に来ると、きっと驚かれると思います。看護師さんはもちろん、医師の先生方からも怖いイメージなどまったくなく、誰もが優しく親切に接してくださいます。植木理事長 親しみやすさという意味では、新本館には美術コーナーができる予定です。岡山県倉敷市の大原美術館との提携を進めていて、美術館の作品を本館内で展示する予定です。患者さんはもとより病院に来られる方、どなたでも気軽に美術作品に触れて、心を和ませていただけるようにと考えました。̶大学に対する高槻市としての今後の要望をお聞かせください。濱田市長 私たち行政は、市民の健康を第一に考えています。大阪医科薬科大学さんには、今後も協力、連携をお願いして、一緒に市民の健康を守っていただきたいと思います。6
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