【専 門】Pro■le鈴木 富雄 Tomio SuzukiOsaka Medical and Pharmaceutical University1991年1991年2000年2000年2001年2006年名古屋大学医学部卒業市立舞鶴市民病院内科勤務市立舞鶴市民病院内科 医長名古屋大学医学部附属病院総合診療部 医員名古屋大学医学部附属病院総合診療部 助手(病棟医長)名古屋大学医学部附属病院総合診療部 講師 大阪医科大学地域総合医療科学(兵庫県)寄附講座 特任教授大阪医科大学附属病院総合内科・総合診療科 科長大阪医科大学地域総合医療科学寄附講座 特任教授 大阪医科大学附属病院総合診療科 科長(診療科名変更)大阪医科薬科大学地域総合医療科学寄附講座 特任教授 大阪医科薬科大学病院総合診療科 科長(病院名変更)大阪医科薬科大学総合診療医学教室 教授(教室設立) 日本プライマリ・ケア連合学会(理事)一般社団法人日本医学教育学会(代議員)など総合診療(日本プライマリ・ケア連合学会認定指導医)医学教育(日本医学教育学会認定医学教育専門家)2014年9月2014年10月2015年3月2015年4月2021年4月2024年4月【所属学会】(2010年より総合診療科に変更)(講座名変更)(大学名変更)患者さんのニーズに応じて、急性期医療から慢性疾患の管理やリハビリ、介護さらには多職種連携による地域での包括ケアまでを担当する。大学病院の総合診療医というと少しむずかしそうに聞こえるかもしれませんが、基本はいわゆる地域のかかりつけ医、ホームドクターと同じです。まずは目の前の患者さんの全ての訴えに耳をかたむけ対応する。患者さん一人ひとりと真摯に向き合う、だから「あなたの専門家」なのです。― 本学の総合診療科は寄附講座からスタートし、後に総合診療医学教室になりました。 私は2014年に名古屋大学医学部から、本学に招いていただきました。赴任してまず始まったのが兵庫県からの寄附講座で、翌年には高知県からの寄附講座もスタートしています。いずれも各県と協定を結んだ上で財政支援を受けて運営されています。具体的には県内でも医療資源の不足している地域に総合診療医を派遣してきました。地域の患者さんにとっては、どこかに不具合があれば、診療科を問わず診てもらえるのが大きなメリットとなります。一方で派遣される若手の医師にとっては、多くの様々な症例に触れられる上に、大学病院とは違い患者さんとの距離が近いのも新鮮な体験となります。兵庫県では2015年から夏休みに、東京、大阪と兵庫の高校生に対して「高校生と医学生のための地域医療体験」を開催しています。医学部5年生がリーダーとして高校生を引率し、地域医療の現場を高校生にも見てもらうのです。憧れの医学生と過ごす医療の現場体験は高校生に強いインパクトを与えているようです。また高知県では本学の特徴を活かして医薬看の多職種連携による学びを深めています。寄附講座は地域の患者さんたちと交流しながら学びを深められると同時に、私たちにとっても地域貢献の得難い機会ともなっています。― ところで先生が医学部を卒業された当時は、まだ総合診療医という専門職はなかったのではないでしょうか。 私が名古屋大学医学部を卒業したのは1991年であり、もちろん総合診療医という職種はありませんでした。ただ京都府舞鶴市の市立舞鶴病院の内科でGeneral Medicine、すなわち総合診療に相当する医療を学べたのです。私は小学生時代に虫が好きで昆虫博士にあこがれていましたが、中学生ぐらいから人を相手にする仕事に就きたいと考えるようになりました。そこで法曹界も考えた末に医師を選んだのですが、臓器別の専門医にはどうにもなじめなかったのです。一人の患者さんに全面的に向き合いながら、何ができるのかを考えていきたい。そんな思いを抱えていたときに、先輩からGeneral Medicineの話を聞き、日本で研修システムが確立していた舞鶴市民病院を教えてもらったのです。ここに10年在籍して徹底的に学びました。その後、私の恩師の伴信太郎先生が、1998年に名古屋大学に総合診療科を立ち上げたので、そこに戻ったのです。医師の基本は舞鶴で学び、大学教員としては名古屋大学で学んだことになります。恩師の伴先生が大阪医科薬科大学第九代学長の竹中洋先生と懇意であった縁もあり、本学に招いていただきました。― 総合診療医に対しては、厚生労働省も期待しているようです。先生にとってのこれからの課題は何でしょうか。 まず専攻医を増やすのが課題です。総合診療医については、厚生労働省からの後押しもあり、今少し追い風が吹いています。とはいえ全国で専攻医がまだ年間300人足らずしかいません。これを最低でも500人レベルぐらいまで増やしていきたい。そのために様々な学会活動に参加して、年間数十回ほど講演に出向いています。高校生向けの講演も行いながら、総合診療の重要性を伝える活動に取り組んでいます。本学に関しては2020年から三島地区の三次救急を受け容れるようになりました。救急対応は総合診療の柱となるため、何より人手が必要です。2022年のコアカリキュラム改定により卒前教育においても総合診療が重視されるようになり、学生からの関心も高まっています。研修医教育や学生教育など若い人の教育には特に力を入れており、その結果として臨床実習中の学生からは「総合診療科は一番しんどいけれど、一番やりがいがありおもしろい」との評価も得ています。― 最後に先生ご自身の座右の銘とメッセージをお願いします。 「この世は夢、儚い夢、泡のようなもの。だから思いっきりやるしかない」。この言葉を講演などでいつも話しています。所詮は夢なんだから、自分で責任を取るつもりで思いっきりやればよいのです。また本学に来る学生は開業医のご子弟が圧倒的に多いようで、皆さん宿命を背負っているともいえる。ただ宿命は変えられないけれども、運命は変えられます。重荷を背負って歩くのが人生、だけれども重荷のない人生など楽しくもなんともありません。長年にわたって医師を続けてきて私は「苦しみの向こうには光がある」と、これだけは自信を持っていえます。医師を目指す人、なかでも一人ひとりの患者さんと向き合い「あなたの専門家」になりたいと思う人は、ぜひ総合診療医学教室にお越しください。30
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